会話と言うものは、人間の営みの中で、最も興味深いもののひとつである。
人間は皆心を持っていて、頭の中は思考と感情と思い出で充満されている。
これらを他他者に伝えるために様々な手段がある。
文字は便利だ。良い文章は、とても明快に筆者の意見が伝わってくる。
手話やポインター、パソコンのスクリーンは、話すことができない人にとってとても便利な手段である。
芸術作品は、たとえ故人の作品であっても、作者の内面世界を強烈に伝えてくれる。
ジェスチャーと表情は、多くの動物たちも用いている、行為の詳細をつたえる手段である。
しかし、私たちが最も頻繁に使っているのは、人間だけが出来る、会話、である。
The speech chain
会話のプロセスは、大きく3つにわかれる。
①肺や喉と頭を使って、音声を作り出し、②その音声が波として空気中を通り、③聞き手の耳によって受け取られる。
しかし実際はそんなに単純ではない。
話者は脳で音声の生成を調節し、聞き手は、聞いた音声を分析して意味ある文章に変換する。
実際に、話を「聞き流す」ことが出来る以上、音声の理解には脳による制御が必要である。
人は一連の波を作り出すだけでなく、同時にそれらを脳に蓄積してゆく。自分が今何を話しているかわからなければ、会話は困難になる。
近年の音声科学では、会話中の脳の動きがわかるようになった。
もっとも重要なのは、安全で正確な脳のスキャン技術の発達である。
Phonetics
会話は複雑な過程を経ており、その研究には、ひとつの科学的分野が必要である。それが音声の科学(the science of phonetics)である。
この本では音声学の主な部分と、なぜそれが重要であるかを述べてゆく。
はじめは以下の2つについて重点的に述べる。
どのように、しばしば分節(segment)と称される、音声(sound)が作られるのか。
それから、学者がそれらをどのように、科学的に区分するのか、である。
これは基礎的な母音(vowel)と子音(consonant)の区分が基盤となっている。
そして、記号(symbol)の使用も重要な側面である。
音声学は、ひとつの音にひとつの記号が対応しているような表記体系を使わなければならない。
例えばフィンランド語やイタリア語の文字は発音どおりに書けばよい。
けれども世の中には、表意文字(ideographic)という、記号が音を表さない文字がある。
代表的なものが1,2,3...の数字である。多くの国で通用する記号だか、発音は地域ごとに様々である。
19世紀の音声学の最も重要な進歩は、国際音声記号(IPA: International Phonetic Alphabet)の制定である。
英語の表記は必ずしも発音と対応していないので、発音表記(phonetic transcription)を用いるのはとても便利である。
この本で用いるのは、BBCアクセント(BBC accent)と呼ばれる発音である。
かつては容認発音(RP: Received Pronounciation)と呼ばれていたが、誰に許容されているのかも分からないこの名称であるために、研究の対照にしにくかった。
BBCのアナウンサーがすべて同じ口調であるとは思わないし、アイルランドやスコットランドやウェールズなどいろいろなアクセントを持ったアナウンサーも居る。
そのためにはまた別の書き方をしなければいけない。
しかし、ラジオかテレビがあれば、誰もが聞ける発音であることは重要である。
IPAを使うと英語を以下のように書くことが出来る。
綴り she bought some chairs and a table
IPA ʃi bɔ:t səm tʃeəz ən ə teɪbl
このような記号で表す、その言語の示差的な音声を、音素(phoneme)といい、
その記号体系を音素記号(phonemic symbol)と言う。
あるひとつの言語の発音に関して表記するとき、それを/スラッシュ/で囲む。
すべての言語に共通した音、または音素の特徴的な発音、異音(allophone)、を表記するときは[かぎ括弧]で囲む。
音声学の関連した他の学問分野では、まず、解剖学(anatomy)と生理学(physiology)がある。
この二つはどのように肉体で音声が作られるかを研究する。
空気中でどのように声が伝わるのかは、物理学の一分野である、音響学(acoustics)の範囲である。
人間がどのように耳で音声を聞いているかは、聴覚科学(audiology)、脳がどのように言語を受け取っているのかは、認知心理学(cognitive psychology)の範囲である。
Phonetics and linguistics
音声学は言語学の一部分であることを忘れてはいけない。
音声学の前に、基本的な言語学の概念を理解するべきである。
まず、音声学ではとてつもない量の人間の音声を扱うが、ひとつの言語で違いが認識されているものは、少ししかない。それが弁別的音声、音素(phoneme)である。
フランス語では/tu/の母音が入れ替わって/ty/になると、違う意味を示す。
しかし英語で/tu/が/ty/になっても、意味の違いを生じない。
これは、フランス語と英語で音素が異なるからである。
言語学は人間言語のすべてを包括する学問である。
統語論(syntax)のように、複雑で抽象的な概念を扱う分野や、音声だけしかデータのない、方言の研究をする分野もある。
19世紀後半の有名なイギリスの学者ヘンリー・スイートによると、
音声学は言語学に絶対不可欠な基盤である。
この主張は100年経っても変わっていない。
参考文献
Peter Roach, Phonetics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series
人間は皆心を持っていて、頭の中は思考と感情と思い出で充満されている。
これらを他他者に伝えるために様々な手段がある。
文字は便利だ。良い文章は、とても明快に筆者の意見が伝わってくる。
手話やポインター、パソコンのスクリーンは、話すことができない人にとってとても便利な手段である。
芸術作品は、たとえ故人の作品であっても、作者の内面世界を強烈に伝えてくれる。
ジェスチャーと表情は、多くの動物たちも用いている、行為の詳細をつたえる手段である。
しかし、私たちが最も頻繁に使っているのは、人間だけが出来る、会話、である。
The speech chain
会話のプロセスは、大きく3つにわかれる。
①肺や喉と頭を使って、音声を作り出し、②その音声が波として空気中を通り、③聞き手の耳によって受け取られる。
しかし実際はそんなに単純ではない。
話者は脳で音声の生成を調節し、聞き手は、聞いた音声を分析して意味ある文章に変換する。
実際に、話を「聞き流す」ことが出来る以上、音声の理解には脳による制御が必要である。
人は一連の波を作り出すだけでなく、同時にそれらを脳に蓄積してゆく。自分が今何を話しているかわからなければ、会話は困難になる。
近年の音声科学では、会話中の脳の動きがわかるようになった。
もっとも重要なのは、安全で正確な脳のスキャン技術の発達である。
Phonetics
会話は複雑な過程を経ており、その研究には、ひとつの科学的分野が必要である。それが音声の科学(the science of phonetics)である。
この本では音声学の主な部分と、なぜそれが重要であるかを述べてゆく。
はじめは以下の2つについて重点的に述べる。
どのように、しばしば分節(segment)と称される、音声(sound)が作られるのか。
それから、学者がそれらをどのように、科学的に区分するのか、である。
これは基礎的な母音(vowel)と子音(consonant)の区分が基盤となっている。
そして、記号(symbol)の使用も重要な側面である。
音声学は、ひとつの音にひとつの記号が対応しているような表記体系を使わなければならない。
例えばフィンランド語やイタリア語の文字は発音どおりに書けばよい。
けれども世の中には、表意文字(ideographic)という、記号が音を表さない文字がある。
代表的なものが1,2,3...の数字である。多くの国で通用する記号だか、発音は地域ごとに様々である。
19世紀の音声学の最も重要な進歩は、国際音声記号(IPA: International Phonetic Alphabet)の制定である。
英語の表記は必ずしも発音と対応していないので、発音表記(phonetic transcription)を用いるのはとても便利である。
この本で用いるのは、BBCアクセント(BBC accent)と呼ばれる発音である。
かつては容認発音(RP: Received Pronounciation)と呼ばれていたが、誰に許容されているのかも分からないこの名称であるために、研究の対照にしにくかった。
BBCのアナウンサーがすべて同じ口調であるとは思わないし、アイルランドやスコットランドやウェールズなどいろいろなアクセントを持ったアナウンサーも居る。
そのためにはまた別の書き方をしなければいけない。
しかし、ラジオかテレビがあれば、誰もが聞ける発音であることは重要である。
IPAを使うと英語を以下のように書くことが出来る。
綴り she bought some chairs and a table
IPA ʃi bɔ:t səm tʃeəz ən ə teɪbl
このような記号で表す、その言語の示差的な音声を、音素(phoneme)といい、
その記号体系を音素記号(phonemic symbol)と言う。
あるひとつの言語の発音に関して表記するとき、それを/スラッシュ/で囲む。
すべての言語に共通した音、または音素の特徴的な発音、異音(allophone)、を表記するときは[かぎ括弧]で囲む。
音声学の関連した他の学問分野では、まず、解剖学(anatomy)と生理学(physiology)がある。
この二つはどのように肉体で音声が作られるかを研究する。
空気中でどのように声が伝わるのかは、物理学の一分野である、音響学(acoustics)の範囲である。
人間がどのように耳で音声を聞いているかは、聴覚科学(audiology)、脳がどのように言語を受け取っているのかは、認知心理学(cognitive psychology)の範囲である。
Phonetics and linguistics
音声学は言語学の一部分であることを忘れてはいけない。
音声学の前に、基本的な言語学の概念を理解するべきである。
まず、音声学ではとてつもない量の人間の音声を扱うが、ひとつの言語で違いが認識されているものは、少ししかない。それが弁別的音声、音素(phoneme)である。
フランス語では/tu/の母音が入れ替わって/ty/になると、違う意味を示す。
しかし英語で/tu/が/ty/になっても、意味の違いを生じない。
これは、フランス語と英語で音素が異なるからである。
言語学は人間言語のすべてを包括する学問である。
統語論(syntax)のように、複雑で抽象的な概念を扱う分野や、音声だけしかデータのない、方言の研究をする分野もある。
19世紀後半の有名なイギリスの学者ヘンリー・スイートによると、
音声学は言語学に絶対不可欠な基盤である。
この主張は100年経っても変わっていない。
参考文献
Peter Roach, Phonetics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series
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