チェスと言語は共通点が多い。
チェスも盤上での価値に基づき動くゲームである。駒と駒の相互の関係性により局面全体が定義され、一手一手で局面の緊張関係がころころと変わってゆく。
1、駒の価値は、その他の駒との位置関係(システム)の中で決められる。
2、システムは常に入れ替わるもので、駒の価値は一時的なシステムに基づく。
3、システムの移行は、1つの駒の移動であり、全ての駒が移動するのではない。
3に関しては以下の考察が出来る。
Ⅰ、通時的な事象が、チェス盤という範囲とともに、一手という形で明示的に示されている。
Ⅱ、駒の動きは、盤上の状態からは計算出来ない。価値の変化を伴わない駒の移動もある。
Ⅲ、一手前の均衡状態と、今の均衡状態は全く別のものである。
チェスと言語の決定的な違いは、チェスは指し手の意図が影響することである。言語の通時的な変化には、計画は存在しない。
しかし例え、価値の移動が計画的であっても、移動によって作り出される新たな局面の本質(システム)との結びつきを示すものではない。
言語に作用する法則が、まず、通時的であるか共時的であるを区別しなければならない。
a、通時的な法則はあるのだろうか、そしてその本質は何か?
b、共時的な法則はあるのだろうか、そしてその本質は何か?
この区別をしなければ、その法則の正誤や適性についての議論が出来ない。
通時的な法則の例
1、ラテン語のkの音は、フランス語に入るとchの音に変化する。
4、ギリシャ語では、語頭のσがhに変化する。
5、ギリシャ語では、語末のmがnに変化する。
6、ギリシャ語では、語末の閉鎖音が消去される。
共時的な法則の例
2、フランス語のアクセントは常に語の最後の音節にある。
3、ギリシャ語の語の最後には、σ,ρ,ν以外の子音は表れない。
通時的な法則は強制的で動的である。
新たな状態に変化する為に、以前の状態は消去される。
共時的な法則は、存在する秩序に関するものである。
もちろん状態の秩序は一時的なものであって、状態を維持するものではない。力の強い通時的な法則により無効にされる。
フェルディナン・ド・ソシュール著 影浦峡、田中久美子訳
『ソシュール 一般言語学講義 コンスタンタンのノート』 東京大学出版会 2007
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