第4章、言語の抽象的な実体
抽象的実体(仏 entité abstraite)は、具体的実体に関する研究が事前になされていなければ語る事が出来ない。
今まで、言語に関して具体とは、音の単位に関するものを言ってきた。
抽象とは、そのような直接的な主体の働きかけではなく、主体の行為により間接的に理解出来るものである。
言語には順序が存在する。
古フランス語では、名詞を並べるだけで、"de(の)"を用いずに、所属を示す事が出来る。"de"の概念は、順序のみによって判断される。
Hôtel(宿) + Dieu(神) = Hôtel Dieu(神の宿)
さらに、"désireux(心配な)"という単語が、désir-と-euxの2つの単位からなる事を認めても、eux-désirとは言う事は出来ない。
言語は線状であるが故に、前と後ろがあり、順序が手だてとして存在している。
順序は抽象的な実体である。けっして具体的ではない。
活用には種類がある。
ラテン語のdominus(主人)とrex(王)の属格である、domini(主人の)、regis(王の)、regum(王達の)には-iと-isと-umは異なる言語である。
しかしこれらは同じ価値を持ち同じように用いられる。言語的、モノ的基盤から離れた抽象が存在する。
それがつまり、属格という価値である。
このような同一性のシステムも、言語の仕掛けであると考えられる。
このような分類がどこまで有効であるかははっきりしない。
なにせ、具体的な実体の研究が先行するべきである。
最終的に抽象的な実体に関する考察は、言語が具体的単位を基盤として成っている事がわかるだろう。
空によって何かの関係が示される時。L'homme j'ai vu(私が見た人)
その空には、具体的な基盤が存在する。L'homme que j'ai vu(私が見た人)
L'homme j'ai vu(私が見た人)という単位にも、立ち戻るところは具体的な基盤である。
最後に抽象(仏 abstrait)に関する考察が必要である。
抽象には、まったく言語と関わりのないものがある。
音とモノ的な言語から離れた、心理学の領域の意味。それから、意味とモノ的言語から離れた、音。これらはもはや言語ではない。
一方で、言語には抽象的なものなどないと言う事も出来る。このとき「抽象」の言葉遣いが前述のものと異なる。
主体の意識に現れるものは、具体であり、主体の中に抽象は存在しない。抽象化するのは文法学者のみだ、という主張があり得る。
参考文献
フェルディナン・ド・ソシュール著 影浦峡、田中久美子訳
『ソシュール 一般言語学講義 コンスタンタンのノート』 東京大学出版会 2007
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