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言語のシステムから項、項から価値が導き出される時、項の意味は、隣接関係なしに考えることが出来ないことが分かる。
価値に関して、語のシステムからの考察をする。
 
言語のない概念はあるだろうか。哲学者と言語学者は否定する。
事前に確立された概念は存在しない。
では、概念と関係のない、確固たる音の単位は存在するのか。これも否である。
言語はこの不定形なもの同士の、完全な恣意的な契約によるものである。したがって語に発生する価値も恣意的である。
 
では、シニフィアンとシニフィエの結びついた項についての考察。
この結びつきが記号の存在理由であり、価値は二次的な産物である。どちらか片方では存在し得ない。
この契約はどのように生じたものなのか。
概念が囲まれるのが先だろうか。それでは、自然に出来上がるひとまとまりの概念があり、それを表すものが、必然的に他の言語でも一致してなければならない。
人々の心の中に生まれる「親愛なる」あるいは、フランス語で'cher'という概念がまず始めに出来上がり、そのあとシニフィアンを付与されるのであれば、ドイツ語の「親愛なる」と「高い」の両方の概念を持つ'theuer'の存在を説明出来なくなる。
言語以前に「親愛なる」や'cher'や'theuer'という概念は、存在しないのである。
 
項としてのシニフィアンとシニフィエのまとまりは、他の項との対比による輪郭を表している。
概念の輪郭は、他の概念の分布との関係でしか決まらない。
輪郭が決まれば、シニフィアンとシニフィエの契約に基づく項が出来上がる。
 
以上のことは、語彙以外にも言える。
たとえば、セム語のシステムには、現在、未来、過去の区別が存在しない。古ゲルマン語には未来形がない。時制は事前に確立されている概念ではないのだ。言語によって生じる価値であると言える。
 
まとめ。
シニフィアンとシニフィエの契約は恣意的で、その契約に基づき生じる価値も、曖昧で誰がか決めれるものではない。
シニフィアンとシニフィエ、どちらが欠けていても語は存在しない。
シニフィエは、各言語システムにおける、項の相互関係を前提としている。
 
フェルディナン・ド・ソシュール著 影浦峡、田中久美子訳
『ソシュール 一般言語学講義 コンスタンタンのノート』 東京大学出版会 2007

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