日本語のテンポでは、日本語の発音の時間に関してのべたが、
今回はそれをどう知覚しているかと言う視点での調査結果を述べる。
テンポに関しては、JND(Just Noticeable Difference)という実験方法がある。
複数のサンプルから取ったモデル値から、
音韻長を伸ばしたり縮めたりした加工音声を被験者に聞かせ、
自然か不自然かを判断してもらう方法である。
一般的には10~15msの間で行われる。
この実験で、結果報告の前に典型的な質問がある。
Q. / a /のモデル値は120ms、/ i /のモデル値は80msである。
文章のなかで、/ a /と/ i /、それぞれから40msずつ引いて被験者に聞かせると、どちらがより不自然であるか。
つまり、80msの/ a /と、40msの/ i /の、どちらが違和感が強いか、という質問である。
切り取られた時間は同じなので、科学的に考えると、この二つには誤差なし、となる。
さて、答えを言う前に、いくつかの実験結果を述べてゆく。
ある単語のひとつの音韻を引き延ばしたり、縮めたりした語をいくつも聞かせ、
自然さ(naturalness)を点数で評価してもらう実験の結果である。
1、「harahara(ハラハラ)」と「gakureki(学歴)」の/ a /を同様に伸縮させると、
「gakureki』の方が自然性のが減少幅が大きかった。
2、「sashidasu(差し出す)」と「barabara(バラバラ)」の/ a /を伸縮させると、
「barabara」の方が自然性の減少幅が大きかった。
3、「iriguchi(入り口)」と「sakasama(逆さま)」の/ i /と/ a /を伸縮させると、
「sakasama」の方が自然性の減少幅が大きかった。
A.80msの/ a /の方が、40msの/ i /より不自然である。
これは、テンポだけではなく、音声のエネルギー量である、ラウドネス(loudness)に関係すると考えられる。
/ a /は/ i /よりも呼気の阻害が少なく、口を大きく開けて発音する。
切り取られた4ms分の/ a /のエネルギーが、40ms分の/ i /のエネルギーより多いので、より不自然に知覚される。
同じ、/ a /でも、「harahara」と「gakuen」、「sashidasu」と「barabara』の自然性に差があったのは、挟まれる子音のラウドネスと関係があると考えられる。
聞こえ音階層(05/27)で説明したように、
摩擦音よりはじき音の方が、無声音より有声音の方が、ラウドネスが大きい。
つまり、/ sash /において/ a /の音韻長が減ると、
ただでさえラウドネスの較差が大きいのでより違和感が強調され、
/ bar /において/a /の音韻長が減っても、
先行する/ b /や/ r /で補う事が出来るので、違和感が中和されるのである。
参考文献
匂坂芳典「Modeling and perception of temporal characteristics in speech」(2003)
今回はそれをどう知覚しているかと言う視点での調査結果を述べる。
テンポに関しては、JND(Just Noticeable Difference)という実験方法がある。
複数のサンプルから取ったモデル値から、
音韻長を伸ばしたり縮めたりした加工音声を被験者に聞かせ、
自然か不自然かを判断してもらう方法である。
一般的には10~15msの間で行われる。
この実験で、結果報告の前に典型的な質問がある。
Q. / a /のモデル値は120ms、/ i /のモデル値は80msである。
文章のなかで、/ a /と/ i /、それぞれから40msずつ引いて被験者に聞かせると、どちらがより不自然であるか。
つまり、80msの/ a /と、40msの/ i /の、どちらが違和感が強いか、という質問である。
切り取られた時間は同じなので、科学的に考えると、この二つには誤差なし、となる。
さて、答えを言う前に、いくつかの実験結果を述べてゆく。
ある単語のひとつの音韻を引き延ばしたり、縮めたりした語をいくつも聞かせ、
自然さ(naturalness)を点数で評価してもらう実験の結果である。
1、「harahara(ハラハラ)」と「gakureki(学歴)」の/ a /を同様に伸縮させると、
「gakureki』の方が自然性のが減少幅が大きかった。
2、「sashidasu(差し出す)」と「barabara(バラバラ)」の/ a /を伸縮させると、
「barabara」の方が自然性の減少幅が大きかった。
3、「iriguchi(入り口)」と「sakasama(逆さま)」の/ i /と/ a /を伸縮させると、
「sakasama」の方が自然性の減少幅が大きかった。
A.80msの/ a /の方が、40msの/ i /より不自然である。
これは、テンポだけではなく、音声のエネルギー量である、ラウドネス(loudness)に関係すると考えられる。
/ a /は/ i /よりも呼気の阻害が少なく、口を大きく開けて発音する。
切り取られた4ms分の/ a /のエネルギーが、40ms分の/ i /のエネルギーより多いので、より不自然に知覚される。
同じ、/ a /でも、「harahara」と「gakuen」、「sashidasu」と「barabara』の自然性に差があったのは、挟まれる子音のラウドネスと関係があると考えられる。
聞こえ音階層(05/27)で説明したように、
摩擦音よりはじき音の方が、無声音より有声音の方が、ラウドネスが大きい。
つまり、/ sash /において/ a /の音韻長が減ると、
ただでさえラウドネスの較差が大きいのでより違和感が強調され、
/ bar /において/a /の音韻長が減っても、
先行する/ b /や/ r /で補う事が出来るので、違和感が中和されるのである。
参考文献
匂坂芳典「Modeling and perception of temporal characteristics in speech」(2003)
PR
この記事にコメントする
言語学が大好きな一般人のブログです。
過去の記事は、軌跡として残しておきます。
カレンダー
04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
ブログ内検索
カテゴリー
最新記事
(10/02)
(09/30)
(09/29)
(09/26)
(09/25)
プロフィール
HN:
てぬ
性別:
女性
自己紹介:
大学院で言語学を学びたい大学生が、日々の勉強の成果を記録してゆく為の、個人サイトでした。
最新トラックバック
最古記事
(01/01)
(04/07)
(04/08)
(04/09)
(04/09)
P R