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時間のみによる刷新の発祥と、時間と空間による伝播は、違うものとして考えなければいけない。
音声学(phonetics)では、伝播を扱わない。
伝播は模倣である。そこに地域の独自性はない。

ある一点について、地元贔屓の力(独自、分断的)と交雑の力(共通、統合的)の区別をするのは容易である。
どちらか一方の力が作用する。
しかし面を考慮し始めると、両方の力が作用するのである。
ひとつのまとまりを考えれば、それが他の地域と分断的であっても、まとまりには必ず共通性が存在する。
刷新が、地域全域に広がらなかったとするならば、それは統合の力が弱かったからだと言うことが出来る。
分断の原因は、統合の力である。
統合の力に対抗するのは、他の統合の力である。

地理的な不連続性に関しては、地理的な連続性の後に言及するべきである。
印欧語の比較言語学者は、言語の多様性をすべて、地理的な不連続(人間の移住)に起因すると考えてきた。
そのように考えるのは間違いであり、ひとつの地域にとどまっていても、印欧語は時間により変化していっただろうし、異なる言語に分離していっただろう。
ドイツの言語学者ヨハネス・シュミットの著作によると、印欧語族の固有言語は連鎖的に繋がっている。従って、地理的な連続の中での多様性を考慮せざるを得ない。

地理的な隔離が多様性を生むならば、その要素を、地理的に連続していた地域が持っていてはいけない。
英語の特徴のひとつは、大陸で起きたp→dの変化が起こらなかったことにある。
それが地理的不連続に起因すると主張するならば、大陸にはpが残っていないことを証明しなければならない。
フランス語地域で起きたvacce→vache(牛)の変化は、フランス北部のピカルディ地方では生じなかった。
オランダ語とドイツ語は完全に連続した地域で生じた分断である。実際に、ベルギーのランブール地方にはベルギー語とドイツ語の過渡的な言語が残っている。

今までは地理上の多様性について述べてきた。
これから諸言語に関して言及してゆくのには、文字表記を欠かすことが出来ない。
ウィーン大学のような蓄音記録をしない場合、言語はメモを取ることでしか保存できない。しかし、書かれた言語の発音をもう一度聞くことは出来ない。
文字表記とは一体何であるかを、考えなければならない。

参考文献
フェルディナン・ド・ソシュール著 影浦峡、田中久美子訳
『ソシュール 一般言語学講義 コンスタンタンのノート』 東京大学出版会 2007

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