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Grammaticalization
多くの文法は語彙から始まる。
発音の変化により生じた差異を埋めるためにも、言語の表現力を高める場合にも、典型的に、既にある名詞や形容詞等の単語の文法化(grammaticalization)によって、新たな文法要素が作り出される。
例えば、英語の'have, 'do', 'will'がそうだ。これらの「所有」、「行動」、「意志」という元来の意味が完全に取り除かれ、助動詞として文法的機能を果たしている。
文法化は普遍的な工程であり、世界中の言語で特徴的な類似点がある。文法化された単語が使用される目的、機能を変更する助動詞や冠詞、屈折に変化してゆく筋道。??
 
文法化の施される語は、ほぼいつも、もっとも一般的な意味を持つ。'perform'ではなく'do'であるし、'possess'でははく'have'だ。
文法化は典型的に、文字通りの意味を追うだけでなく、広範囲でもっとぼんやりとした感覚で理解出来るような、曖昧な文脈で行われる。英語の未来を表す'going to'がそうだ。'I am going to sell my cow'これは市場に行くと言う移動を表しているだけでなく、本人の意志もあらわす。
時を経て、意志の意味がもっと強くなり、そして移動を含まない文脈でも使用されるようになった。そして現在の、完全な文法化がさてたものとなった。
'go'や'come'などの移動を表す動詞からの例をあげたが、未来を表す助動詞は、be動詞や「変化」「望み」「義務」「好み」などの意味を持つ動詞の文法化によるものも普遍的である。イタリア語では、すぐに何かが起こりそうなとき、「~するために立つ」と言う。
その他の未来を表す形は、'have'である。ラテン語では、不定の'habere(to have)'の形式で未来を表した。例えば、'cantare habeo(sing to have)'は'I will sing'の意味である。だんだんラテン語のこの形は、屈折語尾として変化してゆく。'cantare habeo'はイタリア語で'canteò'となり、フランス語では'je chanterai'となった。
受け身の助動詞はbe動詞や、「変化」「残存」「位置」を表す動詞などから文法化される。また、多くの言語で過去を表す標識が、「終了」の動詞から作られている。「方向」を表す語が完了を示し、「知識」を示す語が能力を示す。
多くのヨーロッパの言語で、指示詞が抽象的になり、冠詞をなす。ラテン語の'ille(that)'がフランス語では'le'やスペイン語'el'の冠詞となった。
英語とフランス語の否定を表す副詞は、連語の文法化によるものである。'not'は'na wiht(no thing)'に由来する。
 
面白い現代英語の文法化として、'yez'や'you all'などの方言と平衡して、'you guys'が単数'you'と対照的に、二人称複数代名詞の役割を果たしていることである。
また、新しい2種類の助動詞が発展している。'be set to'は報道の文章で、'be about to'と似たような用法で広く使用されている。'see'が文字通りの意味が薄れ、'there is'構文のかわりに用いられている。例えば、'The last half year has seen a significant reduction on accident rates.'は'there has been a significant reduction on accident rates in last half year.'の意味である。
 
文法化は普通一方向である。意味は抽象的に一般的になり、同時に共通して形態も発音も縮小される。
ヨーロッパの言語の過去時制の連語は、進行する意味の変化の良い例である。
典型的には、'have+過去形動詞'は最初、現在はもう終わったという結果の意味であった。'I have six boxes packed.'である。これが、現在との関係性を保ったまま、次第に現在の意味から過去の意味に移行した。'I have packed six boxes.'これが現代英語と現代スペイン語に置ける意味である。
もっと発展すると、フランス語とイタリア語、ドイツ語のように、現在との関係性は消え、単なる過去時制として使用されるようになる。
また、'I've'という形式的な縮小は意味の変化と同時に起こる。英語の過去法助動詞も、'coulda'や'whoulda'など、形式的な縮小が起こっている。そして'going to'もそうだ。非標準的な'gonna'は発音の変化を反映しているが、実際はとても広範囲に広がり、'I'm going to'がもとの/aŋnə/、'you're goung to'に対応する/jəgnə/など、代名詞と結合した破格な語を作り出している。
 
Speed of change
言語の変化は、もちろん、一晩で起きるものではないが、小規模な変化はそれなりの速さで普及する。特に、今日のような世界規模の急速な情報化の時代ではそうだ。ここ10年ぐらいの出来事であるが、アメリカの日常語が、イギリスの若者達の間で使われている。
しかし、言語システムをかえるような大きな変化は、数世紀の時間がかかる。
英語の進行形は、数百年の時をかけて使われるようになって来たが、今でも進行形に用いられない動詞がある。しかし、この抵抗もだんだん弱まって来た。最近は'I'm understanding maths much better now.'という表現がある。
比較級と最上級の形も同じ道筋をたどっている。18世紀までは3音節以上の形容詞にも'-er', '-st'の語尾が可能であったが、やがて'more'と'most'が付くようになった。しかし最近は、2音節の形容詞にも'more'と'most'を使うようになった。
また英語の法助動詞も、わずかに変化している。'may'と'must'の使用が減少しているのである。
 
ある言語はとてもゆっくり変化する。例えば、アイスランド人は、800年前の文章を苦もなく読むことが出来る。
また、言語間の接触によって急速に変化することもある。南アフリカの植民地のオランダ人入植者は、多くの言語に触れ、文法の簡略化が進み、ヨーロッパのオランダ語とは違う言語、アフリカーンス語(Afrikaans)になった。
章の始めで述べた、300年あまりの劇的な英語の変化は、ノルマン・コンクエスト語のフランス語の影響によるものである。その後のよりゆっくりした英語の歩みは文学の発展によるものである。文学が、言語の標準化を押し進め、変化を防いだのである。
 
How did it all start?
長い長い間に、言語の変化は繰り返して現れる。
まず、単語が文法化されて助動詞や小さな機能語になる。これらが名詞と動詞などの結合が屈折を生む。発音の変化によって、価値を失った屈折が削除される。消えた屈折の機能を補うために、新しい助動詞や機能語が作られる。そしてそれらが、名詞や動詞と結合する。
最初の文法化の過程は、ピジン(pidgin)から新たなクレオール言語(creole)の発展の方法で明らかに観察することが出来る。
ピジンは情報伝達を活性化するための、貿易用の乏しい交渉言語であり、典型的には、英語やフランス語などの語彙を、地元の言語の文法に沿ってつぎはぎにつなぎ合わせたもので構成されている。ピジンは誰の母語でもなし、言語としての機能も欠如している。
しかし、ハワイ、ニューギニア、カリブ海などの世界中の地域で、ピジンが全てのコミュニケーションに適応され、複雑で規則的な文法をもった、完全な言語として発展した。それがクレオール言語である。
クレオール言語には共通点がいくつかある。たとえば、動詞、名詞、形容詞、副詞を文法化して機能語や助動詞に変形し、時制を表している。
私たちは、どのようにして言語が生まれるかを研究することは出来ないが、ピジンからクレオール言語への発展が、言語の進化の過程を捉え、もっと原始的で文法もなく表現も限られた最初の言語の発展を明らかにすることが出来ると、多くの言語学者が信じている。
そう考えると、文法化は、言語の変体の重要な役割を果たしている。
 
Michael Swan, Grammar(UK; Oxford University Press, 2005)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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