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*近年の英文の傾向では、一般的に、"deaf"は耳の聞こえない人を指し、"Deaf"は手話を使用する耳の聞こえない人たちのコミュニティーを指す。

 
手話に関して、良く耳にする噂が2つある。
一つは、「手話は、まったく言語ではない」というもの。
もう一つは、「手話は世界共通で、手話使用者は世界中の手話を理解出来る」というもの。
 
まず一つ目についてである。
手話が、私たちの認識している言語というものとあまりにもかけ離れている為に、それが言語である事を疑う気持ちは良くわかる。
そのものの形をなぞる手話もあるので、単なるジェスチャーであると言う事も理解出来る。
しかしそれらの意見は、1960年のガロデット大学教授のアメリカ手話(ASL)の専門書によって論駁された。
手話は、音声が無いだけで、話し言葉と同じように組織立って、文法的な特徴を持っている。
手話には音声と同じ弁別的な特徴があって、例えば、ASLでの"candy"と"apple"の違いは、頬に寄せる人差し指が、まっすぐか、曲がっているかの違いである。
単語と単語は一直線に並んで、文となり、文と文が連続して章になる。
具体的な話題から抽象的な話題も、政治的演説も演劇でも、何でも表現する事が出来る。
 
2つ目についてであるが、人々は、いろんな種類の手話があるという事にあまり気づかない様である。
時間的、地理的に離れた人々の言語は、もちろん変化するし、ASLには方言だってある。社会的な集団によっても手話使いが異なる。
当然、国の間では手話が異なる。
実はギリスの手話とアメリカの手話は全く異なるので、話し言葉が通じても、互いに手話は通じない。
理由は、アメリカに初めて聾唖者の為の学校を設立した人物、ガロデット・ホプキンスがフランスで手話教育法を学んだからである。
前述のガロデット大学は、その、アメリカで一番最初の聾唖者の為の普通科大学である。
ASLには、偶像的な手話が含まれるが、そのものの姿を現す動作さえも、異なるのである。
ASLでは、「木」を、左手で水平に地面を型取り、右手を垂直に立てて五指を大きく開き木に見立てる。
しかし、オランダ手話では、上から木の輪郭を両手でなぞるように、動かすのである。
 
神に沈黙の誓いを立てた修道士がいると考える。かれは修道院の様々な仕事に、言葉が無いと不便である。
あるいは、アボリジニのある部族では、未亡人はかなり長い期間喪に服し、そのあいだ口をきいてはいけないと言う習慣がある。
このような場合、修道士や未亡人の間で使われている話し言葉が、その構造を保持したまま手話に移行される。
これは特殊な例であって、多くの場合、手話は話し言葉とは別に発展する文化である。
 
世界には数百万人の手話使用者がおり、50万人〜200万人もの人々がASLを使用していると言われている。
アメリカ中でASLの教育を受ける事が出来、147の大学でASL習得者の入学が認められている。
2003年にはイギリスで、BSLが正式なイギリス政府の公用語として認定された。
 
手話は、話し言葉が出来るのと同じだけのものを表現する事が出来る。
耳の聞こえる人が手話を学ぶ事は、新しい文化に踏み込む事で、世界の見方を変えてくれるだろう。
何か言語を学ぼうと思ったとき、手話を選択してみたらどうだろうか。
 
Leila Monaghan, "23 Do deaf people everywhere use the same sign language?"
E. M. Rickerson, Barry Hitton, ed., The 5 Minute Linguist (USA; Equinox Publishing Ltd., 2006)  

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