いつ、どのようにして言語が使われるようになったのか。
一番はじめの言語は何だったのか。
このような質問には、かつて流行していた超自然的な返答が簡単である。
言語は人間に与えられた天からの贈り物で、アダムとイブが誕生し、エデンの園で暮らしていた時から持っている能力である。
18、19世紀になると、歴史言語学(historic linguistics)が発展した。
学者達は現存する言語の相互関係を研究し、数千年も遡り、言語を分類する類縁の言語の樹形図をつくった。
多くの場合、この言語の系統は、今は存在しない祖語に行き着く。
歴史言語学者たちは、現存する言語から死語を再構築し、復元する方法を発展させ、その方法が、数千年前の言語に関して有効な結論を与えれくれると信じていた。
もっと昔の言語さえも復元出来ると考える学者もいた。
多くの学者は、一万年以上繰り返し分裂した言語は、変わりすぎて、その方法では導けないだろうと考えている。現在の人間言語は、その何倍も変化し続けているのである。
結局歴史言語学では。言語を使えない原初の人間と、今の私たちのようなしゃべり好きとの間の溝はうまらなかった。
言語の登場初期に、人々は何を話していたのか。
19世紀の初め、動物の鳴き声や自然の音の真似声から、発話へと発展したんだと言う主張がなされた。
しかし、その推測を裏付ける証拠は見つからなかった。
人々はそれらに、「わんわん説」、「ゴンゴン説」とちゃかした名前を付けて馬鹿にしていた。
それから何十年もの間、言語の起源は遅れた分野となっていた。
20世紀の後ろ25年で、様々な知識人達大勢が、この問題に夢中になった。
化石と人工物の研究をする古生物学(paleontology)によって、原始の人間達の年代学(chronology)が進歩し、どの時代に人間の言語が出現したかに関する議論が盛んになっている。
初めて道具を使用した、200万年前のヒトなのか、解剖学的に現代の人間の祖先とされる、5万年前の人なのか。
他の学問領域に置いても、人間言語の起源に関心が向いていいる。
心理学は、どのように幼児が言語を習得するのかという問題に集中的に取り組んでいる。
霊長類学(primotology)の分野では、猿達がどれぐらい人間言語を習得出来るかという巧妙な実験を開発している。
神経学(neurology)と解剖学(anatomy)の研究では、どれほど、人間言語が肉体によって進化し制限されているかを明らかにしている。
特に、解剖学者達は、人間が、音声を生成するのに適した声道と、それらを操作する適した緻密な組織がなければ、言語活動は不可能であると主張している。
現代の人間と他の動物の物理的な違いは、人間の喉頭が低い事である。
人間の言語能力は、呼吸や咀嚼、嚥下するためにつくられた体内のシステムから与えられた、おまけではない。喉頭の降下により咽頭や口も変化し、喉が詰まり易くなるという不利を被っている。
人間は、牛飲馬食が出来ない変わりに、話すことが出来るのである。
このような多くの学問領域に関わる努力も、原初の言語の再構築に関しては、有効ではなさそうである。
しかし、20世紀末の興味深い調査によると、原初の文法に関しては、知る事が出来そうである。
この数百年のあいだに、ヨーロッパ諸国といわゆる第三世界との接触によって、新しい言語が誕生している。
植民地や、奴隷たちの間で話されていた、様々な言語のごちゃ混ぜのピジン語が、クレオール言語へと育っていった。
スリナム、ハイチ、ハワイ、パプアニューギニアなど、遠くはなれた、全く語彙の重ならないようなクレオール諸語が、似たような文法体系を持っているのである。
人間の脳は、特定のパターンの発話をするように組み込まれているのではないかと、主張されている。
これが、原初の言語の仕組みについての手がかりとなりうるだろう。
Barry Hilton, "4 What was the original lanhuage?"
E. M. Rickerson, Barry Hitton, ed., The 5 Minute Linguist (USA; Equinox Publishing Ltd., 2006)
PR
この記事にコメントする
言語学が大好きな一般人のブログです。
過去の記事は、軌跡として残しておきます。
カレンダー
04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
ブログ内検索
カテゴリー
最新記事
(10/02)
(09/30)
(09/29)
(09/26)
(09/25)
プロフィール
HN:
てぬ
性別:
女性
自己紹介:
大学院で言語学を学びたい大学生が、日々の勉強の成果を記録してゆく為の、個人サイトでした。
最新トラックバック
最古記事
(01/01)
(04/07)
(04/08)
(04/09)
(04/09)
P R