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分析の便宜性のために、言語学では言語を異なるレベルに分割する。音韻論の範囲である発音、形態論の範囲である単語、統語論の範囲である文と、意味論の範囲である意味である。
言語の変化は全てのレベルで起こり、ひとつのレベルでの変化はその他のレベルに影響し、変化の引き金となる。例えば、発音の変化が屈折を衰退させてしまえば、形態素が変化し、結果的に語順などの統語規則も変化する。これは異なるレベルでの言語の変化を語る際の重要な意識である。
この章では、もっとも分かりやすい語彙の変化を追う。そして、次に、ゆっくりで分かりにくい形態論と統語論的な変化の話しをしよう。
 
話し手は、環境によって変化するコミュニケーション上の必要に応じて、言葉を選ばなければならない。新しい言葉が作られ、古い言葉は意味が拡張し、一方で、古い言葉と意味は結果的に使われなくなる。古英語から現代英語にかけての、文書により裏付けられる、未曾有の言葉と意味の増加は、語彙変化の例に適している。
新しい言葉を作り出すには2つの方法がある。外国語からの借用(borrowing)と、造語(word-formation)などで新語を作る事である。言語ごとに傾向は異なるが、たいてい両方の方法を使用している。古英語では、3%程の借用語や外来語(loan word)が見られたが、現代英語では70%が外来語であると言われ、原語は80言語以上にもなる。最も古い借用語はラテン語とフランス語からである。
この借用語の増加は歴史的な事実に基づいている。1066年のノルマン・コンクェスト、18世紀のラテン語の国際語としての権威の高まりなどがある。しかし結局は、話し手の、外国語の影響に対する態度であり、借用の容認と度合いを決定する言語に対する態度である。借用は言語接触によるものであり、詳しい話しは6章で述べる。
 
Coining new words
最も小さな意味の単位である形態素(morpheme)は単語の基礎である。造語の主な方法は、既に存在する単語や形態素を合わせて複雑な単語にする事である。英語の'teach'は1つの形態素であるが、'teach-er'は2つの形態素である。「動作主」や「装置」を意味する接辞'-er'は拘束形態素と呼ばれ、単独で現れる事は無い。
歴史的な造語について話しをするとき、新語の外見とその中の抽象的なルールを区別しなければならない。造語の規則は言語ごとに異なり、共時的な変化の題材でもあり、新語に関する創造性の問題を考慮して語られるべき問題である。
造語の重要な過程は、合成(compounding)接辞添加(affixation)の2つである。合成は、gest+house=gesthouseのような、自由形態素同士の組み合わせである。接辞添加は、'un-like'や'like-ness'のような、自由形態素と拘束形態素の組み合わせである。
 
合成は英語の歴史の中で創造力を発揮し、何世紀もの間、数えきれない程新語を作り出して来た。
「親族の男性」の意味である'cynnesman(kinsman)'は古英語から残っている。しかし、「商人」の意味の'ceapman(chapman)'は名字と古風な表現として一部残っているだけで、普通はフランス語からの借用語'merchant'に地位を奪われてしまった。
意味論的な違いに基づき、合成語を分類する事が出来る。例えば、'gesthous'は'house for gest'であるが、'girlfriend'は'friend who is girl'では無い。これらの分類全てが英語の歴史の中で等しく作られて来た訳ではなく、また、英語に無い合成の関係を考えるのは難しい。しかし、英語やドイツ語は、フランス語等の他の言語に比べて、合成語を作る際の制約が緩い。
発音の変化によって合成語が透明性を失い、分析不可能な簡単な語形に変化する事もある。古英語の'godspell(神の福音)'は現代英語では'gospel'になった。'load'と'lady'は古英語の'hlaf-weard'と'hlæfdiʒe'の短縮形であり、文字通りの意味は'loaf-keeper(パン屋)'と'loaf-kneader(パンをこねる人)'だ。語源学はこのような伝統的な社会的役割を区別する証拠として、社会学的な興味をかき立てる。
 
接辞添加は英語の歴史にもそれ以前にも現れる。
接頭辞の'un-'、接尾辞の'-ful'と'-ness'などは古英語の時代から現在に至るまで生産性の有効な接辞である。'be-'や'-th'などは今はもう有効ではないが、既に確立した語の一部として残っている。古英語の「〜のような」を表す'-cund'という接辞はもう消えてしまい、'-wise'という他の接辞が使用されている事が多い。近年になってその生産性を発揮し始めた'-wise'は、どんどん新しい語を作り出し、「汚い英語」と言われる時代もあったが、今では公式の場でも受け入れられている。
一方、ラテン語とフランス語起源の'dis-', 're-', 'en/em-', '-able', 'age'などは、13世紀と14世紀以降、大量の借用語の中で引き継がれている。このような接辞が、英語の単語と組み合わされるのには、少し時間が置かれる。例えば、'dislike'が現れるには、1555年まで待たなければならない。
また、中期英語では、おそらくスカンディナビア語とフランス語の影響で、'get out 'や'give up'などの句動詞(phrasal verb)が着実に増えている。一方で、古英語の'outfare'や'outgo'など動詞の合成語の造語が無くなり、2種類の共存の時代を過ごし、新しいタイプの単語と入れ替わった。
 
中期英語と現代英語初期の時代の生産性の高まりの中で、転位(conversion)が現れる。「ゼロ派生」とも呼ばれるこの現象は、接辞の添加も無く、単語の品詞が変化するである。'cheat'は動詞から名詞へ、'lower'と'up'は形容詞または副詞から動詞へ変化した。これは語彙と文法の関係である。
16世紀から17世紀にかけて、もともとの英語の語彙にも外来語にも適用されている、同義語の造語が見られる。ロマンス語の接辞'-ize'がついた動詞が、もとの単語の転位した形と並んで使用されている。動詞に転位した'equal'と動詞'equalize'、動詞'civil'と動詞'civilize'である。否定にも対立する形が現れる。'disthrone'と'dethrone'と'unthrone'は動詞'enthrone'の否定語である。
現代英語では、固有名詞からの派生が増えている。例えば、'jersey(ジャージ)'はイギリス海峡にあるジャージー島であるし、'coach(馬車)'はハンガリーの街Kocsである。また'to boycotte(ボイコットする)', 'to lynch(私刑に処す)', 'sandwhich'など、人の名前が新しい概念やものの名前になった。加えて商品の広告のために、'Kleenex', 'Walkman'など商品名に造語が使われる事もある。
短縮も生産的な手段として用いられている。少なからず、経済的に情報を伝える事が出来る。従って、行政やメディア、それから日常的な会話などで用いられる事は当然である。音節の「切り取り(clipping)」は'pub(public house)'や'bike(bicycle)'など。「混成語」は'brunch(breakfast+lunch)'や'bit(binary+digit)'など。「アクロニム/頭字語」は'radar(radio detection and ranging)'や'laser(light amplification by stimulated emission of radiation)'など。また、IBMやBBCなどの「頭文字」もある。アクロニムと頭文字語の違いは、頭文字語はアルファベットの文字が別々に読まれる事である。
 
新たな言語は再分析(reanalysis)の対象となる。'editor'と'peddler/pedlar'は、存在しない'edit'と'peddle'からの派生語であると誤って分析され、新たに出来た語彙はそのまま定着した。このような逆成(back-formation)は'teach/teacher'のような組み合わせの類推の結果である。
単語の最後の's'が複数形と誤って分析され、新たな単数形が作られる事もある。'cherry'は古フランス語の'cherise'からの逆成であり、'pea'も'pease'あるいは古英語の'pise'、ラテン語の'pisa'の逆成である。
有名な形態素の分析は'-berger'である。オリジナルはハンブルグの街に関係している'hamburger'であるが、'ham(肉)+burger'と再分析された。その結果、'-burger'は接辞として、'cheeseburger'や'vegeburger'など同系の食べ物を表す形態素となった。今では'burger'単独で語として使用される。
 
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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