母音は、調音中に調音点や口の開き具合を調節することが容易なので、
多くの言語で二重母音(diphthong)がある。
発音の最中に口を動かすので、無限の中間音が存在するが、
最初と最後の音が目立つので、a→i、o→i、a→uのように聞こえる。
音声記号で書くときは[ ai ]、[ oi ]、[ au ]のように書くが、
二重母音なのか、母音連続なのか分からないので、
音節の切れ目にはピリオドを打つ。
二重母音は、副次的な字母の下に、副次記号[ ∩ ]をつける。
日本語の「歯科医」と「視界」は[ai]の発音方法が異なる。
上の段が「歯科医」、下が「視界」である。
二重母音では一般的に、より広母音であるほど強く、より狭母音であるほど弱くなる。
[ ai ]のように強弱の二重母音を下降二重母音、
[ ia ]のように弱強の二重母音を上昇二重母音と言う。
中国語やスペイン語には三重母音も存在する。
参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008
日本語での発話の具体的な平均値は日本語のテンポ(06/18)でのべた。
母音の長いものは子音と同じ調音符[ː]を使用する。
日本語では通常の二倍(2モーラ)になる。
おばさん[obasan]
おばあさん[obaːsan]
長母音ほどではないが、普通の母音より少し長くなる場合は半調音符[ˑ]を使用する。
英語やロシア語などでは、
強勢のつく母音が若干長く発音されることが知られているが、
母音の長短が意味の違いとなることは無い。
日本語、韓国語、モンゴル語、エストニア語などが、
母音の長短で意味が区別される代表的な言語である。
一方短く発音されるものを超短音といい短音符(breve)[ ˘ ]をつける。
球の下半分で、二重母音の副音とは逆である。
以下に一度子音の補助記号として紹介したものを、また述べておく。
無声音の白丸[ ゜][ 。]は上にも下にも付けれるが、通常は下につける。
母音の字母は有声音を前提としているため有声音の記号は母音には使われない。
母音の鼻音化の[ ~ ]はフランス語やポルトガル語で有名だが、
母音に挟まれた鼻音などで、多くの言語で現れる現象である。
参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008
下の筋肉が緊張して盛り上がり、咽頭に狭めが生じ、籠った低い音が加わる。
この音が、Rの発音に似ているため、r音化といい、
字母に右鉤[ ˞ ]をつけて、[ ɑ˞ ]、[ ɚ ]のように表記する。
中国語の北京方言やアメリカ英語で、rの直前の母音に現れることがある。
また、同じ調音点でも、咽頭の広さ、
つまり舌根の位置で音素を区別する言語がある。
西アフリカのイボ語やアカン語がそうである。
普通、舌根の位置は、舌の最高部の位置によって移動するが、
この言語では意識的に舌根を動かす。
舌根が前に出て、咽頭の空間が広がる時は、字母の下に[ ┤]を付ける。
舌根が後ろに下がり、咽頭の空間が狭まるときは、字母の下に[ ├ ]を付ける。
素性としては、舌根前進(Advanced Tongue Root; ATR)と言う。
参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008
前舌の4点、中舌の3点、後舌の4点では
全ての舌の位置を表すことができない。
そのための補助記号が揃っている。
まず、円唇の程度の強弱を、字母の下に半円を付けることで示す。
[ ɔ ]の向きが、円唇性が強く。
[ c ]の向きは、円唇性が弱くなる。
前舌よりになる時は字母の下に[ + ]を、
中舌よりになる場合は、字母の上にウムラウト[ ¨ ]をつける。
後舌よりの発音には、字母の下に[ - ]を付ける。
中段中舌より、つまりシュワー[ ə ]寄りの発音になるときは字母の上に[ × ]をつける。
そして、舌の高さを表す場合、
舌の最高点が高い、つまり狭母音寄りになるときは、字母の下に[ ⊥]、
舌の最高点が低い、つまり広母音寄りになるときは、字母の下に[ T ]をつける。
日本語の母音を大まかに表記すると以下のようになる。
参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008
強勢(stress)は、韻律のなかでも特に、強弱の差である。
日本語は、イントネーション(高低)による区別をするので、
ストレスが意味の違いを生むことは無い。
ストレスを利用する言語の代表はやはり、英語である。
今更であるが、英語の発音記号とIPAは違う。
各国語の発音は各国で定めるので、IPAに準じている必要は無い。
特に、英語の発音記号での第一アクセント(´)、第二アクセント(`)記号は、
IPAでは異なる意味を指す。
IPAでの第一強勢は、[ ˈ ]上付き縦棒である。
第二強勢は[ ˌ ]下付き縦棒である。
記号はそれぞれ、強勢のある音節の前におかれる。
"phonetician"を例に取ると、
第一強勢は"ti"、第二強勢は"pho"にある。
英語の発音記号ではアクセント記号は母音の上に付けるので、/fo`unɜti´ʃn/である。
IPAではこれを[ ˌfoʊnəˈtɪʃən ]となる。
円唇後舌広めの狭母音の副次母音記号は省略した。
参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008
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