ひとつの言語しか話さない人ならば、自分が普通で、複数の言語を話せる人が例外で少数派だと考えるだろう。
しかし、実際は、世界の4分の3の人口が、二言語話者(bilingual)もしくは多言語話者(multilingual)である。
単一言語話者(monolingual)が、少数派なのである。
もちろん、それと二言語使用能力(bilingualism)とは、また別の問題である。
全てのバイリンガルが2つの言語を同レベルに話せる訳ではない。
9.11事件後、アメリカ政府が行った、英語とアラビア語のバイリンガルに関する調査では、一方の言語が日常生活には不十分であったり、両方とも流暢に話せても文字が書けなかったりする人々が居た。
どのようにしてバイリンガルになるのだろうか。
まず、家庭内が二言語環境である事がある。両親が子供達に対して、異なる言語を話すのである。
そして、言語学者が付加的バイリンガル(additive bilingual)と呼ぶ状況がある。
大きくなってから、学校で新たに言語を学んだり、幼いときに外国へ移住する等である。
バイリンガルの能力はどんどん減ってゆくもので、例えば、海外に移住した場合には、第一言語が置き換わってしまうこともある。
これを減法バイリンガル(subtractive bilingual)と言い、移民の家族に多く見られる。
例えばベトナムからアメリカに来た人が、だんだんベトナム語が話せなくなってゆき、英語話者となることである。
ベトナム語を話さなくなった、そのあとに、ベトナム語を話せるようになるには、きちんとした学習が必要になる。
親達は、子供が異なる言語に晒されて、混乱する事を恐れるかもしれないが、心配は要らない。
子供の言語習得は大人達の心配事となるが、家庭で二言語を使用する長所は、すべての短所に勝る。
子供達の言語の切り替え能力は非常に高く、すぐに2つの言語を適切に習得してしまう。
もともとの母国語を、子供達にも覚えてほしいと願う移民の親は、特別に働きかけをしなくてはならない。
少数派のエスニック言語を、学校で学ぶ機会はほとんどないので、いくつかの移民コミュニティーが語学教室を開催し、子供達に教えている。
子供のときにバイリンガルであっても、生涯バイリンガルであるとは限らない。
二言語使用能力はバイリンガル教育とは異なる。
バイリンガル教育は、様々な教科のなかの一種類として、学校で英語を教える試みである。
このプログラムはいくつかの理由から、頻繁に論争の的となっている。
近年では、二重の言語教育(dual language education)が人気で、有効だと考えられている。。
これは、単一言語話者である子供達を対象に、二言語で学校教育を行い、付加的バイリンガルを育てようとするものである。
多数言語と少数言語の共存する地域で、どちらの話者も一緒に参加出来る授業となっている。
もちろん、新しい言語圏への移民達が現地の言語を学ぶべき重要な理由がある。しかし、母国語を使い続けるべき重要な理由もある。
かれらは、新しい言語の習得に熱中し、母語を保ち続ける事に気が向かなくなるだろう。
しかし、両方の言語に長けた、本当のバイリンガルは社会で非常に有利である。両方の文化に所属し、境界のない世界への架け橋となる事が出来る。
私たちには、そのような人材をもっとたくさん育てる方法が必要である。
参考文献
Dora Johnson, "20 What does it mean to be bilingual"
E. M. Rickerson, Barry Hitton, ed., The 5 Minute Linguist (USA; Equinox Publishing Ltd., 2006)
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