言語音である音声(speech)は、
あまりにも漠然としすぎていて、分析には向かないので、
言語学ではこれを二つにわける。
音素(phoneme)は、特定の言語で意味の区別に関わっている音である。
表記方法はそれぞれの言語の慣習によって異なる音素記号を用いることが多いため、
同じ文字であらわしていても、発音方法が異なることがある。
/スラッシュ/で括って表記する。
単音(phone)は実際の音声としての言語音である。
[かぎ括弧]で括って、多くIPAで表記する。
同じ音素でも、異なる単音であるもの、
例えば、日本語のタ行は、音素では子音は/t/ となっているが
ヘボン式ローマ字表記にも見られるように、[t]と[tʃ]と[ts]の音が共存している。
このふたつを、音素/t/の異音(allophone)と言う。
[t]と[tʃ]と[ts]の出現は、重ならずに互いに穴を埋め、日本語の行の体形を維持している。
このような住み分けを相補分布と言う。
また韓国語の/p/は語頭では、[p]だが、語中では濁った[b]になる。
このように、出現する条件が決まっている異音を、条件異音と言う。
逆に、とくに出現に条件がなく、どちららを発音するか個人差があるような場合、
それを自由異音と言う。
国際音声記号(IPA: International Phonetic Alphabet)は、
現存する人類の諸言語において、語の意味の対立に貢献している言語音に、
アルファベットを基盤にした基語で表記する枠組みである。
言語音として実際に使われているか否に関わらず、
人間が発音できる音をすべて表記しようと言う、別の研究もある。

図はIPAの子音の表記の一部である。
塗りつぶされた枠は、人間は発音不可能を思われる音である。
解説は後日。
参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008
田窪 行則ら 『岩波講座 言語の科学 2「音声」』 岩波書店 2004

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