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面と向かっていても、電話を介していても、人が話をするときは、話し手の口から出た音が、聞き手の耳に伝わる。
このような聴覚信号は、録音や分析によって観察することが出来る。
認識による音の音声分類により、どのようにして音が作られるかを知らずにも、聴覚パターンを見出すことが出来るが、それはまったく異なる分類になってしまうだろう。
これから、まず、音響学的な聴覚パターンの分類を述べた後に、伝統的な音声学の音声分類がどのように当てはまるのかを、見てゆく。
 
Acoustic waveforms
全ての聴覚できる音は、振動を作る空気の圧力の変化によるものである。
振動では、特定の場所で圧力が高くなったり低くなったりする。
よく、上下に動く波形(waveform)で表現されるが、実際の音の振動は、爆風と同じ、外に向かう波である。
もし、振動が素早く起これば、それを周波数(frequency)が高いまたは多いと言う。
ゆっくりな振動を、周阿数が低い、または少ないと言う。
もし、同じパターンの波形が何回も繰り返されているのならば、それを周期的(periodic)な音という。その逆は非周期的(aperiodic)な音である。
もしかなりのエネルギーを含む音であれば、それを振幅(amplitude)が大きいという。
2da6189b.JPG

▲画像は、管理人により録音・分析された波形(上段)とスペクトログラム(下段)。スペクトログラムに見られる赤い点は、フォルマント。

どんな複雑な波形も、単純な、異なる周波数に分解出来るというのが、音響分析の基本的な法則である。
その分解方法をスペクトル分析(spectral analysis)という。白い光を、虹色のグラデーションに分解出来るのと似たものである。
音響分析では、しばしば、マイクを使って捉えたそのままの波形よりも、スペクトル分析の結果をよく利用する。
その結果を示すのに。よく使われる図が、スペクトログラム(spectrogram)である。
一時期「声紋(voice-print)」という名称も流行したが、法的な用途で個人を識別出来ると言う疑わしい主張がなされた為に、今はその名を使わない。
スペクトログラムの縦軸は、周波数の高さで、低いものが下になっている。左から右への軸は時間で、左が開始時間である。
黒さの度合いが、その時間、その周波数での振幅を示している。黒くなっている点の周波数の音が、大きな音が出ている。
横に、何本かの線のように黒い部分が連なる場合がある。これをフォルマント(formant)と呼ぶ。
最新のスペクトグラムでは、エネルギーの大きさにより色で分類し表示することが出来るが、解析がより難しくなると、不評である。
 
一般的に、聴覚信号は人間の声道でつくられる。起点(source)で音声を作り出し、フィルター(filter)で音声を変容させる。
このsource-filter説は、音声音響学での基礎的な概念として受け入れられている。
例えば、母音の起点は静態振動であり、口腔の舌の高さや口唇の形がフィルターとして働き、特定の周波数が強められ、他の特定の周波数が弱められることになる。したがって、舌の位置や唇の形を変えれば、異なる母音が発声される。
 
Acoustic and articulatory classification of speech sounds
ここでは音声の物理的な側面を、より音声学的なカテゴリーで見てゆく。そのためにまず、音響学的には、全ての音声を以下の4つに分類出来る。
1、周期的音声
2、非周期的音声
3、周期的音声と非周期的音声の混合
4、無音
 
1、母音(vowels)
母音には、規則的な振動パターンを持った、周期的音声(periodic sound)である。
母音はそれぞれ、和音の音符のように、異なる周波数のフォルマントを持っており、音響音声学者は、フォルマントが母音の性質にどのような影響を及ぼしているかを研究している。
フォルマントは、スペクトグラム上では平行な棒となって表われ、一番周波数の低いフォルマントから、1、2、3、、、と番号が振られる。
この第1フォルマント(Formant1)の周波数と、母音の口の開き方がおおまかに対応している。第1フォルマントが低い程、狭母音に近くなる。
そしてその次の第2フォルマント(Formant2)は、母音の舌の位置が対応している。第2フォルマントの周波数が高い程、前舌母音に近く、周波数が低い程、後舌母音に近くなる。
周波数の数値やその関係は個人差が大きいので、実際の数値を示すことは出来ない。
2、摩擦音(fricatives)
無声摩擦音は、非周期的音声(aperiodic sound)である。そして、母音に見られるようなフォルマントは持たない。
そのかわりに、広めの周波数の幅にまとまったエネルギー集まる。例えば、英語話者の/ʃ/は/s/よりも高い音が出る。なぜなら、/ʃ/の発音の際に口唇を丸める習慣があるからである。
有声の摩擦音は、周期的音声と非周期的音声の混合である。無声摩擦音の隙間音と声帯振動の組み合わせである。
喉頭でつくられる音声は、周期的である。
3、破裂音(plosives)
破裂音はいろいろな音響学的な型が現れる。
無声破裂音はまず、無音(silence)からはじまる。語頭の無声破裂音は完全に口腔が塞がれた状態から始まる。語中の無声破裂音はかなり短い無声状態を伴う。
口腔の閉鎖を開放する時は、音響学的に関する限り、出来るだけすばやく行う。このとき空気の破裂を含むので、一瞬の摩擦音のように、非周期的音声となる。
英語によく見られるが、帯気音(aspiration)と呼ばれる空気の流れを伴うと、また違った音声となる。
有声破裂音は、声道が閉じられている間も、ほんの少しだけ、喉頭からの周期的音声がきこえる。一般的に英語の有声破裂音は、フランス語やスペイン語、イタリア語に比べて振動が少ない。
4、鼻音(nasals)
英語の/m/や/n/は周期的音声で、母音に近い。しかし、高い周波数のエネルギーが少なく、明確なフォルマントも観察されにくい。
主に、喉頭の音声が、母音のように口腔を通らずに、鼻腔に流れ鼻孔から外に出るためだとされる。
耳を塞いで「んーまーんーまー」と発声すると、「ん(m)」ではより低い音が作られていることが分かる。
5、破擦音(affricates)
破擦音は、音響学的に複雑な音声である。
無声破擦音の場合、最初は無音状態から始まり、閉鎖の解放の後に非周期的な摩擦音が続く。
有声破擦音は、もし本当に有声なのであれば、閉鎖の最中に喉頭でつくられる周期的な音声が、解放の後には周期的な声帯振動と非周期的な摩擦音が生じる。
6、接近音(approximants)
接近音はかなり母音に近い調音であるし、音響学的に類似していることは疑いない。また、接近音にはフォルマントも観察される。
たたき音(taps)やはじき音(flaps)は通常、有声で、かなり短い有声破裂音だと言える。
また、ふるえ音(trills)も有声であるが、声帯振動と調音器官の一部分の振動により、二重に周期的な特殊な音声である。
 
Acoustics of suprasegmental features
その他の、音響音声学的な特徴は、5章で述べたような、超分節的なものである。
声調や抑揚、などの声の高さの変化は、有声のときにだけ現れる。
声の高さは、基本周波数(fundamental frequency)と呼ばれる、声帯の周波数に関係するものである。基本周波数は客観的に計算することが出来る。
同様に、音声や音節の声の大きさを、強度(intensity)から求めることが出来るし、音声の時間長も継続時間(duration)から求められる。
コンピューターを使って計測することによって、抑揚や強勢、リズムに関してより多くのことが発見出来る。
 
Peter Roach, Phonetics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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