母音は、3つの舌の位置に区別して紹介する。
まずは、前舌母音(front vowel)。
舌の最後部が前舌で、硬口蓋に向かい合うところに位置するものである。
口が閉じ、前舌と硬口蓋が接近している[ i ]から、
だんだん口を開けていき、[ a ]までを大きく4つに区切っている。
しかし、実際は、下の図でも分かるように、単純に舌が下がってゆくのではなく、
口を開けるに従って、舌の最高点が後退している。

[ i ] 非円唇前舌狭母音(close front unrounded vowel)
[ y ] 円唇前舌狭母音(close front rounded vowel)
硬口蓋摩擦音[ ʝ ]になら無い範囲で、前舌がもっとも硬口蓋に近づいた発音。
非円唇は、日本語の「イ」よりも口角を広げたような発音になる。
円唇は、ドイツ語フランス語や、中国語で見られる。
[ e ] 非円唇前舌半狭母音(close-mid front unrounded vowel)
[ ø ] 円唇前舌半狭母音(clise-mid front round vowel)
前舌で行う、二番目に狭い開き方の発音。
非円唇は日本語の「え」の発音とされ、多くの言語で見られる。通称「狭いエ」。
円唇はドイツ語、フランス語で現れる。
[ ɛ ] 非円唇前舌半広母音(open-mid front unrounded vowel)
[ œ ] 円唇前舌半広母音(open-mid front rounded vowel)
前舌で行う、二番目に広い開き方の発音。
[ e ]と[ ɛ ]を二つの音素を持つ言語も少なくない。こちらは通称「狭いエ」。
円唇は、oとeの合わさった記号で、ドイツ語フランス語などで見られる。
[ a ] 非円唇前舌広母音(open front unrounded vowel)
[ ɶ ] 円唇前舌広母音(open front rounded vowel)
前舌で行う、一番口を開いた時の発音。
非円唇は、日本語の「あ」よりも、舌の最高点が前にある。
円唇はoとEの合わさった記号で、デンマーク語などに見られる。
舌の最高点の区分ではこの8つになるが、
以下の3つも前舌母音、または中舌よりの前舌母音と分類される。
[ æ ] 非円唇前舌狭めの広母音(near-open front unrounded vowel)
舌の高さが[ ɛ ]と[ a ]の中間である。
英語の"cat"の発音で、北欧語などでも多く見られる。
[ ɪ ] 非円唇前舌め広めの狭母音(near-close near-front unrounded vowel)
[ ʏ ] 円唇前舌め広めの狭母音(near-close near-front rounded vowel)
舌の高さは[ i ]、[ y ]と[ e ]、[ ø ]の間で、少し軟口蓋よりの発音。
ドイツ語やオランダ語で見られる。
[ i ]や[ y ]よりも、緊張の緩い発音とされることもある。
参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008

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