語彙規則の大きな例外として、
順序付けパラドックス(ordering paradox)と呼ばれるものがある。
クラス1、クラス2の接辞付与の順序が、
実際の接辞結合の順序と矛盾している場合である。
"grammar"から"ungrammaticality"が出来るまでの順序は、
語彙規則によれば、
"un-"がクラス2、"-ical"と"-ity"がクラス1なので、
grammer→grammat-ical→grammatical-ity→un-grammaticality
になる。
しかし、"un-"という接辞は形容詞にしか付加しない規則がある。
これを難しい言葉で下位範疇化(subcategorization)という。
動詞が名詞(目的語)とくっついて、より大きな動詞句を作るように、
大きなカテゴリーが、支配する単語の品詞を指定することを言う。
"un-..."が支配できる単語は形容詞だけである。
("ungrammatical"は"ungrammaticality"に支配される。)
従って、"un-"は、形容詞"grammatical"に直接付与しなければならない。
grammar→grammat-ical→un-grammatical→ungrammatical-ity
品詞を考えるとこれが正しい。
しかしこの順序は、語彙音韻論的には、
基底レベル→クラス1接辞付加→クラス2接辞付加→クラス1接辞付加
となり、規則に反する。
このような矛盾の説明が出来ず、
語彙音韻論の流行は下火になり、音韻論は新たな学説を模索してゆく。
今まで説明してきたように、
基底レベルと表層レベルの音韻違いを、細かな規則に分解し、説明する手法は、
コンピューターの開発が盛んな1970年代に流行した。
コンピューターも同様に、複雑な数式の計算を、
より簡単な数式の組み合わせに置き換えることで、高性能化していった。
8×3は、8+8+8に分解される。
音韻変化を、いくつもの音韻規則で説明する手法は特に、母語習得の面で批判されることが多かった。
私たちは、こんなに複雑な規則を全て知り、適用させて発話しているわけではないのだ。
かくして、80年代に流行する、
新たな音韻論のキーワードが発明される訳だが、それは又後日。
参考文献
田中伸一 『日常言語に潜む音法則の世界』 開拓社 2009
順序付けパラドックス(ordering paradox)と呼ばれるものがある。
クラス1、クラス2の接辞付与の順序が、
実際の接辞結合の順序と矛盾している場合である。
"grammar"から"ungrammaticality"が出来るまでの順序は、
語彙規則によれば、
"un-"がクラス2、"-ical"と"-ity"がクラス1なので、
grammer→grammat-ical→grammatical-ity→un-grammaticality
になる。
しかし、"un-"という接辞は形容詞にしか付加しない規則がある。
これを難しい言葉で下位範疇化(subcategorization)という。
動詞が名詞(目的語)とくっついて、より大きな動詞句を作るように、
大きなカテゴリーが、支配する単語の品詞を指定することを言う。
"un-..."が支配できる単語は形容詞だけである。
("ungrammatical"は"ungrammaticality"に支配される。)
従って、"un-"は、形容詞"grammatical"に直接付与しなければならない。
grammar→grammat-ical→un-grammatical→ungrammatical-ity
品詞を考えるとこれが正しい。
しかしこの順序は、語彙音韻論的には、
基底レベル→クラス1接辞付加→クラス2接辞付加→クラス1接辞付加
となり、規則に反する。
このような矛盾の説明が出来ず、
語彙音韻論の流行は下火になり、音韻論は新たな学説を模索してゆく。
今まで説明してきたように、
基底レベルと表層レベルの音韻違いを、細かな規則に分解し、説明する手法は、
コンピューターの開発が盛んな1970年代に流行した。
コンピューターも同様に、複雑な数式の計算を、
より簡単な数式の組み合わせに置き換えることで、高性能化していった。
8×3は、8+8+8に分解される。
音韻変化を、いくつもの音韻規則で説明する手法は特に、母語習得の面で批判されることが多かった。
私たちは、こんなに複雑な規則を全て知り、適用させて発話しているわけではないのだ。
かくして、80年代に流行する、
新たな音韻論のキーワードが発明される訳だが、それは又後日。
参考文献
田中伸一 『日常言語に潜む音法則の世界』 開拓社 2009
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