忍者ブログ
[200] [201] [202] [203] [204] [205] [206] [207] [208] [209] [210]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Usage-based associative learning
近年の電子コーパスの発展は、言語運用の分析を革新し、結果的に記述文法への回帰を促した。そして、言語獲得での入力の役割へ注目が集まっている。
現在のもっとも有力な説では、言語の使用は、生得的なものではなく、利用別連想的学習(usage-based associative learning)の結果である。
子供達は、言語の入力の中から、規則に関する膨大な統計的情報を見つけ、蓄積する事が出来る、という証拠が増えている。言語習得の速い段階で、関係のない言語の塊を習得し、少数の単語を組み合わせた小さい構造を得、その後、少しずつ異なる構造の何千もの実例と、抽象的な規則、頻繁に出現する構成要素の無意識の一覧表、合成語、形式と機能の関係性を学んでゆき、言語が発展すると言われている。子供達は、自分の言語の規則を、内在化した規則の主要なパターンを参照する事で段階的に獲得してゆく。
認知心理学者ニック・エリスは「言語の規則は、データと記憶と発話の合わさった、中心的な傾向として現れる。」
この頻度に基づく言語学習の説明は、生得的な知識が無くても、言語学習者が、言語の中に見られる規則と言語に決して現れない制約を発見する方法を説明できると主張する。
そしてこのモデルは言語獲得だけでなく、言語使用も扱う。言語使用としての生産と理解は、話し手と聞き手の、言語学的項目と構造の発生の見込みに関する細部の理解を深めるのである。
 
多くの文法理論が、脳の中での構造と手続きが裏付けられる方法を知る事ができないとしてきたが、この連想的学習モデルは、神経ネットワークの操作の仮説を含んでいる。このような結合説支持者(connectionist)のモデルをコンピューター・シミュレーションで使用する研究は、構造的でない入力から文法的な規則を得る実験に成功している。
 
Modularity: grammar in the brain
多くの、モジュール方式(modularity)に関する議論がある。人間は、認知に関する働きとは区別出来る、言語を操作する機能(module)、あるいは複数の機能を持っているのか、という問題である。
言語獲得と蓄積と使用が、その他の認知機能と独立しているという証拠があるようだ。
例えば、言語獲得の臨界期(critical period)がある。ある年齢を超えると、新しい言語を母語話者のように話す事が出来なくなるようである。また、言語入力が無かった子供達の場合、大きくなってから言語を学ぶと、ずっと不完全で非文法的な言語使用が残る。
その他の例は、脳を損傷した患者の報告である。病気や事故が、その他の精神的な機能はそのままに、患者の言語使用能力の一部、あるいは全てを奪う場合がある。精神障害者が、全く問題なく言語を使用出来るのとは真逆の例である。
 
近年まで、脳の中での言語の活動は、脳損傷の事例を調査するという間接的な方法でしか研究する事が出来なかった。このような研究により、長い間、言語に関係ある脳の部分が知られている。左耳の前方に位置するブローカー野(Broca's area)の損傷は、名詞と少量の動詞を含む、ほとんど文法構造のない、とぎれとぎれの発話を呈するが、理解力に損傷は無い。左耳の下の方に位置するウェルニッケ野(Wernicke's area)の損傷は、滑らかさと文法性を残したまま、正しい単語が少なく意味の分かりにくい発話を呈し、理解力は乏しい。
近年の脳画像の技術により、言語を使用している最中の、脳の血液の流れや電流の動きの変化を見る事が出来るようになり、そして、脳の部分と言語使用の関係性の詳しい観察を得る事が出来るようになった。例えば、文法と語彙では、異なる刺激のパターンを伴う。
しかし、集められたデータは、複雑で分析が難しい。知識が増えてきていても、詳細な画像が出来上がる前に、もっと研究が必要である。
さしあたって私たちはどのように言語が蓄積され処理されるのかはほとんどわかっていない。どの程度の言語の活動が、科学的、電気的に現れるのかもはっきりしていない。私たちの精神的で言語学的な概念の表現と言語学的規則が、神経の中で物理的な部分を持っているのか、あるいはその他の形態として現れるのかもわからない。
現在の研究では、私たちの知識の多くが神経の活動の分布パターンの形式によるもので、場所の表示ではない。時がたてば、おそらく明らかになるだろう。
 
Michael Swan, Grammar(UK; Oxford University Press, 2005)
---Oxford Introduction to Language Study Series

拍手

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
言語学が大好きな一般人のブログです。 過去の記事は、軌跡として残しておきます。
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
てぬ
性別:
女性
自己紹介:
大学院で言語学を学びたい大学生が、日々の勉強の成果を記録してゆく為の、個人サイトでした。
最新コメント
[07/22 てぬ]
[07/20 ren]
[05/24 てぬ]
[05/22 ゆう]
最新トラックバック
バーコード
P R
忍者ブログ [PR]