世界の全ての物理的な様相と、人間に関する全ての様相は変化する。言語も例外ではない。
個々の変化は、新しい語が出来たり普及したり、突然で分かりやすい。しかし、普通の言語の変化は、世代ごとの発音の小さな差など、徐々の変化で気づかない程のものである。
言語の変化は2つの同等の形式の共存を引き起こす。変種として、一方がもう一方に
例えば、2つの単語や、同じ単語の2種類の発音、は同じ共同体の言葉の中に共存しているだろうが、異なるサブグループや、異なる状況で用いられているだろう。後で詳しく述べるが、結果としてこの2種は競い合い、最終的に1つが支配的に、もう1つが衰退する。
小さい言語の変化は、日常の経験から明らかだろう。そして人々は言葉の使い方や発音の違いに気づいていて、時々不満を言うだろう。
しかし、古い文章を見ると、大きな言語の変化はもっと分かりやすく、そしてもっと歴史を遡れば、その変化は、明白になる。
次の文章は、9世紀後期のアルフレッド大王の時代の古英語の例である。その下は現代英語訳である。
(1)Ælfred kyning hateð gretan Wærferð biscep his wordum luflice ond freondlice ond ðe cyðan hate, ðæt me com swiðe oft on gemynd, hwelce wiotan iu wæron giond Angelcynn ægðer ge godcundra hada ge woruldcundra, ond hu gesæliglica tida ða wæron giond Angelcynn.
[King Alfred sends greetings to Bishop Wærferth with his loving and friendly words, and I would declare to you that it has very often come to my mind what wise men there were formerly throughout the English people, both in sacred and in secular orders, and how there were happy times then throughout England.]
見る影も無く言語が変わってしまっているだろう。この文章に関する言語学的な議論はこの本では出来ないが、少しだが現代の英語に引き継がれている単語がある事がわかる。'luflice'が'lovely'に、'freondlice'が'friendly'のように様々に変化している。また、'æ'や'ð'の文字はもう現代英語では使われていない。
次は500年程後の、チョーサーの『カンタベリー物語』からの中期英語の例である。
(2)Ye goon to Caunterbury -- God yow speede,
The blisful martir quite yow youre meede!
And wel I woot, as ye goon by the weye,
Ye shapen yow to talen and to pleye;
For trewely, confort ne myrthe is noon
To ride by the weye doumb as a stoon;
これは現代英語との差が小さい。明らかな違いは動詞の語尾の形と、単語の形である。'goon'と'talen'は複数の語尾'-(e)n'が付いているし、'ye'は'you'、'woot'は'know'である。
この文章を声で聞けば、現代英語との差はかなり大きく感じるだろう。しかし、中期英語は現代英語と関係が深いと認識する事が出来る。
最後の文章は『カンタベリー物語』の2世紀程後、16世紀下旬に書かれたシェイクスピアの『夏の夜の夢』からの引用である、
(3)Lysander Now she holds me not;
Now follow, if thou darest, to try whose right,
Of thine or mine, is most in Helena.
Demetrius Follow! nay, I'll go with thee, cheek by jowl.
Hermia You, mistress, all this coil is long of you: Nay, go not back.
Helena I will not trust you, I,
Nor longer stay in your curst company.
Your hands than mine are quicker for a fray,
My legs are longer though, to run away.
発音も含めて、この英語はかなり現代英語と似ている。しかし、言語学的には文法と語彙に差がある。まず、'-st'の2人称単数の動詞活用が存在する。そして、'you'の他にある'thou'と'thee'の単数人称代名詞がある。否定の文章'she holds me not'は現代英語の文法では'she does not hold me'であるし、'Your hands than mine are quicker for a fray'の語順は現代英語には無い。形のまったくちがう単語は無いが、意味が異なるものはある。'coil'の中期英語での意味は、電気に関するものではなく「騒乱」のことだ。
特定の言語を長い時代を通して観察するとき、言語の変化には分かりやすい言語の段階なく、歴史的な連続体である。なので、話者が自分より前と後の言語を理解する事は簡単であるが、年代が離れるほど、言語を理解するのが難しくなる。
これは方言の連続体と良く似た現象である。地理的に隣接する地域の方言は互いに理解出来るが、遠くは慣れた地域の言葉は通じない。時間的な言語の差異と、地理的な言語の差異の深い関係は、ブリテン島を南から北へ、あるいは西から東へ旅をすれば、気づく事も多いだろう。田舎には、古い言語が残っている。
言語の変化は、特定の言語や世代に限られたものではなく、この世の真理である。しかしこれは、人々がこの運命を喜んで受け入れるということではない。
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series
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Attitude to language changing
言語は社会的なアイデンティティーと固く結びついているため、人々が言語に関して強い思い入れを持っている事は当然だ。
言語の変化は社会を不安にし、それを悪い事として見なすのが一般的な態度である。ある世代、ある文化に所属する話者は、自分たちの言語が昔の言語より劣っていると考える事が多い。したがって、言語の変化は衰退であり、腐敗である。
ある社会学者はこの様相を聖書のバベルの塔の逸話に遡っている。そこでは、1つの共通言語がさまざまな言語に分離したことが、罪深い行為に対する罰として描かれている。
ヨーロッパの言語の歴史では、言語の変化に対して衰退や腐敗といった否定的な態度が大半で、中立的な意見より多い。一方で、賛成的な意見は全くない。
ほとんどのヨーロッパの国家の言葉で、言語を成文化し浄化しようとする試みが見られる。例えば、正しい用法である規範的な規則に当てはめて、言語が変化するのを防ごうとした。このような事業は公式の機関で行われることがあり、1582年フィレンツェに創立されたクルスカ学会(Crusca)、1635年設立のアカデミー・フランセーズ(Académie française)や、17世紀から18世紀にかけてドイツのさまざまな言語学会で行われていた。イギリスでは18世紀に強い言語変化への抵抗が起こり、規則化と整頓を求めてたが、成文化(codification)は個人によって行われた。
ジョナサン・スィフトやサミュエル・ジョンソンなどこの時代の知識人や文筆家は、言語の変化に対して、激しく反発している。1755年出版の『英語辞典(Dictionary of the English dictionary)』を編纂したジョンソンは、言語の変化は「言語の悪そのもの」であるとし、彼の辞書の冒頭で以下のように述べている。
(4)言語は、政府と同じで、生まれつき退化してゆく傾向がある。我々は長い間憲法を守って来た。同じように、私たちの言語のために努力をしよう。
このような、人間の設立したものとの比較は、決してイギリスだけのことではない。アメリカの政治家のベンジャミン・フランクリンは、言語は社会の現実を反映していて、言語の退化は直接に当時の社会の退化であるとした。
フランクリンが言った、「病気の伝統」は今世紀まで続いている。次に上げるのは、アメリカの芸術評論家ジョン・サイモンによる言語に関する本、「Paradigms Lost」からの引用である。このような意見は、教育を受けた一般人の間でも繰り返し主張されている。
(5)概して、言語の変化は、話し手と書き手の無知によりおこる。あと数世紀もすれば、教育や辞書や文法書に依って、有毒なツタのようなこの無学は根絶させられるだろう。
個人だけではなく、政治的な機関もある変化に関して、かなり感情的で思想的な態度を取っている。ナチス・ドイツはドイツ語の高潔さを、外来語をドイツ語式に言い換える等することにより、主張しようと試みた。例えば、'Telephon(電話)'のかわりに、'Fernsprecher(遠隔声器)'とした。しかし、例え民主主義政府も、膨大な外来語をからの借用を中止すると言う、国粋主義的な傾向には免疫が無かった。
近年の例では、フランス語と英語の混じった俗語「フラングレ(flranglais)」の使用に対する、フランス政府の措置がある。成功しなかったが、例えば、'le walkman'のような語をフランスの公式委員会が'le baladeur'という新語を作って言い換えを提案した。
しかし、本当の古い言葉や、想像上の伝統的な言葉への回帰、あるいは純化も、もちろん変化をとも無いものだが、この変化は、政治的な理由で「正しい方向」と見なされた。
過去には、専門的な言語学者も、言語の変化に関して保守的な態度を取る傾向があった。19世紀初頭の学者は、成長期のある生きた組織であると考えていた。一時の進化的な成熟があり、その後には腐敗がある。したがって、古英語から現代英語、ラテン語からフランス語にかけての格屈折の消滅と、前置詞句による補完は、衰退とみなされた。
現代の言語学者は一般的に、言語の変化に関して、中立的、あるいは肯定的な態度としめす。肯定的な立場には、社会のニーズの変化に会わせて、コミュニケーションの効率を高めるために、言語の変化は必要であると主張する人もいる。
これは、政治的に正しい言語を作るための言語政策などの目的に達するために、故意の言語変化の推進に応用される。さらには、言語システムの均衡や調和を保ち、文法を単純化するのために、言語の変化は必要な治療的措置であるという見方もある。
このような視点では、時代をまたぐ言語の変化は、当時行われた勢力の機能である。この点において、言語でもなんでも、歴史の研究は現在への理解に依存しており、現在とは、過去に依って明らかになる。
Language state and process
それれでも、言語学的な過去と現在は異なる研究分野に分かれる。ある時点の言語の状態を研究する共時的(synchronic)言語学は、時を経る言語の進化を研究する、歴史的な通時的(diachronic)言語学を考慮しない方がよい、というのが、共通の考えである。
しかし、この厳格な分離は、言語の研究に関するこの2つの側面の関係性の誤解に基づいている。一方では、共時的な言語システムの研究が、過去の再構築に使用出来る見識をもたらす事があるし、もう一方では、共時的な言語システムが完全に体系的で安定して均質であるという仮定が架空のものであることが、わかるだろう。
全ては、ある点において、非体系的である。例外と呼ばれる、多くの不規則な初期システムの名残は、共時的な文脈では解釈出来ないが、過去の状態や進化を参照すれば説明する事ができる。共時的な言語での不安定な状態は通時的過程の結果であり、その不安定さは、現在にもその過程が引き継がれていることの証拠である。
同様に、共時的な言語のバリエーションと、通時的な言語の変化にも相互関係がある。ここ30年程、これら真実に気付き、言語学の領域に置いて歴史言語学を正しく位置づけるように、学問の方向付けが大きく改定された。
The aim and scope of historical linguistics
近代的な意味での歴史言語学の始まりは、200年以上前に遡ることができるが、もっと古い言語の研究の伝統をもつ文化もある。従って、異なる学問的伝統や歴史言語学に対するアプローチの仕方が存在する事は、驚く事でない。それぞれが対象を定め、異なる方法論を採用している。以下のような領域の研究がある。
1、現存する文書に基づく、特定の言語の「歴史」の研究。
2、比較再建(comparative reconstruction)による言語の「史前」の研究。記録に無い過去を、それ以後の記録から推測すること。
3、言語の「現在起こっている変化」の研究。
これらの研究自体がどんなに魅力的でも、これらの研究はその他の研究と、もっと抽象的な目標につながっている。すなわち、もっと一般的で、出来る限り普遍的な言語変化の性質の発見である。
ある特定の言語が、その他のあるいは全ての言語と共通するものに関する記述的事実を関係づける事で、歴史言語学者は、なぜ言語が変化するのか、どのように空間的時間的に変化が広がっていくのかの説明を求める。これらの疑問の答えがわかる見込みのある分野は、現在の変化の研究である。特に、社会的な要素との関係性と、共時的な言語のバリエーションと、通時的な言語の変化との関係性を強調する枠組みのなかで実行される。
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series
The date of historical linguistics
現在の、生きている言語の共時的な記述はさまざまなデータに基づいている。母語話者の内省や、母語話者達から引き出したデータや、コーパス等を用いた観察などである。異なる言語学の分野は、重要視するデータの種類も異なる。
歴史言語学のデータはかなり制限されている。明らかに、ほとんどの過去は、内省や質問などでは手に入らない。昔の文書の、限られたデータベース観察を通してのみ、手に入れる事が出来る。
幸いな事に、多くの言語が、言語の発展の証拠となる過去の記録が残っている。そしてそれは、言語の変化の一般的な性質の証拠にもなる。しかし、どうしてもデータの質と量は制限される。時代を遡ればさかのぼる程、データは少なくなり信頼性も減り、同時に、言語も遠く隔たったものとなる。
加えて、多くの場合、そのテキストの著者や目的、読者など、言語外の情報が欠如している。テキストの種類も限られている。20世紀以前の音声記録は全くない。過去の書き言葉の再構築は難しいが、過去の話し言葉の再構築はもっと難しい。
言語の再構築は決してまっすぐな事ではない。
手に入るデータの解釈、あるいは選択は、常に言語に関する一般的な仮定や、歴史言語学者が立てた特定の理論に基づいている。つまり、歴史を扱うものに良くある事だが、過去の説明は競い合っている。
言語の誕生に関して、現在ある推測は5万年前から10万年前までさまざまで、100万年以上前だという仮説もある。言語の始まりがいつであっても、文書で証明出来る言語の発展は明らかに、言語全体の歴史の中でほんの少しである。そして、5千〜6千あると言われている現在の人間言語のなかでも、少ない。
しかし、史前の言語記録の欠如は、一番古い言語データの比較によって補完する事が出来る。これは恐竜の卵や絶滅した生物の化石と同じぐらい夢をかき立てるもので、過去の証人として、史前の記録に無い言語の進化の知識を深めてくれる。言語の歴史の再構築は、比較再建の問題である。
The written evidence
文書は、歴史言語学において重要な資料である。そして、言語システムや話し言葉の証拠として、これらの資料をどう解釈するかはきわめて重大な問題である。
未知の言語のシステムの言語の場合、この解釈が克服しがたい困難となる。このような言語の解読は、二言語あるいは複数の言語で書かれ、どれかひとつでもすでに知られている言語で書かれているような、文書の存在に依存している。有名な例は、ナポレオンのエジプト侵攻の際に発見されたロゼッタ・ストーンであり、今は大英博物館ある。ロゼッタ・ストーンは、古代ギリシャ語と2種類の古代エジプト語の3つの言語が刻まれており、エジプトのヒエログリフの読解の鍵となった。
言語システムや音声言語の証拠としての文書の解釈は、例えその言語システムが高度なものであっても、問題が無い訳ではない。
アルファベットの英語とその他のヨーロッパの言語での使用を考えるとわかる。そのほかの書記システムでは記号が音節や語を示すのに対して、ラテン文字でもギリシャ文字でもキリル文字でも、アルファベットは母音と子音等の直接的に音声を示す。これらのアルファベットは長い伝統があり、表記の慣習は何世紀も引き継がれてきた。しかし、この「文字」と「音声」の関係を見定めるのは決して簡単ではない。
話し言葉と書き言葉は明らかに関係の深いシステムだが、この2つは別のもので、関係性は何回も変化している。アルファベットの記述は、最初は、言語の示差的な音声を表示するためにあり、示差的でない音声は無視する傾向にあった。例えば、ラテン語と古英語、古代フランス語における'r'の文字は、'l'や'm'とは異なる音声がある事を示す。しかし、実際その'r'の文字の表す音声が、どのようなものだという事はわからない。英語とスコットランド語、フランス語、ドイツ語で'r'の文字が異なる音声を示すのと同じである。
さらに、ラテン語を書くために整えられたラテン文字を、初めてその他の言語に使用した人は、ラテン語の綴りの伝統を引き継いだと、考えると良い。このような伝統は西ヨーロッパの俗ラテン語として知られている。
しかし、ラテン語の初期システムを、たくさんの新たな言語のシステムに合わせて改めなければならなかった。例えば、ラテン語は英語の'th'に相当する音を持っていなかったので、古英語では古代ルーン文字の'þ'用いるか、あるいはラテン文字の'd'を変形させた'ð'を用いてこの音を表した。
始めは、文字と音の直接の関係であっても、言語の音声の変化と、変化についてこない、あるいは、時間差で変化する保守的な綴りのおかげで、その関係は薄れてしまった。
さらに複雑にする要因は、文化接触によって、異なる地方や国の綴りの仕方を混同させた事である。
1066年のイギリスでのノルマン人の侵攻以降、英語の文書に多く、アングロ・ノルマン語の伝統が現れる。英語の簡単な歴史の例を挙げると、古英語の'house(家)'は'hus'と綴り、発音は長母音で/hu:s/と読んだ。これはラテン語の音と文字の1対1の対応に基づいている。中期英語では、アングロ・ノルマン語の'ou'を/u:/と読む伝統の影響を受けて、'hous(e)'と綴り、/hu:s/と読む。綴りは現代英語と同じ形式になったが、現代英語の初期に/u:/の二重母音化が起こり、今と同じ/haʊs/の発音なった。
英語の書記は始め、音声の次に発生して、音声に依存するものであったが、だんだん自律的になり、そして実際の発音と関係なくなってしまった。
Sources of evidence
歴史言語学の仮説は、データの解釈に左右される。
それは、データの量の問題だけでなく、質の問題もある。資料の質を評価するために、その資料の著者や、写本した人、目的、資料の場所など非言語的な情報と、原本と写本と引用などの文書の伝承に関する情報を出来るだけ見つけなければならない。これは文献学の領域である。歴史学や古代文字の研究をする古文書学の補助領域である。
著者本人によって書かれた資料は少なく、それらもさまざまな間違いを含んでいる。多くの間違いは、時代や地域の異なる筆記者により何回も写本されたことによる。ホメロスの「イリアス」と「オデッセイア」、サンスクリット語の最も古い聖典の「リグヴェーダ」のように、ある特定の他者によって口承のテキストなどから書き起こされ編集された文書もある。このような文書の歴史で、文書はさまざまな言語が混ざっており、写本した人が不注意や原本の言語に不慣れである事による間違いが多く含まれる。
言語学の分野の仮説を形成する資料として文書を用いる前に、方言や通時的なものでも、このような異なる言語の層のもつれをほどかなければいけないし、筆記者の間違いを特定しなければならない。加えて、多くの古文書はラテン語からやギリシャ語からの翻訳が多く、原本の言語の影響も計算に入れなければならない。
文書が、歴史言語学の主要な資料であるが、その他の資料も重要な証拠となる。例えば、陶器のかけらやお墓の埋蔵品や、アングロ・サクソン人の生活の歴史の知識に関するものなどである。これらは方言の分布の再建にも役立つ。
データとして特に面白いものは、当時の話し手による、言語の直接の記述や明白な批評である。
しかしこのようなメタ言語学的な証拠は、ほとんどの言語の初期の段階では数が少なく、サンスクリット語やギリシャ語やラテン語など優れた文法があるのに、それらはあまり信頼出来ない。ヨーロッパ言語でのこのような情報は近代に至るまで無い。
英語の発音や音素に関する詳細な記述のある文献は16世紀まで遡る。現在でも使われている専門用語のリストとラテン語などからの翻訳によって、中世ヨーロッパの単語の意味を探る事が出来る。
最後に重要な事だが、現代の方言と同族の言語は、歴史言語学の仮説を立て、証明するのにとても役に立つ。
次はどのように資料を用いて言語の歴史を再建するかの説明である。
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series
Comparting and reconstructing languages
歴史言語学の基本的な仮説は、現代では異なる言語であっても、それらは1つの共通の祖語(proto-language)に起源している、というものだ。つまり、遺伝的な関係をもっている。
現代ロマンス語(フランス語、イタリア語、スペイン語、カタルーニャ語、ポルトガル語、ルーマニア語など)の遺伝的関係に関しては、はっきりとした言語学的、非言語学的な証拠がある。これらはラテン語の直系の子孫であり、姉妹言語である。正確には、俗ラテン語(Vulgar Latin)の種類である。何世紀もの、地理的な隔離と孤立、社会的要因と政府の発展、他の言語との接触を経て、これらは進化して来た。
一般的に、遺伝的関係のある言語は、語族(language family)を成し、システマチックで繰り返し起こる形式的な一致を呈する。偶然や借用などの結果とは考えられない程、類似点と相違点が規則的なのである。言語の歴史を遡れば、このような対応はもっと規則的で確固たるものなる。現代フランス語と現代スペイン語よりも、古フランス語と古スペイン語の関係は強い。
最も有名で、最も研究されいる語族はインド・ヨーロッパ(IE)語族である。資料の歴史も長く、地理的に広範囲にわたる姉妹言語が散らばっている。インド・ヨーロッパ語族の言語は、インドから西ヨーロッパ大陸まで広く話されていて、今は世界中に輸出されている言語である。
それらは、ゲルマン語派、イタリック語派、バルト・スラブ語派、ケルト語派、インド・イラン語派など多くの語派(subfamily)に分けられる。そしてこれらに共通する先祖であるインド・ヨーロッパ祖語を再建が、19世紀の比較言語学の重要な業績であった。そして、このような遺伝的関係を表すために、樹形図(family tree)が多く使われる。
ゲルマン祖語ーーー東ゲルマン語派ーーゴート語
北ゲルマン語派ーーデンマーク語、アイスランド語...
西ゲルマン語派ーーオランダ語、英語...
樹形図の価値の解釈は、学者ごとに異なる。樹形図は、ある種の関係性を一目で分かるようにするために便利なもので、「北ゲルマン語派」などのようなラベルは、その語派の中の言語それぞれの親近性よりも、その語派の言語の全ての言語との親近性を指し示しているように感じる、という学者もいる。樹形図はインド・ヨーロッパ祖語が姉妹言語に分岐した方法を直接的に示すモデルである、という学者もいる。このような立場では、「北ゲルマン語派」は本当にあった言語で、デンマーク語とアイスランド語とノルウェー語とスウェーデン語の共通の祖語であるという考えである。
Correspondences between languages
このような語族を形成するの比較再建は、関連する言語同士の一致に基づいている。このような一致は、発音や屈折など、音韻論や形態論の領域ではっきりと現れる。そして同系や同源語(cognate)と呼ばれるのものシステマティックな比較によって、分類される。同源語は、形式と意味が似通っていて共通の語源を持っている。生活に密着した語彙や、人間の経験の語彙は借用語によって置き換えられる事が少ないので、同源語は姉妹言語の基礎語彙に特に多い。
比較再建の簡単な例をあげよう。
フランス語の'champ'、イタリア語の'campo'、スペイン語とポルトガル語の'campo'はラテン語の'campus(野原)'に由来する。ラテン語の文書にこの単語が残っていなかったとしても、これらの姉妹言語の比較によって再建が可能である。下の表は'carus(高価な)'、'campus(野原)'、'casa(家)'の同源語の対応表である。
羅 仏 伊 西 葡
carus[k] cher[ʃɛr] caro[k] caro[k] caro[k]
campus[k] champ[ʃã] campo[k] campo[k] campo[k]
casa[k] chez[ʃe] casa[k] casa[k] casa[k]
羅 仏 伊 西 葡
carus[k] cher[ʃɛr] caro[k] caro[k] caro[k]
campus[k] champ[ʃã] campo[k] campo[k] campo[k]
casa[k] chez[ʃe] casa[k] casa[k] casa[k]
この形式と意味の親近性が認められる4つの言語のから、祖形(proto-form)を再建してみる。
まず、これらの同源語から、体系的な発音の対応を確立する必要がある。例ではフランス語の語頭の[ʃ]がその他の3つの言語の[k]とが対応している。この場合、祖形には3つの可能性がある。まずはイタリア語とスペイン語とポルトガル語に残っている[k]の音である可能性。2つ目はフランス語の[ʃ]の音が祖形で、残りの言語で変化が生じた可能性。3つ目は、全ての言語で変化が生じ、祖形は[ʃ]でも[k]でもない可能性。これらの仮定証明するには、姉妹言語それぞれの発音の変化を知らなければならない。
祖形を決定する事に関して、一般的な方法論的な原則がある。
(i)全ての音声変化を含む再建は、音声学的にふさわしくなければならない。音声的な信頼性とは、どのように音声が形成されているかという一般的な音声学的考察と、その他の言語での音声変化の広範囲の資料によっている。例えば、[k]から[ʃ]への音声変化は、[ʃ]から[k]への変化よりも、頻繁で信頼性があり「自然である」と考えられる。フランス語の歴史上に登場する[tʃ]の段階を経ていれば、もっと自然と言える。この段階の発音は、古い時代に英語に入って来た'Charls'や'chief'などの古フランス語からの借用語にも見られる。この自然さを考慮すると、ロマンス祖語として、例に挙げた単語の語頭の子音を、*[k]と再建しよう。(アステリスクは表記の残っていない再建された祖形である事を示す。)
(ii)2つ目は、信頼性は多少かけるが「多数の原理」である。どんな再建でも、祖語とその姉妹言語の間の変化は最小でなければならない。姉妹言語の広範囲に現れる形式は、祖語に近い。上の例では[k]が3言語、[ʃ]が1言語なので、*[k]が祖形である可能性が高い。一方もしも*[ʃ]が祖形であるならば、3つの言語で同じ変化が起こったと考えなければならない。
これらの根拠から、ロマンス祖語は'*caro'、'*campo'、'*casa'であると結論を出す事が出来るが、すべての比較再建が*[k]のよに簡単で単純な訳ではない。また再建されたロマンス祖語は、ラテン語ととても似ている。
ロマンス語派の再建は、多くの資料で再建を確かめる事ができ、方法と仮定を試す事が出来る。しかし一般的には、1つの姉妹言語の中に痕跡が残っている祖語しか再建出来ない。従って再建された祖形の質は、現存する証拠の質に基づいている。
また、再建されたそれぞれの発音は、もっとも一般的な音声システムに従う体系に沿っていなければならない。言語は均整のとれた音声システムを成し、この傾向を無視するには強制的な根拠があるはずである。
例えば、無声閉鎖音とそれに、対応する有声閉鎖音を持っている言語は、[p, t, k]と[p, g]を持っていながら[d]を持っていない言語が多い。このような差は自然言語にみられる。その他の例では、普通の母音を持たずに鼻母音のみを持つ言語は無く、鼻子音がなく鼻母音を持つ言語はかなり数が少ない。このような類型的な考察は、最終的な段階で全ての再建でチェックされなければならない。
比較再建について追加しなければいけないことがある。
まず、実際の言語は均一でなく様々なバリエーションがあるのに、祖語は、理想化された均質な言語であると間違って言われて来た。また、発音の変化は規則的で、全てに例外は無いと言われて来た。
後で詳しく述べるが、多くの祖語の形式を仮説すると言う比較再建の中心的な成果は長い間支持されているが、上記ような考えは近年になって批判されることになる。
Law of change
言語の関係と発展を再建するにあたって、法則と言える程規則的な変化の過程が見られる。
そのような変化の一例が、インド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派の発展である。ゲルマン語は特有の、一連の子音による発音の変化を呈する。これは発見したドイツ人言語学者の名前を冠し、グリムの法則(Grimm's Law)と呼ばれる。これは閉鎖を伴う子音[p, b, t, d, k, g]が異なる子音に変化する法則である。(「>」のマークは「変化前>変化後」を表す)
無声破裂音[p, t, k] > 無声摩擦音[f, θ, x]
有声破裂音[b, d, g] > 無声破裂音[p, t, k]
有声帯気破裂音[bʰ, dʰ, gʰ] > 有声無気破裂音[b, d, g]
これらはゲルマン語に見られるもので、ギリシャ語やサンスクリット語などその他のインド・ヨーロッパ語族は異なる祖語をもつ。
比較再建は関係している言語に基づいて行われるが、論理的に、ひとつの言語内での証明されていない初期の段階の再建にも用いることができる。それは、内的再建(internal reconstruction)の領域である。それは現在の1つの言語の中に残っている初期段階の痕跡による研究である。
Internal reconstruction
全ての言語は形態素の異なるバリエーションを持っている。例えば英語の複数を表す形態素は、'cats'の/-s/、'dogs'の/-z/、'houses'の/-iz/、この3つの変種がある。内的再建は、このような共時的な変種は発音の変化によるもので、ひとつの形態から派生したものである、という仮定から始まる。
簡単な例は、ドイツ語の語末の無声閉鎖音である。ドイツ語の名詞の屈折の一種において、「忠告」を意味する'Rat[ra:t]'、「ニス」の意味の'Lack[lak]'がある。これは無声閉鎖音が保持されいるが、一方で、「自転車」の意味の'Rad[ra:t]'、「日付」の意味の'Tag[ta:k]'、は有声閉鎖音が無声閉鎖音に置き換えられる。属格単数形の屈折語尾は'-es'で、それぞれ[ra:dəs]、[ta:gəs]と有声音が保持される。
変種の無い古い形の「自転車」と「日付」は、無声閉鎖音か、有声閉鎖音か、あるいはそのどちらでもないものだと考えられる。内的再建に適応される原則は比較再建と同じなので、経済性と自然さを満たしているべきで、かつその他の形式と矛盾しないことが必要である。
ドイツ語のその他の語彙を見てみると、有声閉鎖音で終わる単語が無い事が分かる。したがって、再建された古い形態は有声音、*[ra:d]と*[ta:g]であり、その後に起こった語末の有声閉鎖音の無声化(devoicing)によって、語中の有声閉鎖音は保持されつつ、語末の有声閉鎖音が無声閉鎖音に置き換えられたと考えられる。
これは内的再建の簡単な例であり、とても複雑で、何重にも音声変化が関わっていて結果が曖昧なものもある。このような場合、再建する時に、変化の相対的年代(relative chronology)を確立する必要がある。どれが一番古い変化なのか、というような問題である。
しかし、音声変化の名残が全く残っていなければ、再建ではその段階が抜けた、単純な説明しか出来ない。加えて、全ての形態素の変種が、ひとつの形態に還元出来る訳ではない。
内的再建は、孤立した言語等、比較再建のための十分な資料の無い場合に有効である。そのような言語では、文書の無い言語と同様に、証拠の無い過去の言語に関して学べる唯一の方法であるといえる。しかし、理想的には、比較再建等のその他の方法と一緒に用いられる事が望ましい。
この章では、歴史言語学において、どのように記録の無い言語と変化の過程を繋ぎ合わせるかを見て来た。このような方法は音韻論と形態論に関して有効で、統語上の再建はかなり議論を呼んでいる。また親類関係や動植物、素材の語彙以前の再建は、インド・ヨーロッパ語族の社会の構造と経済的な組織と起源に関する知識を深めてもくれる。
次は語彙レベルの変化を追う。
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series
分析の便宜性のために、言語学では言語を異なるレベルに分割する。音韻論の範囲である発音、形態論の範囲である単語、統語論の範囲である文と、意味論の範囲である意味である。
言語の変化は全てのレベルで起こり、ひとつのレベルでの変化はその他のレベルに影響し、変化の引き金となる。例えば、発音の変化が屈折を衰退させてしまえば、形態素が変化し、結果的に語順などの統語規則も変化する。これは異なるレベルでの言語の変化を語る際の重要な意識である。
この章では、もっとも分かりやすい語彙の変化を追う。そして、次に、ゆっくりで分かりにくい形態論と統語論的な変化の話しをしよう。
話し手は、環境によって変化するコミュニケーション上の必要に応じて、言葉を選ばなければならない。新しい言葉が作られ、古い言葉は意味が拡張し、一方で、古い言葉と意味は結果的に使われなくなる。古英語から現代英語にかけての、文書により裏付けられる、未曾有の言葉と意味の増加は、語彙変化の例に適している。
新しい言葉を作り出すには2つの方法がある。外国語からの借用(borrowing)と、造語(word-formation)などで新語を作る事である。言語ごとに傾向は異なるが、たいてい両方の方法を使用している。古英語では、3%程の借用語や外来語(loan word)が見られたが、現代英語では70%が外来語であると言われ、原語は80言語以上にもなる。最も古い借用語はラテン語とフランス語からである。
この借用語の増加は歴史的な事実に基づいている。1066年のノルマン・コンクェスト、18世紀のラテン語の国際語としての権威の高まりなどがある。しかし結局は、話し手の、外国語の影響に対する態度であり、借用の容認と度合いを決定する言語に対する態度である。借用は言語接触によるものであり、詳しい話しは6章で述べる。
Coining new words
最も小さな意味の単位である形態素(morpheme)は単語の基礎である。造語の主な方法は、既に存在する単語や形態素を合わせて複雑な単語にする事である。英語の'teach'は1つの形態素であるが、'teach-er'は2つの形態素である。「動作主」や「装置」を意味する接辞'-er'は拘束形態素と呼ばれ、単独で現れる事は無い。
歴史的な造語について話しをするとき、新語の外見とその中の抽象的なルールを区別しなければならない。造語の規則は言語ごとに異なり、共時的な変化の題材でもあり、新語に関する創造性の問題を考慮して語られるべき問題である。
造語の重要な過程は、合成(compounding)と接辞添加(affixation)の2つである。合成は、gest+house=gesthouseのような、自由形態素同士の組み合わせである。接辞添加は、'un-like'や'like-ness'のような、自由形態素と拘束形態素の組み合わせである。
合成は英語の歴史の中で創造力を発揮し、何世紀もの間、数えきれない程新語を作り出して来た。
「親族の男性」の意味である'cynnesman(kinsman)'は古英語から残っている。しかし、「商人」の意味の'ceapman(chapman)'は名字と古風な表現として一部残っているだけで、普通はフランス語からの借用語'merchant'に地位を奪われてしまった。
意味論的な違いに基づき、合成語を分類する事が出来る。例えば、'gesthous'は'house for gest'であるが、'girlfriend'は'friend who is girl'では無い。これらの分類全てが英語の歴史の中で等しく作られて来た訳ではなく、また、英語に無い合成の関係を考えるのは難しい。しかし、英語やドイツ語は、フランス語等の他の言語に比べて、合成語を作る際の制約が緩い。
発音の変化によって合成語が透明性を失い、分析不可能な簡単な語形に変化する事もある。古英語の'godspell(神の福音)'は現代英語では'gospel'になった。'load'と'lady'は古英語の'hlaf-weard'と'hlæfdiʒe'の短縮形であり、文字通りの意味は'loaf-keeper(パン屋)'と'loaf-kneader(パンをこねる人)'だ。語源学はこのような伝統的な社会的役割を区別する証拠として、社会学的な興味をかき立てる。
接辞添加は英語の歴史にもそれ以前にも現れる。
接頭辞の'un-'、接尾辞の'-ful'と'-ness'などは古英語の時代から現在に至るまで生産性の有効な接辞である。'be-'や'-th'などは今はもう有効ではないが、既に確立した語の一部として残っている。古英語の「〜のような」を表す'-cund'という接辞はもう消えてしまい、'-wise'という他の接辞が使用されている事が多い。近年になってその生産性を発揮し始めた'-wise'は、どんどん新しい語を作り出し、「汚い英語」と言われる時代もあったが、今では公式の場でも受け入れられている。
一方、ラテン語とフランス語起源の'dis-', 're-', 'en/em-', '-able', 'age'などは、13世紀と14世紀以降、大量の借用語の中で引き継がれている。このような接辞が、英語の単語と組み合わされるのには、少し時間が置かれる。例えば、'dislike'が現れるには、1555年まで待たなければならない。
また、中期英語では、おそらくスカンディナビア語とフランス語の影響で、'get out 'や'give up'などの句動詞(phrasal verb)が着実に増えている。一方で、古英語の'outfare'や'outgo'など動詞の合成語の造語が無くなり、2種類の共存の時代を過ごし、新しいタイプの単語と入れ替わった。
中期英語と現代英語初期の時代の生産性の高まりの中で、転位(conversion)が現れる。「ゼロ派生」とも呼ばれるこの現象は、接辞の添加も無く、単語の品詞が変化するである。'cheat'は動詞から名詞へ、'lower'と'up'は形容詞または副詞から動詞へ変化した。これは語彙と文法の関係である。
16世紀から17世紀にかけて、もともとの英語の語彙にも外来語にも適用されている、同義語の造語が見られる。ロマンス語の接辞'-ize'がついた動詞が、もとの単語の転位した形と並んで使用されている。動詞に転位した'equal'と動詞'equalize'、動詞'civil'と動詞'civilize'である。否定にも対立する形が現れる。'disthrone'と'dethrone'と'unthrone'は動詞'enthrone'の否定語である。
現代英語では、固有名詞からの派生が増えている。例えば、'jersey(ジャージ)'はイギリス海峡にあるジャージー島であるし、'coach(馬車)'はハンガリーの街Kocsである。また'to boycotte(ボイコットする)', 'to lynch(私刑に処す)', 'sandwhich'など、人の名前が新しい概念やものの名前になった。加えて商品の広告のために、'Kleenex', 'Walkman'など商品名に造語が使われる事もある。
短縮も生産的な手段として用いられている。少なからず、経済的に情報を伝える事が出来る。従って、行政やメディア、それから日常的な会話などで用いられる事は当然である。音節の「切り取り(clipping)」は'pub(public house)'や'bike(bicycle)'など。「混成語」は'brunch(breakfast+lunch)'や'bit(binary+digit)'など。「アクロニム/頭字語」は'radar(radio detection and ranging)'や'laser(light amplification by stimulated emission of radiation)'など。また、IBMやBBCなどの「頭文字」もある。アクロニムと頭文字語の違いは、頭文字語はアルファベットの文字が別々に読まれる事である。
新たな言語は再分析(reanalysis)の対象となる。'editor'と'peddler/pedlar'は、存在しない'edit'と'peddle'からの派生語であると誤って分析され、新たに出来た語彙はそのまま定着した。このような逆成(back-formation)は'teach/teacher'のような組み合わせの類推の結果である。
単語の最後の's'が複数形と誤って分析され、新たな単数形が作られる事もある。'cherry'は古フランス語の'cherise'からの逆成であり、'pea'も'pease'あるいは古英語の'pise'、ラテン語の'pisa'の逆成である。
有名な形態素の分析は'-berger'である。オリジナルはハンブルグの街に関係している'hamburger'であるが、'ham(肉)+burger'と再分析された。その結果、'-burger'は接辞として、'cheeseburger'や'vegeburger'など同系の食べ物を表す形態素となった。今では'burger'単独で語として使用される。
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
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