忍者ブログ
[131] [132] [133] [134] [135] [136] [137] [139] [140] [141] [144]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

世界には多くの文字が存在する。
左から右へ、右から左へ書くものもあれば、上から下へ、下から上へ書くことさえもあり、形状も様々である。
話し言葉と違い、書き言葉の始まりはよく分かっている。
石に刻まれた最古の文字がまだ存在しているの。

文字の発見は、社会がある程度複雑になれば、必然的に起こる。
小さな村では問題ないが、大きな町となると、誰が何をしたか把握できない。実際問題として、納税の記録が必要になる。
ある所では、縄の結び目で、他の町では楔の刻印や、絵を用いている。

文字の発見にもうひとつ重要なことは、話し言葉の、音の成分である。
アルファベットが読めない人が、英単語を、子音と母音に分解することは難しい。
ひとつの音節で出来た単語を、絵(文字)で書きあらわすと、絵として書き難いものの名前に含まれる同じ音を、作った絵(文字)で書き表すことが出来る。

最古の文字は5000年前のメソポタミアで生まれ、もう死語となった、シュメール語を記すために用いられた。
4000年前には、それとはまったく異なる文字が、中国語の先祖を書き記すために作られた。
紀元後4世紀ごろに、中央アメリカでマヤ語のための文字が発明されたが、それは数百年後に、マヤ文明と共に滅んでしまった。
従って、現存する書き言葉の全てが、中国か、古代イラクに還元される。

文字は、非常に便利なものなので、一度発見すると、ほとんどの人々はそれを採用しようとする。
日本語が漢字で表記されるようになったように、メソポタミアでは、さまざまな言語に、シュメール文字が採用されていった。
その過程で文字は様々に形を変え、エジプトの神殿や墓石に書かれるような神聖文字にも影響を与えた。
フェニキア人によってシュメール文字は、原材料となり、アブジャド(abjad)となった。
アブジャドとは、子音しか書き表さない文字体系のことで、子音と母音を一文字ずつで書き表すアルファベット(alphabet)や、基本的に子音だけを書き表し例外的に母音を書き加えるアブギダ(abugida)のもとなった。

ヨーロッパや北半球をはじめ、オセアニアや東南アジアなど、世界には数百種類のアブジャドがあると言われている。
下はソロモン諸島の11文字から、上はカンボジアのクメールアブギダ74文字まで、様々なアブジャドが存在している。
どのアブジャドも、帰る所はみな同じ地中海の古代フェニキアである。

フェニキア人は、偶然にも、アブジャドをギリシャに持ち込み、ギリシャ人はそれをエトルリアを通り、ローマへと持ち込んだ。
そこで、今日まで保たれるあの文字の形になったのである。
他のギリシャ人は東ヨーロッパにアブジャドをもたらし、キリル文字となった。
一見まったく異なる文字体系に思えるが、アラム語やインド語にも、フェニキアのアブジャドが引き継がれていった。

文字は、人間と人間社会の基本的な特徴であるが、世界中で見られる訳ではない。
半数以上の言語が、文字体系を持っていない。
しかし、時代は変わり、それらの言語も、冒険家や言語学者たちによってもたらされた文字で書かれるようになった。
ほとんどがローマ字である。

文字がなかったら私たちはどうなっていただろうか。
文字は言語と人間の歴史の重要な要素である。
文字がなくても、歴史は存在できるのだろうか。

参考文献
Peter T. Daniels, "10 Where did writing come from?"
E. M. Rickerson, Barry Hitton, ed., The 5 Minute Linguist (USA; Equinox Publishing Ltd., 2006)
アブジャド』、『アブギダ』---Wikipedia

拍手

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
言語学が大好きな一般人のブログです。 過去の記事は、軌跡として残しておきます。
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
てぬ
性別:
女性
自己紹介:
大学院で言語学を学びたい大学生が、日々の勉強の成果を記録してゆく為の、個人サイトでした。
最新コメント
[07/22 てぬ]
[07/20 ren]
[05/24 てぬ]
[05/22 ゆう]
最新トラックバック
バーコード
P R
忍者ブログ [PR]