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私たちの持つ調音器官は無限の音声を生成する事が出来るが、科学的な研究の為には分類が必要だ。
数千年前から用いられている最も基礎的な区分は、母音と子音である。
この基本的な枠組みを元に、この世に存在するあらゆる音声を分類し階層化し、時には新しいカテゴリーを作成してゆくのである。
 
さまざまな音声を扱っているうちに、音素(phoneme)を確認することがきる。
それは、ある特定の言語での示差的な特徴として機能するものである。示差とは、つまり、その言語で意味の違いを生じるという事である。
音素は抽象的なものであり、それが実現された物理的形式が、私たちが耳で聞く音声であると定義される。
音素はしばしば、複数の異なる物理的形式を持っている。これが異音(allophone)である。
 
音声のカテゴリーを決めるときに、私たちは決まった記号で記述する。概要は1章で述べたので、詳しく紹介する。
まず、重要なのが、ある一つの言語の音素に関する記述なのか、一般的な音声としてのIPAなのかを区別する為に、書式に関して決まり事がある。
一つの言語の音素を書き表す場合は/スラッシュ/を用いてあらわし、音声記号を用いる場合は[鉤括弧]でくくる。
'ostrich(ダチョウ)'という英単語を発音記号で書き表すと/ɒstrɪtʃ/であるが、もっと詳細な発音が知りたい場合はIPAを用いる。
/r/はこの環境では一般的に無声音として発音されるので、字母に無声化の補助記号[。]をつける。IPAにおいて[r]は巻き舌音を示すので、英語の/r/は[ɹ]と表記する。
一般的な英語話者は/tʃ/の音を円唇を伴って発音するので、字母の右に補助記号[ʷ]をつける。
加えて/tʃ/の前に声門閉鎖が加わるので、[ʔ]を書き加える。
従って、'ostrich'のIPA表記は[ɒstɹɪʔtʃʷ]となる(無声化の補助記号は入力できませんでした)。
 
Vowels
もっとも重要な母音は'key'の母音[i]と、'half'の母音[ɑ]であると言われている。
これと似た母音が、ほとんどの言語で用いられているし、幼児が一番始めに覚える母音である。
[i]は舌が口蓋に近づいて口が閉じているが、[ɑ]は舌が低く下がり、大きく口を開けて発音する。
これから、[i]は狭母音(close vowel)、[ɑ]は広母音(open vowel)と分類する。
 
もう一つの基本的な母音は[u]である。
[u]は[i]と同じように口を閉じているが、この2つの違いは以下の二点である。
まず、鏡を見れば直ぐに、[u]は唇が丸まって居る事がわかる。[i]は円唇化せずに、笑うように左右に広がっている。
そして、[u]は[i]よりも、舌の後ろの方が盛り上がっている事が分かる。[i]を前舌母音(front vowel)と言い、[u]を後舌母音(back vowel)と言う。
「狭ー広」、「前舌ー後舌」の4項が最も重要な区分である。
その他にも、狭いと広いの間には、半狭(mid-close)と、半広(mid-open)が存在する。
前舌と後舌にも、間に中舌(central)が存在する。
そしてそれぞれに円唇(rounded)非円唇(unrounded)が存在し、母音の配置図の右側に円唇母音、左側に非円唇母音の記号が書かれる。
 
狭、半狭、半広、広の4つと、前舌、後舌の2つ、そして円唇、非円唇の2つのカテゴリーを合わせた、合計16個の母音を基本母音(cardinal vowel)と言う。
全てを含む言語は存在しないし、加えて、円唇前舌広母音[ɶ]に関しては、いかなる言語の音素としても存在していないのではないか、という疑問がある。(この音声の最も近いのは欠伸の時の声である。)
 
もちろん、他にも有名な特徴はあり、フランス語やスペイン語で見られる鼻母音(nasalized vowel)がそうである。
加えて、長母音(long vowel)短母音(short vowel)の違いもある。エストニア語には短、中、長の三段階の区別がある。
 
Consonants
2章で見たように純粋な子音は声道を通る空気の流れの妨害から生じる。
私たちは子音を以下のように区分する。
1、音声が、有声(voiced)であるか、無声(voiceless)であるか。
2、妨害がなされる調音位置(place of articulation)
3、妨害の仕方もしくは、調音方法(manner of articulation)
4、子音に用いている気流(airstream)
 
1、Voicing
声帯の振動に関しては、はい・いいえの二択だと思われているが、実際は複雑である。
破裂音である/d/や/b/、摩擦音の/v/や/z/は有声音に分類されるが、英語では、実際に声帯が振動するのは、最後の瞬間のみである。
/m/や/l/に比べれば遥かに少ない振動であるし、他の言語では、もっと長く声帯振動を伴う[d][b][g]が存在している。
 
2、Place of articulation
どのように子音を発音するかについてはすでに簡単に説明したが、もっと詳しく調音器官を見る必要がある。
---調音器官(04/09)に図があります。
声道の一番外側は、両唇音(bilabial)である。上と下の唇を使う。
上歯と下唇のふれる調音位置を唇歯音(labiodental)と言い、舌で上歯に触れる位置を歯音(dental)と言う。
上歯の後ろを歯茎(alveolar ridge)といい、舌で触れると歯茎音(alveolar)となる。
歯茎より少し奥の位置に舌で触れると後部歯茎音(post-alveolar)になる。あまり後ろに下がりすぎると硬口蓋音(palatal)になる。
舌の奥の方で軟口蓋(velum)に触れると、軟口蓋音(velar)となる。
硬口蓋の一番奥の部分に舌で触れるものを口蓋垂音(uvular)という。
喉頭の方へと奥に進んでゆくと、咽頭での調音を咽頭音(pharyngeal)と言う。
そして、声帯と声帯の間の部分を声門(glottis)と言い、そこで行われる音声を声門音(glottal)と言う。
これらの調音位置に加えて、伝統的にそり舌音(retroflex)というものがある。これはある特定の舌の形を指す名前で、調音位置ではない。
舌を後ろにそり返す調音方法で、英語では/r/を伴う母音等で見られる、インド亜大陸の言語の子音に用いられる。
 
3、Manner of articulation
ここでは、どのように空気の流れが妨害されるかを見てゆく。
妨害の方法には、完全に空気の流れを遮断してしてしまうものから、母音のように流れ放しのものまである。
破裂音(plosive)は完全に空気の流れを止めるもので、一瞬完全に静止する。そして圧縮された空気を放つのである。
開放の際のに、短い破裂の音(plosion)がする。これには「はーっ」と息を出すときの帯気音(aspiration)が続く。
鼻音(nasal)は口腔への空気の流れを完全に遮断し、鼻腔へと抜ける方法で、音量は小さい。
摩擦音(fricative)は空気の流れを阻害するもので、かすれた音を作り出す。
破裂音で、開放の際に同じ調音位置で摩擦音おを生じさせるものを破擦音(affricate)と言う。
たたき音(tap)はじき音(flap)は共に発音時間の短い音で、舌で一瞬、口腔の壁に触れ、短い間だけ空気を遮断する。
はじき音は、それにそり舌が加わるものである。
特殊なものにふるえ音(trill)がある。舌先や口蓋垂を使うのが一般的で、継続して何回も調音器官を振動させる調音である。
最後の調音方法が接近音(approximant)で、特に、口腔の中央で閉鎖を作り、口の横から空気を出すものを側面音(lateral)といって区別する。
英語の/r/の音は、歯茎接近音という。舌は歯茎に接触しない。
 
4、Airstream mechanism
調音に使う気流を細かく分けるのならば、まず肺の(pulmonic)ものがある。
そして喉頭の上下運動による声門の(glottalic)気流。
後舌を軟口蓋に当てて閉鎖を作り、舌を前後させて起こす軟口蓋気流(velaric airstream)
そして、体内から体外への空気の流れを呼気音(egressive)、体外から体内への空気の流れを吸気音(ingressive)という。
これらの分類は子音によるものである。肺の呼気を使った音声を肺臓気流機構とも言う。
 
参考文献
Peter Roach, Phonetics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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