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第1章でみてきたように、文法は、原理的に、語順派生機能語という装置から成る。
それらは、参与者の役割を区別したり、どのように要素と要素が関わっているのか説明したり、発話の機能を目出させたりするような問題を解決するのに必要な装置である。
では実際に、どうして文法が難解に見えるのか。
それにはいくつかの理由がある。
ひとつは、基本的な文法の装置は、その他の要素と一緒に機能するからである。単語は自然に機能別に分類される。そして、それらが合わさって、より高レベルな構造へと結合する。
 
Word classes
私たち、人間や物が関わる出来事や場面として世界を知覚している。
言語はこの観点を非常に良く表している。英語には出来事や場面を表す単語があるし、その参与者を表す単語もある。そして、それらに共通する質を表す単語も見出すことが出来る。
それから、要素同士の関係を知覚しているし、それを示す単語がある。
以上の分類は、弁別的な単語の文法的な分類や品詞(parts of speech)の存在を示唆するものではない。
'hit(打つ)'と'boulder(丸石)'は文法的な違いが無いが、行動と物という区別によって、動詞や名詞などと区別される。この2つは、ただ単に意味が異なるだけなのだ。
この2つの単語を別々の語と分類する理由は、コミュニケーションにおいてそれらが別々の機能をもって居ることを表すために、文法的な表示が必要だからである。
語順や派生など、この区別を付けるためのメカニズムを一度決めれば、自ずと単語は、参与者と出来事・場面の2つに分類される。
ここからは文法の領域である。
'food'や'car'は名詞(noun)として、特定の文法的な役割を担い、'fall'や'see'は動詞(verb)として、名詞とは違う文法上の役割を担っている。
 
このように、全ての言語で名詞と動詞、その他の品詞を区別している。
単語の区分には、この世の物を指し示す内容語(content word)や、言語内の関係性を指し示す機能語(function word)や、その他のさまざまな自然に別れる区分がある。
1つの言語の中にも、明確な区分がある訳ではない。英語の品詞は、冠詞(article)、名詞(noun)、動詞(verb)、形容詞(adjective)、副詞(adverb)、代名詞(pronoun)、前置詞(preposition)、連結(junction)、感嘆詞(interjection)などがある。
しかし、この区分にはあいまいな部分がある。'my'は形容詞に分類されてきたが、'green'や'difficult'よりも形容詞らしくない。近年は限定詞(determiner)と呼んでいる。
いわゆる代名詞というものはあまりにも多くのものを含んでいるし、'tomorrow'は名詞か副詞かはっきりしない。そもそも副詞というのが雑多な分類で、いろんな修飾語(modifier)や他のカテゴリーに入れられないものが一緒になっている。
結局のところ、英語の品詞というものは、我々がその区分を決めるのにどれだけこだわるか、に依るのである。
 
意味上の伝統的な品詞分けは、単語の分類と言う文法的な機能であり、単語を分類しただけであり、それだけでは意味をなさない。
どのように発話を構築するかによって、さまざまな分類の単語を用いて、とある意味が表現される。
例えば、火山が噴火したとき、伝えたい内容によって'erupt(噴火する)'と'eruption(噴火)'を使い分けなければならない。だが、伝えたい内容は同じなのだ。
 
単語の分類のあいまいな境界線は、世界と言語の不可避な誤差を招いている。
物は名詞で、出来事は動詞で、質は形容詞、というように、言語の分類が、私たちが知覚しているそのままの出来事と等しいものであるなら便利だろう。
しかし、当然違うのだ。世界はと巨大で、とてつもなく複雑である。カテゴリーはお互いに混ざり合っている。
'tree'は物だが、'fire'と'rain'は物だろうか。'up'は質か、関係性か、状態か。
私たちが知覚してい世界をそのまま、限られた品詞に分類することは出来ない。私たちの持っている言語学的で概念的な押し入れには入りきらない程、世界にはたくさんの事象がある。
したがって、単語同士の境界は曖昧で、言語に依ってそれぞれに異なっているのである。
 
Code and message: from word to phrases
即席的で簡単な分析では、言語を、メッセージ(message)を構築するために使用されるコード(code)であると言うことが出来る。人名や地名から、一般名詞、一般動詞に至るまで、言語に属する単語はコードアイテム(code item)である。
実際の言語使用において、言語で特定の机に関して述べることも、机と言う家具の種類についても、ある型の机についても述べることが出来る。
特定なものと一般のものに関する切り替えはどうなっているのだろうか。
 
文脈が大きな役割を果たすだろう。
食事中に「塩とって」と言えば、コードアイテムの「塩」は効果的に働き、メッセージを伝えることが出来る。
しかし、突然「セーターとって」と言ったらどうだろうか。どのセーターを指し示しているのか分からないし、発されたコードアイテムはメッセージを伝えることが出来ない。適切に伝えるためには「私の」「古い」「黄色い」などの複数の語を用いることで、特定のセーターを指し示すことが出来る。
 
'my old yellow sweater'という塊、句(phrase)は、メッセージとしての言語の集合である。これは、'my','old','yellow','sweater'の、コードとしての言語の集合とは異なる。
発話とは、語の羅列ではない。発話は句の結合した連続である。それぞれが伝達するべき発話の要素と関係している。
誰が?という質問には名詞ではなく名詞句'that old man'で答える。
どこで?という質問には前置詞ではな前置詞句'in the town hall'で答える。
'The doctor said she was baffled'の'she'は名詞ではなく名詞句'the doctor'を参照している。
語順の変更も普通、句を単位に成される。
'Mrs Porter came round the corner'を'Round the corner came Mrs Porter'ということは出来るが、'*Porter round the corner came Mrs'とは言えない。
しばしば句を分解すると、英語のように疑問文になったりするので、句内の構造と位置は要注意である。
 
句は、構成要素である語が並べられたものとして登場し、息継ぎに区切られ、抑揚の曲線でまとまりを成している。
しかし、形式上のつながりだけではない。古典ラテン語は形容詞と名詞の間に他の句が入り込むことがある。ドイツ語は、不定詞と過去分詞が節(clause)の最後に置かれ、動詞句が分割されることで悪名高い。
 
Clauses
1つの句は1つのメッセージを成すことが出来る。'More coffee?'
もっと場面や過程に関して詳細な情報を伝えたい時は、複数の句を組み合わせて、より高レベルな節(clause)を成すことが出来る。
典型的な節は、少なくとも、ひとつの動詞句(VP; verb phrase)とひとつのの名詞句(NP; noun phrase)から成っている。(動詞句という用語は、文法学者によって、助動詞の扱いが異なるので要注意である)
付随的な情報に関しては副詞句や前置詞句など、その他の要素を用いて表す。
 
Michael Swan, Grammar(UK; Oxford University Press, 2005)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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