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概して、チョムスキーの普遍文法と対立する言語相対論を、
支持する学問領域として認知言語学(cognitive linguistics)がある。
認知言語学は、サピア=ウォーフの弱い仮説を支持している。

認知言語学とは、言語活動を身体的「経験」に帰着するのもとして捉える。
認知言語学の言う「認知(cognition)」とは、
人間の五感で感覚し、記憶し、学習し、判断する、
身体から精神の働きを総称した言葉である。
類義語としての「認識」は、おもに哲学の分野の用語である。
人が何かを知る時に、見たり、聞いたり触ったりと言うような、
五感による身体的経験を重要視する考えを経験基盤主義(experientialism)と言う。

認知の仕組みは、一般に、以下のように説明される。
物質の存在を、五感で感じ、概念化(conceptualization)し、
記号化(encode)し、概念操作によって意味付け(sense-making)する。

物質がそこに存在していることと、認知されることは遠い。
例えばダイヤモンドが存在している場合、
人がそれを見たり、持って重さを量ったり、床に落とした音を聞く。
そして心の中に、ダイヤモンドに似たような姿を映し出す。
心の中に虚像があることで、また別の機会に、同じような物質を感覚したときに、これもダイヤモンドだと、理解する事ができる。
これを概念化と言う。

そして記号を当てはめる。
ソシュールの考えでは、その時の記号は「いぬ」でも「ねこ」でも何でも良い。
今回は日本の社会で通用する「ダイヤ」を用いる。
これで、「ダイヤ」という記号を目の当たりにした時、
私とあなたは、知らない第三者も、同じ概念を思い浮かべる事ができる。
そして、色が濁ったダイヤモンド「うさぎ」、傷がついたダイヤモンド「りす」など、
隣接する記号が存在するほど、「ダイヤ」によって狭い範囲の概念を伝えやすくなる。

さらにとある文脈で「ダイヤ」が使われ、環境を主体的に解釈する事によって、
「ダイヤ」がセレブリティーの証だとか、結婚の約束だとかという
意味付けを行うのである。

意味付けにおいて、認知対象が認知主体に対して価値のある情報を提供する事を
「対象が行為をアフォード(afford)する」と言う。
人間と環境の相互作用の中で、環境から人間への働きかけに注目した視点である。
このような考え方をアフォーダンス理論(affordance theory)といい、
人間から環境への働きかけを再重要視する言語決定論とは、
真逆の視点をもった理論であるとも言えるだろう。

参考文献
吉村公宏 『はじめての認知言語学』 研究社 2004

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