Text structure
もしも、テキストの部分ごとの構造的関係や移行が明確であれば、読み手と聞き手はテキストをもっと簡単に読むことが出来るだろう。
これは典型的に、談話標識(discourse marker)によって行われている。テキストの調節を主な機能とする語や句のことである。例えば、'on the other hand', 'similarly', 'by the way'などである。
英語の談話標識は、改まった話し言葉や書き言葉と全く異なる、使用域(register)に特有なものが多い。
そして、談話標識の正確な機能と意味を分析することは、簡単なことではない。なぜなら、'actually'や'I mean'のように、英語の会話で用いられるものはとても多義的で、整理した定義が出来ないからである。
他の言語でも、この分析は問題となっている。ドイツ語には、'ja'や'doch', 'denn'などの広い範囲の意味を持つ法の小詞がある。これらの小詞はとても曖昧な、構造的なニュアンスと、話者の気持ちを表す。
話し言葉によるテキストは、よく、広範囲の構造的装置を含んだ、会話のパートナーと一緒に構築されている。
特定の談話標識によって、会話を引き継いだり、話題を変えたり、返事を求めたりする。または、上昇、下降の抑揚を使い分けて、まだ話を続けるのか、聞き手に番を譲るのかを示唆することが出来る。
また、文法的な構造が、はっきりと会話の流れを調節することもある。主語+助動詞のグループである。'Isn't it?'のような質問の目印が、反応を求め、'Did you really?'のような返事を求める質問文が、注目を促す。そして、'Yes, I have.'のような短い返事である。
話し手はまた、形式的な挿入を多く使う。'Hi', 'Yes', 'OK', 'Sorry', 'Look', 'Please', 'Damn'。これらは実際、ひとつの語の分類を成している。
Face
話し手の文脈の中心は聞き手であり、文法が、話し手と聞き手の相互作用を促し、両者の不和を最小限にするために、会話を調整する。
日本語やタイ語などの言語は、対話者に対する尊敬と礼儀を表す、複雑な敬語(honorific)装置を持っている。
一方、英語では尊敬の表現は限られており、いくつか、尊敬や思いやりを表現する文法的な付属品がある。例えば、聞き手に選択権があることを示すために、要望は質問で表現する。'Please help me.'より'Can you help me for a moment?'が良い。
また、'I would think...'や'I was wonder...'のような、よそよそしい動詞の形は、より間接的に、主張や要望や質問を表現する。
抑揚も思いやりを表現するのに使われる。上昇形の質問文は相手への配慮を示し、下降形の抑揚をもつ質問分は断定的に聞こえる。
書き手も、もちろん、読み手に対して十分な尊敬を示す方法が必要である。例えば、'of course'は、読み手が実際には知らないだろう知識や見識を、持っていると信用する標識である。そして、これは、比較的明確で良く知られた情報を与える時に、書き手が読み手を見下しているような効果を減少させる。
Formal and informal language
おそらく、全ての言語で、公式な場と非公式な場の使用域(register)の違いがあるだろう。
話し言葉も書き言葉も、多かれ少なかれ、公式なものとなる。しかし、自然に、公式な使用域は書き言葉と、非公式な使用域は話し言葉と関連することが多い。
そして公式と非公式の差は、おそらく、社会が階層となって別れている範囲の影響を受けるだろう。
英語では、19世紀から続く民主主義化により、差が狭くなった。
一方、ある状況下では、この使用域が完全に別れてしまうことがある。
中世のラテン語の発達に従って、公式と非公式の差が広まり、土着の非公式な日常語(vernacular)が、イタリア語やポルトガル語や、ルーマニア語等の、新しい言語となったのである。そしてそれぞれの言語に、公式と非公式の使用域が発展した。
公式非公式の差は、語彙の違いによって表現されることが多い。英語では、'start/commence'や'tell/inform'などがある。
文法的に違いを表すこともある。フランス語では、実質的に書き言葉でしか用いられない過去時制が存在する。アラビア語には、公式的な話し言葉で使われる、主格、対格、与格をあらわす語尾がある。英語には、助動詞句の短縮や句動詞比較的話し言葉によく用いられる、非公式的と感じさせるような文法構造がある。
英語では'have got to', 'be going to', 'had better'は話し言葉で良く用いられる助動詞句であるし、また、決して書き言葉に用いられないような条件文や関係詞構文などもある。
書き言葉の伝統の権威により、話し言葉特有の文法は間違いとして非難されることが多い。
しかし、それらは何世紀もの間、口語英語の現在形の標準語である。'between you and I'や'Me and Alice went...'のような用法もそうだ。不定の単数の代名詞としての'they'の使用はとても古い。
現在の話し言葉と書き言葉の権威的な差の縮小により、これらの形も受け入れられやすくなって来ている。
Special kind of text
ある種のテキストは、一般的なテキストで用いられる文法規範とは異なる、独特な構造を持っていることがある。新聞の見出しや広告など、短縮の多いテキストは、冠詞や助動詞のような文法的標識が書けている場合が多い。
また、文学的なテキストは、意識的に通常の文法構造をもてあそんだり、無視したりする。
Michael Swan, Grammar(UK; Oxford University Press, 2005)
---Oxford Introduction to Language Study Series
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