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語彙規則と後語彙規則の違いは以下の六つである。

規則適応後に生じる音が、音素内に収まっているかと言う問題は、
特に、語彙規則と後語彙規則を区別する大きな原理である。
これを構造保持(structual preservation)と言う。
音素対立の中和や、子音の無声化など、
特定の言語が持つ音素体系の中での変化は、構造保持があり、語彙規則である。
一方、異音変化や英語で見られる曖昧母音などは、
その言語の音素ではない音に変化するため、構造保持が無く、後語彙規則である。

その次は、適応語種である。
語種とは、固有語、借用語などの区別である。
日本語には、和語、漢語、外来語と、それらが混ざった混種語があるとされる。
連濁などは和語にしか適応されない。
連濁のように適応語種を選ぶものが、語彙規則である。
異音規則のように、語種に依らず自動的に適応されるものが、後語彙規則である。

05/27で述べた、随意性も大きな目安になる。
世代や性格など、話者による個体差が無く、
会話のスタイルに左右されないものが、語彙規則である。
「すごい」→「すげー」の母音融合など、
個体差があり、発話のスピードなどに影響されやすいものが、後語彙規則である。
これと同時に、単語を越えた変化も生じる。
通常語彙規則として、単語内で生じる鼻音同化は、
単語を越え、超分節的に、後語彙規則として生じることがある。
英語の単語では、"impossible"のように、"p"の前の鼻音は"m"である。
しかし、話者によっては、"in Paris"も、"im Paris"と発音することがある。
これが単語を越えた、鼻音同化である。

最後の違いは、例外の有無である。
語彙目録としての深い部分に関わる語彙規則には、個別的な例外が多い。
和語の連濁も、「味噌汁」(cf.「だし汁」)や「夏草」(cf.「野草」)などの例外がある。
一方、より広範囲に、随意的に生じる後語彙規則は、
まんべんなく適応され例外が少ない。

これら六つの性質は、全てが綺麗に二されるわけではないが、
音韻規則にも性質の分類が可能であると言う考えは、
さらなる細かい区分を生み出した。
また、先に述べたように、後語彙規則は音声学と隣接しているが、
音韻論はあくまで、抽象的体系の文法の範囲で、
音韻規則を扱っているということが、明確な音声学との境界線であるといえる。

参考文献
田中伸一 『日常言語に潜む音法則の世界』 開拓社 2009

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