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第4章、静態言語学と歴史言語学、言語学の二重性
 
これは前回の、補足の第3章に続くものである。
言語と時間の関係を、もう少し述べなければならない。
ものの存在には2つの軸がある。
時間の要素を排した、状態としての、同時性の軸(仏 axe des contemporanéités)。
それから、時間に沿った変化を追う、継起性の軸(仏 axe des successivités)。
 
今までの言語学は、時間を無視した議論がなされてきた。時間が大切だとは考えられてこなかった。
その他の科学でも、時間が学問を定義する際に重要な要素であるとは考えられていない。
地理学は、時間軸を前提にする学問だと言えるが、時間軸を排した、状態としての地球が、それらと別枠で語られることは無い。
法律に関する学問は、法律の科学と法律の歴史があるが、この区別が絶対に必要という訳でもない。
政治制度の研究は、時代を無視した情勢を語る。情勢の変化も研究されるが、それが別のものとは考えない。
 
しかし経済学には、経済システム変化の歴史と、経済システムの学問が、2つに分かれている。
なぜなら、経済学が、価値を扱う学問であるからである。
資本や労働の価値の、社会的な釣り合い、平衡が研究される時、現状と歴史を混同するのは致命的である。
150円に対応する林檎Aを考える時、隣接する価値が必要となる。200円の林檎B、150円の梨Aなど。
この時の前提は、それが同時に起こっていることである。
50年前の林檎Cもしくは去年の梨Bは、これらと一緒に語ってはいけない。時間軸は、時間軸のみで捉えなければならない。
加えて今の150円と、50年前の150円の価値は違う。林檎の質も、おそらく違う。
 
言語は、概念と聴覚イメージの、2つの価値を持つだけである。価値に関して、より難解である概念が、言語記号の基礎であると言えるだろう。
言語の価値を語る時、それは隣接し共存する価値でなければならない。同時に存在する、複数の概念との対立。
言語学は、経済学同様、状態と歴史の2つに分けなければいけない。
 
まず、今までの言語をめぐる考察を考える。
まず、伝統文法がある。
17世紀に作られた、ポール=ロワイヤル文法は、ラテン語や以前のフランス語から完全に分離した、当時のフランス語を定める試みであった。
その他のラテン文法家たちの仕事も、ある時代の状態を抜き出したものになっている。
もちろん指摘出来る部分は多い。彼らは話し言葉と書き言葉の区別をしていないし、言語学に関する視野が欠けている。
次は、ボップから始まる歴史言語学である。
これは、単純に、時間時期にそって言語の変化を追ってゆくだけのように見えるが、実際は異なる。気まぐれに状態が組み込まれ、歴史と状態の区別がなされていない。
歴史言語学に続く文法も、ある時代に限定して考察をしていないので、対象があやふやなままになっている。その点、伝統文法の方が科学的である。
 
伝統文法と歴史言語学のどちらからより多くのものを学べるかと言うことではなく、この2つの秩序を対比させることだ重要である。
 
ここで用語の整理をしておく。
通時態(仏 diachronie)は時間軸にそうものであり、歴史進化、あるいは変化などの継起的、動的な側面。
共時態(仏 synchronies)はある地点での平衡状態である。同時的で、静的な側面。
この2つは、言語の動と静の状態であるから、同時に捉えることは不可能である。
 
参考文献
フェルディナン・ド・ソシュール著 影浦峡、田中久美子訳
『ソシュール 一般言語学講義 コンスタンタンのノート』 東京大学出版会 2007

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