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Language in use: chunking
紋切り型の文法的な分析からではなく、実際の言語使用を見てみると、文法と語彙の境界はさらに曖昧である。
分析的な観点では、語はある特定のカテゴリーの名前である。例えば、'car'は物であるし、'buy'は行為である。文法はそれらの一続きの単語を、メッセージを持つ構造に変えてくれる。例えば、'I've bought a new car.'
しかし、世の中はメッセージであふれている。
とても独特で、一度限りのものもある。例えば、「おばあちゃんのピッケルの後ろの棚の上にネズミが死んでいる」。
一方で、似たような状況で頻繁に生じ、適切な場所で何回も繰り返されるものもある。「遅れてすみません」「ありがとうございます」「領収書お願いします」などだ。
日常生活でたびたび起こるこれらのメッセージは、ながいひとつの単語として考えられる。
ひとつの単語のように、表現の似たカテゴリーに関する、分類の性質を帯びている。たとえば、遅刻を謝る表現、感謝を伝える表現など。
そして、心理学的にも、それらの表現は単語と同じように扱われる。例えば「遅れてすみません」と言うとき、人は、単語を選び、それらを文法的に正しく組み合わせたり状況的にも文体的にも文章としてふさわしくすることはしない。
人は、既にある定型文の蓄積から、それらの表現を呼び起こすのである。
「おくれてすみません」は「すみません」と同じで、書くスペースがすこし広く必要なだけである。
 
チャンク(chunk)と呼ばれるこのような決まり文句(formulaic language)は、近年、重要な研究が行われている。特に、巨大な電子コーパスの開発により、単語の固定された結びつきや、一時的な結びつきの表をつくるのが簡単になったからだ。
研究により、言語は多く、これらの複数の語から成る決まり文句を含むことがわかった。よく引用される主張では、英語は何十万ものチャンクを持っているとされている。
よく見る'work'を含む句を考えてみれば、数十個はすぐに思いつくだろう。これらは、1つの単語としての意味を表している。
チャンクには慣用句(selectional idiom)と呼ばれるものも含まれている。良く生じる意味を表すため、習慣的に用いる表現である。
全ての言語にこのような慣用句は存在し、それはその言語を学ぼうとする人たちにとって大きな問題となる。
学習者は、文法と語彙の勉強をするが、状況やメッセージによって好まれる定型文を習わない。
逆に、中級レベルの言語の知識で習慣的な日常の表現を作り出すより、一度きりの正しい言葉で小説を書く方が簡単であろう。
 
チャンクの中には、語彙的な性質にも関わらず、典型的な文法として捉えられることがある。
例えば、'I'm going to'これは、単語の構造としてではなく、未来の助動詞としてひとつのチャンクをなしている。
この仮説には、発音が重要な根拠となる。ゆっくり発音すれば、/aɪm gəʊɪŋ tu:/であるが、普通、/aŋnə/や/amnə/と言う。
このチャンクは英語でよく使われる、'If I were you'や'What I meant was'のような構造と同じ、文法的な塊と枠組みを持っているのだろう。
 
一般的な定型な語彙の多さと、語彙的な構築物の頻繁さを考えると、全ての言語の話し言葉と書き言葉の大部分を、既に組み立てられたチャンクが占めているのではないだろうか。
研究によれば、英語の報道の文中の「動詞+直接目的語」の組み合わせのうち、37.5~46%が制限的な連語や、慣用句と捉えることが出来る。普通の英語では80%まで数値が上がる。
定義とサンプリングの問題のために、信用出来る結果を確立することができないが、これらは文法と語彙の合わさったカテゴリーに含まれるだろう。
 
A continuum
言語学者は、語彙と文法を別々のものとしてより、連続体として考える方に向かっている。一方で言語は、明らかに語彙であり、もう一方では純粋に文法的な現象である。
この2つの対極の間に、個々の単語の文法が含まれている。語彙的な単語があり、語をつなぎ合わせ小さな文法的な塊をなる構造もある。
この世界のほとんどの要素として、語彙と文法は、まったく異なる類いのものであるが、それがどこで終わりどこからが始まりなのかを、示すことは出来ない。
 
Michael Swan, Grammar(UK; Oxford University Press, 2005)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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