Change of meaning
今のところ、新たに作られた単語の形式を見て来たが、語と形態素の意味も、社会的な文脈の中で、さまざまに変化する。「全ての単語に歴史がある」と言われ、英語の『Oxford English dictionary』やフランス語の『Trésor de la langue française』はひとつひとつの単語の歴史も載っている。
しかしそれでも、変化の一般的な法則を知る事は出来ない。そのためには、多くの言語の、何十万もの単語とそれ以上の意味を調べなければならない。それに、科学としての言語学の研究から、長い間意味論が無視されて来た事も関係している。現存する意味論上の分類は、記述的なもので、重なり合う部分がある。
基本的な分類は、意味の拡大(extension)と縮小(narrowing)である。
拡大は、単語の意味が一般化する事である。例えば英語の'bird'は「若い鳥」だけを示す単語であったが、一般的な「鳥」を示すようになった。これはよく意味素性[+ young]が失われたと説明される。しかし、拡大には新しい言語としての発展が含まれる。
最新の拡大のメカニズムの説明は隠喩/メタファー(mataphor)である。メタファーはイメージの親近性による意味の拡大の事だ。例えば身体の一部である'neck'は、'bottle neck'など、似ているものを表すのに用いられる。身体の一部を表す単語は多くのメタファーが見られる。
換喩/メトニミー(metonymy)は異なる拡大のシステムで、物理的な隣接性により表現する。多く、全体を表すのに一部分の名前で表現する。例えば'White House'は建物だけでなく、アメリカの政府を指す。'crown'が王や女王を指す。あるいはコニャック地方のブランデーである'cognac'など、場所が物を指す。
縮小の例は英語の'fowl'である。今「家禽」を示すこの単語はもともと、古英語の'fougol'とドイツ語の'Vogel'と同じく、一般的な「鳥」を示す物であった。また'meat'は、'mincemeat'に残っているように、「肉」だけでなく「食べ物」一般をさす単語だった。多義語(poluseme)が、特定の意味を失うこともある。
意味の変化には、意味の漂白とも言われる、文法化(grammaticalization)がある。英語の'will'は動詞「意図する」の意味であったが、助動詞に変化し、いまは文法的意味に用いられている。
意味の変化は、話し手の肯定否定などの価値観により分類され、このような評価が変化を強制する事もある。典型的には、単語が異なる使用法や文脈で用いられ、連想(association)や内包(connotation)が時間をかけて、統語的な意味や言外の意味(denotation)を示すようになる事による。
英語では人の立場や職業を示す単語に見られる。意味の改良(amelioration)と見なされる例は、もともと「男子、若者、付添人」を意味する'knight'が中期英語の時代を反映して「騎士」に変化していることだ。ちなみにドイツ語では'Kneckt'は「農場労働者」を示す、逆の発展をしている。意味の悪化(pejoration)の例は'knave'である。もともと「少年」を示していたこの単語は、庶民一般の人々であったが、今は「悪党」を示す。
これらは言語外の社会的な変化が関係している。また、'mistress'が「愛人」を示すなど、多くの女性に関する単語の意味が悪化している事も、社会的な女性の地位の低さを示している。
意味の拡大が、元来の意味を曇らせてしまう事もある。英単語の'silly'は「ばかな」を言う意味だが、もともと古英語'(ge)sælig'は「幸せな」を意味する単語であった。ドイツ語の同源語'selig'ではまだその意味が残っている。日本語の「おめでたい」に似ている。
'silly'は15世紀下旬までは良い意味で使われていた。その途中の変化は次のようである。13世紀下旬から18世紀「純真な」→14世紀から19世紀「哀れな」→13世紀から19世紀「弱い、弱々しい」→16世紀から18世紀「知らない」→16世紀から「低能な」→16世紀下旬から「馬鹿な」。古い意味はすぐに新しい意味に置き換わる訳ではなく、共存も多く見られる。その他の言語でも同様の現象は観察出来る。
Why do meaning change?
上で述べた事は、メタファーやメトニミーなどの記述的なもので、改良や悪化などの社会的な変化の次元についても少し述べた。もう少し、意味の変化について言語学と非言語学の両面から見てゆく。
言語が変化する1つの要因は、新たなコミュニケーション上の需要に合わせた必要性である。外来語と造語から離れても、話者は良く、メタファー的な拡大とメトニミー的な拡大した意味を持つ単語を使用している。
例えば、'torpedo(魚雷)'はもともと電流を放つ魚の一種であった。結果的に軍事的な意味の方が重要になってしまった。基本的な機能が残っていても、存在する物の形が変化した時、古い単語が修正されるだろう。英語の'torch(たいまつ)'はまだ古い意味も残っているが、今は「懐中電灯」の意味もある。ドイツ語では「たいまつ」は'Fackel'であるし、「懐中電灯」は'Taschenlampe'と言う。
もう1つの言語が変化する要因は、誇張によるものだ。ずっと同じ言葉を使っていると特定の意味が弱くなってくる。それで、新しいもっと良い表現が求められる。
英語の例は「とても」を意味する副詞の強化である。古英語の'swiþe'から古英語の'full'、現代英語では、古フランス語起源の'very'、'really', 'extremely', 'awfully'などがある。
心理的な作用で重要な物が、禁句、タブーである。人は、死や老い、病気、性など社会的に嫌悪される概念を、直接表現することを防ごうとする。禁忌とされる事に関して触れるとき、婉曲表現を用いる。
例えば、「去る」や「寝る」などの中性的な単語を用いる。長い事同じ単語が用いられると、婉曲表現の意味がはっきりとしてくるので、新たな婉曲表現が用いられる。禁忌とされる事柄も変化する。近代の西洋文化では老いが禁忌とされ、一方で性に関しては直接的な表現を避けなくなった。ある社会では、故人の名前やその名前に似た単語を二度と使わないという社会もある。このような社会では、常に素早く基礎語彙さえもが入れ替わってしまう。
このような非言語学的な要因から離れると、意味の変化の背後にある言語の力が現れるが、証明するのは難しい物である。
上に述べた例から言える事がある。言語の語彙は単なる関係のある単語のリストでは無く、意味的に関係のある語彙のグループとして構成されている。いわゆる、意味論領域というグループである。単語間での意味の関係は意味変化に置いて重要な役割を果たしているようである。
'bird'と'fowl'の例がそうだ。この2つの意味変化は、'bird'が一般化し、'fowl'が個別化することによって、上位語と下位語の関係を表している。動きを表す動詞や、発言に関する動詞など、少なくとも一部の語彙はこのように構造的に構築されている。意味領域に属するある単語の意味が変化すれば、その他のメンバーの意味も変わる。新たな語が入って来たり、語が衰退しても、同じように変化が生じる。
同意の固有語のある借用語が流入して来た時、このような変化が見られる。どちらかの単語が消えるか、意味が変化するかである。古英語の'cynnesman'が古フランス語の'merchant'に取って代わられたようなことだ。古英語の'heofon'は「天国」と「空」両方を示す単語であったが、スカンディナビア語の「雲」を表す'sky'を借用して来た結果、今は'heaven'として片方だけを示す。これは、経済性のために同義語を避ける言語の性質によるものだと考えられる。関連して、多義語の意味の範囲を縮小する傾向もある。
そして、似た意味を持つ単語や反対の意味を持つ単語が同音異義語になったとき、「同音異義語の衝突」と呼ばれるようなコミュニケーション上の問題が生じる。例えば古英語の'læten(〜させる)'と'lettan(妨げる)'はまったく逆の意味を持つが、'let'という単語として同音異義語となった。この衝突によって、'without let or hindrance(何ら障害もなく)'という表現を除けば、だんだん「妨げる」という意味が無くなってきた。しかし一般的に言えば、同音異義語は、文脈の中で十分に区別出来るので、存在し続ける事がある。
意味変化を起こすいくつかの要因について述べて来たが、一般的な法則を述べるにはまだ遠い。最近の提案は6章に述べる。
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series
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3章では1つの単語について、形式と意味の変化を追った。しかし会話の中の単語は、文法的にさまざまな語とつながっている。屈折や会話の中の単語の関係性は、コミュニケーション上の重要な情報をつくりだす。このような文法的な要素も、さまざまな方法で変化してゆく。
Morphorogical change
3章で述べた単語の変化とは、異なる変化の方法がある。文の中のその他の単語との文法的な関係を築く物だ。例えば英語の'tesches'は自由形態素の'teach'と、三人称単数現在を表す文法的な拘束形態素'-es'に分かれる。以下ではそのような屈折を扱う。
言語は異なる形態論的な構造を持ち、それらは、類型論上の分類に基づいている。類型論(typology)には孤立語(isolating)と膠着語(agglutinaing)と屈折語(inflecting)の分類が広く受け入れられている。
孤立語は中国語のように、単語が1つの形態素を成す。膠着語はトルコ語のように、ひとつの単語が1つ以上の形態素を含む。それでも形態素はひとつずつきちんと区別する事が出来る。ラテン語やギリシャ語のような屈折語は形態素間の境界が曖昧である。多くの意味が1つの形に含まれる。英語を含め多くの言語がこの分類にきっちり当てはまる訳ではない。しかしこの分類は歴史言語学の枠組みとして使用され続けている。
議論を呼んでいるが、言語は形態論的な分類をぐるぐると回って変化するという主張がある。孤立語は膠着語になり、だんだん屈折的になり最終的に孤立語に戻ってくる、というものである。孤立語から膠着語という流れは、ピジンがクレオール語になる時に観察する事が出来る。強勢の無い語彙と文法的な語彙が、音韻論的な変化の結果、接辞となる。
英語の形態素の構造も、屈折するゲルマン祖語の時代からかなり変化している。再建されたゲルマン祖語では与格の単数*'dag.u.miz(to the days)'は3つの形態素からなる。語根の*'dag-'と主題と呼ばれる'-u-'と格を示す'-miz'である。しかし、古英語では主題と格が合体して'dag.um'という形になった。古英語は現代ドイツ語と同く、ラテン語とあまり変わらない、主格、対格、属格、与格の4つの屈折する格を持っていた。しかしこの仕組みは初期の中期英語でほとんど崩れてしまう。強勢の無い母音がだんだん弱くなり、最終的に語末の音節が失われた。
中期英語での格を表示する語末が消えたように、古英語の様々な屈折の機能が、だんだん、屈折しない名詞を含む前置詞句に入れ替わって来た。現代英語では、名詞だけでなく動詞、形容詞、代名詞の屈折も失われてしまった。英語は、屈折を多用する総合的(synthetic)言語から、形式的な屈折よりも文法的単語や語順を多用する分析的(analytic)言語に変わった。同じような変化は、かなり屈折的な言語であるラテン語やロマンス語の姉妹言語、フランス語やイタリア語などにも見られる。
このような変化は語末の音節の発音の変化によるものだが、形態素の変化をもっと一般化してみると類推(analogy)と呼ばれる音韻変化の相互作用が見られる。類推は、ひとつの語の形が、形や意味の類似関係からその他の語に影響を与える事である。
例えば、屈折的は形態素は、特定の関係や語形変化のグループなど、形態素同士の関係がある。そして、不規則さを無くそうとする傾向がある。詳しくは、比例的類推(proportional analogy)と類推的水平化(analogical levelling)にわけて説明する。
比例的類推は均等化の応用の結果である。これは、中期英語の複数形の類推による'-(e)s'への変化の基盤であると考えられる。'bull'の複数形が'bulls'。では'cow'の複数形はなんであろうか、という類推により、'kine, eyen, word'が'cows, eyes, words'になった。
類推的水平化は、動詞の不規則変化にある。古英語には形式的にも意味的にも関係が深い4種類の形がある。freosan-freas-fruron-frorenは、現代英語で言えばfreeze-froze-frozenである。古英語'freosan'の語幹末の's'が、最後の2つの'fruron'と'froren'の影響で'r'に変わった。2種類の語幹の1つが、類推により他方の形式と同化し、語幹が統一された。古高地ドイツ語の同源語でも同様の変化が見られる。しかし、ほとんどの動詞のセットは語幹が同じ形を持つので、このような語幹の子音の変化はあまり多くない。規則的な音韻変化は形態論上の不規則を生じるが、類推により形態上の規則性がもたらされる。
類推の一般的な法則を見つけようと言う試みがあるが、多くの反例が見るかるような傾向が見出せるだけだ。派生した形が基本的な形に影響を及ぼすよりかは、基本的な形が派生した形に影響を与える傾向がある。また、2重の標識がひとつにまとまるよりかは、ひとつ形態素的標識に代わって2重の標識がつけられる傾向があると言える。二重の標識の例は、ドイツ語の'Baum(木)'の複数形'Bäume'である。もともと'Baume'と、'-e'の接辞がつく規則変化であったが、Gast-Gäste「客」からの類推により、接辞と母音変化を含む2重の標識がついた。
このような類推の変化を記述したり、変化の規則や傾向をみつけても、なぜ、それが起こるのかを説明する事は出来ない。変化のメカニズムの背後にある一般的な法則がもっと必要である。考えられる理由は、「自然さ」によるものである。形態素の変化は、自然さ、無標性になることであるようだ。無標性とは、単に一般的であるだけでなく、子供の言語獲得に有利であったり、変化しにくく、ピジンやクレオール語の典型にみられるようなことである。
さらに、自然さは構造的類像性(constructual iconicity)のような一般的な原則の結果として生じる。それは、例えば意味的に複雑な語彙は形態素的にも複雑であると言うことだ。複数形は単数形よりも、形態素の要素が多いと考えられる。実際、この法則は経験的に導かれ、複数は典型的に有標であり、単数形の標識のある言語は稀である。言語は自然になるように変化してゆくと言われている。現代英語の複数形'woeds'は、古英語の複数形'word'より自然である。古英語は、複数形は単数形の形態素に何か追加されるという構造的類像性に則っていないからだ。'sheep'や'fish'など、まだ違反している複数形もあるが、ほとんどの仲間は英語の歴史の中で'-(e)s'を持つ形式に変化してしまった。
これらの変化は明らかに類推により説明出来るが、自然形態論の主張はもっと一貫していて普遍的な形態素の変化の枠組みを与えてくれる。
Syntactic change
言語学上で無視されて来たが、ここ30年程、統語上の変化が注目を集めている。しかし、まだ、一般的に受け入れられる研究の理論的な枠組みの構築には至っていない。
例えば英語の歴史を見てみれば、多くの統語上の変化を見つける事が出来る。古英語の時制は現在と過去だけで、シェイクスピアの時代まで、進行形と言う時制は無かった。また、疑問文や否定文の'do'の使用もなかった。シェイクスピアの作品で、'I know not.'や主語と動詞の倒置'Whom trust you more'が見られる。
統語上の変化も形態素上の変化は個々の正しさに則っているのだが、言語学者はより一般的な統語上の変化を学ぼうと考えて来た。
統語上の変化の重要なメカニズムがある。表層構造の再分析(reanalysis)と文法化(grammaticalization)の過程である。ただし、全ての変化が文法化によって説明出来る訳ではない。また、統語上の変化の類型論の議論では、もっとも一般的な類型的な性質への変化に対す疑問に連結していると言える。
再分析。統語論上の構造は特殊な文脈では曖昧になり、話者は古いものより新しいものを好む。2つが共存する時もあるが、結果的には古いものが新しいものに置き換わり、続いて同様の構造にも新しいものが取り入れられてゆくだろう。語彙変化を含む表層構造の再分析は、統語上の変化の主要なメカニズムである。
英語には特に興味深い事例がある。英語では、ドイツ語では残っている屈折がだんだんと消滅し、その過程は再分析のよい資料である。以下はドイツ語と直訳した古英語の例文である。
Dem König gefielen die Birnen
Dæm cyninge licindin peran
O(与格、単数)-V(過去、複数)-S(主格、複数)
現代英語に逐語訳すると'The king pleased (the) pears.'となる。'Dem König'と'Dæm cyninge'は与格の間接目的語単数、「その王を」の意味である。'Birnen'と'peran'は主格複数形で文の主語「梨」である。しかし、中期英語の屈折の衰退により、'the king'が目的語なのか主語なのか分からない。動詞の複数形語尾'-on'も消えたので、'pleased'は人称も単復も分からない。現代英語では、「王は梨が好きだった」のか、「梨が王を喜ばせた」のかがわからない。中期英語の語順規則SVOによれば、'The king'は主語だろう。代名詞であれば主語'he'と目的語'him'の区別は現代英語でも出来るし、動詞の単復の違いは16世紀までは残っていた。
文法化。これは再分析よりももっと複雑な統語上の変化のメカニズムである。文法化は、語彙が、文法機能と合体する。その過程は、意味上の変化である音韻の衰退と原型の再分析を合わせたものである。極端な例は、自由形態から、接辞のような拘束形態素への変化である。文法化は、形態素にも統語にも関係が深いもので、形態上や意味上の変化をも巻き込むものである。この現象は長い間知られていたが、最近になって注目されている。
英語に置ける文法化の例は、'will'の主動詞から助動詞への発展と、'be doing'の場所の助詞と不定動詞の組み合わせから進行形への発展、'not'の否定強調語から否定助詞への発展である。
特に様々な言語で、未来形の発展は文法化のよい事例である。英語の本動詞'will'は未来を表す助動詞となり意味が衰退し、加えて音韻的な減少により'llとなった。同じように'go'の進行形として働いていた'going to'は19世紀初期から未来を表す構造として急速に広まり、音声的な減少を経て'gonna'となった。未来を表す新たな文法的機能カテゴリーの出現は、既に存在するカテゴリーの影響を受ける。なぜなら、未来とは、もうすぐ起きる出来事であるからだ。フランス語やその他の言語でも'going to'の同様な文法化が観察出来る。
類型論(typology)と関係(implicational)の変化。再分析と文法化に置いて、多くの要素と言語学的なレベルが相関して、ある変化をもたらす。4章の最後にさまざまな変化と関係する統語的な変化を扱う。これは、統語的な特徴によって言語を分類した分類学的な変化が見やすい。
文章の最も一般的な構成要素はS(主語)とV(動詞)とO(目的語)である。この3つの要素の語順は、6つある。多くのヨーロッパの言語のSVO型それからバスク語とトルコ語と日本語のSOV型が一般的な語順である。次はウェールズ語や古典アラビア語のVSO型である。ジョーゼフ・グリーンバーグ(Joseph Greenberg)が1960年代に示差的統語普遍性(implictional syntactic universe)と呼ばれるものを築いた。それは、VとOの語順がその他の統語的な関係も指定するということだ、VOとOVの統語的な諸事は対立関係にある。この理論は統語的な変化を記述し、説明するのによく使われていた。もちろん、議論が無かった訳ではない。例えばVOの語順を持つものは、助動詞は本動詞に先行し、比較形容詞も名詞に先行する。そして前置詞を用いる。一方OVの語順の言語では動詞は文の後部に配置され、助動詞は本動詞の後で、比較形容詞も名詞の後で、後置詞を用いる。
通時態の研究によれば、VO型言語はOV型に、OV型言語はVO型に変化してゆく事が観察されている。動詞と目的語の語順だけでなく、その他の特徴もだんだんと変化してゆく。従って、比較再建ではインド・ヨーロッパ祖語はOV型となっている。古ゲルマン語や古英語には所々で、特に詩などで、現在の前置詞が名詞の後に置かれたり、OV型が見られる。詩も後期になるに従ってVO型へと置き換えられてゆく。
このような大きな統語的な変化の根拠はさまざまに唱えられている。他の言語との分離し、強調などの語順変化による談話機能が、頻繁に行われることにより一般化したともされる。このような指標の変化は、語順の緩やかな屈折言語で起きやすい。
以上の変化は、特定の形式に特定の意味がつくような、形態素や単語の変化とはかけ離れたものである。しかし、基本的には、全ての言語学的要素は直接、音によって構成されており、統語も形態素も同じように変化させられる。次の章は音声の変化について統語的に観察してゆく。
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series
音声の変化は、歴史言語学の中でも最も良く研究され伝統のある分野である。比較的量が少なく、組織的な構造をもつ音声は、通時的にも共時的にも分析が行いやすい。
私たちが聞いている音声は、抽象的な音声単位である音素(phoneme)の実現である。音声的な変化あるいは、音素上の変化は、発音上の具体的な音声学的レベルと、抽象的な音韻論的レベルの両方で起こる。従って、これらの変化には多少なりとも、関連性が存在する。
How sounds are produced
どのように音声が作り出されるかの原則を知っていれば、音声変化を知る事が出来る。母音や子音の発音では、肺からの息を、発声器官の位置や動きによって調整する。発声器官は、声帯や喉頭、口腔と鼻腔がある。聴覚的な基準のように、調音器官の使用によって音声の基本的な分類をする。
全ての母音は有声音で、肺からの息が声帯によって変容している。母音の性質は、口腔の形で決まる。口腔の形は主に舌で決まるが、唇や顎も関係している。
もっとも舌を低く、口を大きく開ける母音は[a]である。舌が最も高く、口の狭く閉まった母音は[i]である。舌の前の部分が高くなると、前舌母音、硬口蓋母音と呼ばれる。舌の奥が高くなると、後舌母音、軟口蓋母音と呼ばれる。舌の中央が高くなると中舌母音である。口腔の中での舌の位置によって母音が分類される。
子音の場合、有声音もあるが無声音もある。子音は肺からの息の妨害の種類が異なる。これを調音方法と言う。短時間息を止める閉鎖音、かなりの阻害を行う摩擦音、閉鎖から摩擦に移行する破擦音、などである。もう1つの分類の項目は聴音の位置である。唇、唇歯、歯、歯茎、硬口蓋、軟口蓋を用いるものがある。
Phonetic change
音声の変化は、調音器官の位置が変化する事によっておき、隣接する音の影響を受ける事が多い。世界中の音声変化の調査により、調音の方法の変化には傾向がある事が分かった。
例えば、母音の硬口蓋化(palatalization)がある。調音する舌の最も高い位置が前舌になる事である。ドイツ語やフランス語で[u]が[y]になったり、古英語以前には[o]が[e]になる変化が多くあった。これは現在のmouse-mise、foot-feetにも残っている。古英語以前では[mu:si-]-[my:s]、[fo:ti-]-[fe:t]の発音であった。
反対に、軟口蓋化(velarization)は舌の最も高い位置が後舌による事である。ゲルマン祖語の[e]が古英語で[o]になっている。また、母音の舌の位置が高くなる事もる。'goose'や'boot'など中期英語で綴り通り[o:]であったものが、現代英語では狭母音の[u:]である。逆に[r]の前では広母音化が起こりやすい。
また、円唇化、非円唇化も母音に関する変化である。古英語の円唇母音[y]は現代英語では非円唇母音[i]になった。また、フランス語では、鼻音の前に来る母音の鼻音化もある。
二重母音化(diphthongization)は短母音が二重母音になる現象である。中期英語の[u:][i:]などでよくみられる。一方、イギリス英語ではしばしば短母音化(monophthongization)がみられる。特に[ə]の前に見られ'fire'が[fa:]と発音されることさえもある。
子音は、調音位置と調音方法での変化が見られる。
もっとも広く見られる変化は摩擦音化(spirantization)である。グリムの法則による、閉鎖音[p, t, k]の摩擦音化[f, θ, x]が有名である。その中でも[p]から[f]への変化は、両唇音から唇歯音へと調音位置の変化を伴っている。古英語では、閉鎖音から歯擦音への変化もある。'child'などの、前舌母音の前にある[k]が[tʃ]へ変化したものは、口蓋音化も同時に起こっている。
音声の変化は絶対的で、どんな場所でも起きるが、一般的に、条件付きである。例えば、英語の[r]は子音の前や語尾で省略されるが、その他の場所では残っている。
頻繁に生じる音声の変化について述べたが、大事なことは、個別の変化を記述するのではなく、もっと一般的な変化を見つける事である。音声の変化の性質を知る上で分かりやすい過程が必要である。
軟音化(lenition)は様々な音声の弱音化を含む概念である。はっきりとした発音で無くなる事である。(i)母音に挟まれる無声子音の有声音化と(ii)摩擦音化、(iii)ロンドン方言で[l]が[ʊ]になるなどの、子音の母音化や(iv)削除(deletion)がある。
削除や挿入には様々なタイプと専門用語がある。
語尾音消失(apocope)は語尾の母音が削除される事で、英語の発音されない語末の'e'などである。語中音消失(syncope)は語中の母音が削除される事で、'every'を[evri]、'history'を[hɪstri]と発音している。挿入(epenthesis)は母音や子音を挿入する事で、カタカナにおける母音挿入や、英語の鼻音の後の[s]が[ts]と発音される事である。
変化は、発音する際の分節の相互の影響や対立によって生じる。音声が子音や母音に分かれて聞こえるのは、言語の知識によるもので、音響学的な事実ではない。音と他の音に映るときもはっきり調音器官が切り替わっている訳ではない。連続した発声のおかげで、1つの音が先取りされたり、後続の音まで引きずられたり、発音が簡略化される。これは、同化(assimilation)と呼ばれる、最も広く見られる変化である。1つの音がその他の音と完全にくっついてしまう事である。
'assimilation'という単語はラテン語'assimilare'からの派生で、'ad+similis'の同化から生まれた単語である。英語でも、否定の意味をもつ接辞'in-'は後続の子音によって'im-'や'il-'などに変化している。フランス語における、鼻音に隣接する母音の鼻音化なども同化である。このような変化はその言語の全ての音で行われる。しかし、単語と単語など、早口の話しでしか起きない同化もある。しかしそれらもいつか言語学的な規則になるだろう。言語使用と結びついた変化が一般化し、そして抽象的な言語の規則になる。また、同化には順行と逆行の両方がある。
また、珍しい例として、異化(dissimilation)がある。同じ音や似通った音が、異なる音声に変化する事である。例えば、英語の'pilgrim'はラテン語の'peregrinus'がもとである。2つの'r'がなぜか'l'と'r'に分化してしまった。
以上の例は、質の変化であるが量の変化もある。例えば、母音の長さの変化である。母音の短縮は、3音節以上の単語で、強勢の無い母音で、子音の連続の前に位置する時に頻繁に見られる。keep/keptの対立が代表的である。そして、英語の'us'の母音は古英語では長母音であったが、短母音化したものである。
長母音化は'nose'や'tale'などの開音節の単語で多く見られる。これらは中期英語で[nɔ:sə][ta:lə]と発音されていた。また、'find'のような単語は古英語では短母音であった。代償延長(compensatory lengthening)は、短母音の後の子音が削除される事により、短母音が長母音化し、音節の長さを維持する現象である。代表的な例は、ゲルマン祖語では'*gans-'とされる英語の'goose'であり、子音[n]が削除された代わりに母音が長母音化したとされる。ドイツ語'Gans'では子音が保持され、母音も短母音である。
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
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Phonemic change
前の音声の変化は確かに面白いが、それは特定の単語の歴史であって、体系的な変化については何も分からない。ある特定の言語の抽象的な変化はわからない。
言語は音素の数も違うし、また、体系の中への組み込まれ方も異なる。どちらの次元も変化しなければならないだろう。
古典ラテン語の体系では5つの長母音と5つの短母音からなっているが、その子孫とされる現代イタリア語は、7個の母音でなっており、長短の区別は無い。しかし、古典ラテン語も現代イタリア語も、鼻母音などの無い、純粋な母音だけで構成されている。
フランス語は、鼻母音と言う新たなタイプを発展させ、純粋と鼻音化の対立を取り入れた事によって、多いに母音体系が変化してしまった。
子音に関して言えば、英語は閉鎖音よりも、摩擦音を多く持っている。しかし、インド・ヨーロッパ祖語は摩擦音が少なく、帯気音を含み多くの閉鎖音をもっている。
それでは、重要な2つの音素体系の変化について述べよう。音素合流(phonemic merger)と音素分裂(phonemic split)である。
2つの音素が完全に合流することは、中期英語のeの長母音にみられる。meatの半広母音の/ɛ:/と、meetの半狭母音の/e:/は、聴覚的にも調音的に似て来て、区別が無くなって来た。結果的に現代英語では/i:/に合流した。bootの/o:/とboatの/ɔ:/は合流せずにそれぞれ、/u:/と/o:/に分かれた。この事で、音素の幅が広がった。boatの母音は[o:]>[oʊ]>[əʊ]と変化してゆく。
一方、音素分裂は、異なる環境で起こる異音と結びついている。
例えば、英語の不規則な複数形があげられる。古英語以前の英語の主格複数形は、単数形に*/-iz/の接辞が着くと考えられている。foot-feetは*/fo:t-/-/fo:tiz/と再建される。硬口蓋音/i/に先行する語幹の母音が、硬口蓋音化によって、円唇前舌音*/fø:tiz/となり、その母音が変わらずに残っている。[ø:]の再建の意味するところは、かつてそれは/o:/の異音であったということだ。例え、実際の発音が*/fø:tiz/であっても、音素の表記は*/fo:tiz/であっただろう。長い時間をかけて強勢の無い接辞*/-iz/が消え去ってったら、[o:]と[ø:]の違いは予測不可能となる。さらに、古英語でのfōt-fētの対立は、今は、異なる母音の対立として残っている。音素/o:/は、/o:/と/ø:/に分裂したが、最後に、音声の変化が生じたのである。
以上の例では、音声変化は音素変化に帰着するだろう。もちろんこれは絶対ではない。一方、音素変化は直接の音韻変化を伴わずに起こるだろう。新しく出来た音素が、既にある音素と合流するなどのように、音素合流と音素分裂は様々な方法で影響し合っている。
音素は構造組織を成しているため、ひとつひとつの音素の変化が全体に影響する。チェーン・シフト(chane shift)と呼ばれるような一続きの変化を生じるものもある。例えば、グリムの法則と呼ばれる一連のインド・ヨーロッパ語で起こった変化である。これは2章で詳しく述べている。
その他のチェーン・シフトの例は、英語の大母音推移(Great Vowel Shift)である。中期英語の長母音のすべてが狭母音化したのとともに、狭母音は二重母音化した。/a:/>/ɛ:/>/e:/>/i:/>/ai/と/ɔ:/>/o:/>/u:/>/au/である。
今のところ、音素変化を音素の区分の変化としてみて来た。しかし、例えば、「有声」「閉鎖音」「両唇音」「後舌音」のように、音素を音韻論的な特徴の束としてもみて来た。特別な特徴や規則の変化としての記述は、効率的なだけでなく、全ての音素に関係するような一般的な変化の法則を見つけやすくなる。
例えば、グリムの法則は、具体的な音素の変化を効率よく記述すれば、[- continuant(継続音)]>[+ continuant(継続音)]と書ける。例えば、閉鎖音が摩擦音になっている事である。
以上のような記述は、音韻路上の変化は、個々の単語や形態に影響を与えるだけでなく、特定の形態素の共時的な交替をも引き起こす。例えば、異形態である。
共時的な観点では、このような形態音素交替(morphophonemic alternation)は現代英語の形態論の一部である。しかし歴史的な観点では、このような交替は音韻論的な変化の結果である。実際、これは音韻論と形態論の相互関係を示している。
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
---Oxford Introduction to Language Study Series
言語が変化する主な理由のひとつは、他言語との接触である。
この接触はバイリンガルな人々を伴う。ある程度において、2つ以上の言語を扱う人々である。彼らの言語は、様々な形でお互いに影響を受けている。発音の選択や、単語の借用や、文法の変容である。
単純に言語学的な視点では、言語接触の現象は善くも悪くもない。しかし、1章で述べたように、話者の態度は、決して中立なものではない。接触した言語や話者は、政治的、経済的、社会的に対等である事は稀である為、権力と権威の無い方は不利である。これは、よく、言語共同体同士の争いを引き起こす。
Borrowing from other language
最も頻繁で明らかな借用の例は、外来語である。外来語は、政治的、文化的な要因によって入ってくる。
3章で述べたように、英語は、主にドイツ語の語彙から始まった。しかし、紆余曲折の英語の歴史によって、膨大な量の外来語によって統合されている。同様に、俗ラテン語から派生したルーマニア語は、ロマンス文法を基底に残したまま、スラブ語の影響を強く受けている。このような広範囲に渡る固有語の置き換えは、世界中の多くの言語で起きている。
語彙の借用は、特に、情報源や提供者である言語にある文化的な現象についての、受け手の言語の差異によるものである。英語における、有名な文化的借用の例は、 ヒンディー語からthug(暴徒)、スペイン語からsherry(シェリー酒)、ドイツ語からwaltz(ワルツ)、ノルウェー語からski(スキー)、フィンランド語からsauna(サウナ)、新しいものでは、ロシア語からglasnost(情報公開)、日本語からsushi(寿司)がある。
これらの借用語は他の言語にも大量にあり、情報通信の増加により、現代において膨大に増加しているようである。
しかし話者は、借用語は、その物や概念を表す言葉がないから必要とされているのではないとわかっている。それは、提供言語の語彙の方がより良いと考えているからである。土着の言語は、フランス語や英語など、より評判の高い言語からの借用をしている。フィンランド語は、、対応するフィンランド語が存在しても、ゲルマン語やバルト語から親族や身体を示す中核的な語彙を借用している。
借用語は、ある特定の期間の特定の領域での、ある言語の優位性を示す。法律や戦争、政治や統治やファッションと食品に関して、英語においてはフランス語の語彙の方が普及している。ファッション雑誌やレストランのメニューを見ても、フランス語は英語話者に多くの語彙を提供し続けている。
借用の広がりに与える影響には、提供言語の権威がある。そのほかの要因は、言語接触の長さと、二言語使用者の数と社会的地位である。
もちろん、借用は単語の分類によっても異なる。名詞は、最も借用の頻度が高く、続いて形容詞、動詞である。自分の言語に欠けていると感じる物は、性質や方法よりも、物の名前が主である。一方で、複数の単語で組み合わされる代名詞や接続詞は、借用はほとんどない。中期英語の時代に、スカンディナビア語がthey、theirを借用したように、代名詞の借用もゼロではない。
借用語は特に、2つの言語の音韻上と形態上の差異が大きい時に、目標言語らしく変容することが多い。例えばフィンランド語は語頭の子音連続のない言語であるから、ゲルマン語のstranð(海岸)を借用した時、rantaとなった。日本語は開音節しか持っていないので、英語の子音連続は、日本語の音韻体系に沿うように置き換えられる。
語彙借用は、外国語のモデルの形式的な執着の度合いによって、異なるクラスに分類される。借用語は、形式的にも意味的にも提供言語から借用されるが、その他の借用翻訳も存在する。すなわち、提供言語の単語を文字通りに、目標言語に翻訳する事である。フランス語のgratte-cielもドイツ語のWolkenkratzerも、英語のskycraper(摩天楼)の借用翻訳である。
大量の借用は目標言語の語彙構造も変えてしまうだろう。例えば、考える事に関する英語の動詞のうち、thinkはゲルマン語であり、古英語の時代にまで遡る事が出来る。しかし、reflect、meditate、ponder、consiger、cognateはフランス語あるいはラテン語から来て、スタイルによって使い分けられる、同義語のような語彙を提供している。
語彙借用よりももっと曖昧なものは、構造借用である。それには音韻レベル、形態レベル、統語レベルの借用がある。
/v, z, ʒ/などの英語の音素目録への追加は、明らかに、大量のフランス語語彙の取り入れによるものである。
英語には、構造借用によると言われているものが多くある。例えば、現在進行形はラテン語から、疑問文と否定文のdoはケルト語から。しかしこれらの主張にも議論の余地がある。4章で述べた、基本的な語順SVOへの変化も、隣接言語や近しい語族からの構造借用であるだろう。
異なる言語レベルでの、広範囲の構造借用は言語収束(convergence)と成り得る。遺伝的に関係の無い言語でさえ、共通する構造をもつ言語になることである。
Convergence and linguistic areas
長期間の、あるいは恒常的な言語接触では、両言語話者は、情報伝達と複数の言語獲得を容易にするために、自分たちの言語を構造的にもっと似通ったものに変えることが多い。断片的な借用の方法とは違い、このような異なる言語システムの相互の収束は、典型的に社会的地位が同等の言語で起こり、そして、関わっている言語すべての変化をもたらす。
有名な相互収束の例は、多言語が使用されるインドの村、クプワル(Kupwar)で見られる。その村は、2つのインド・アーリア語族、ウルドゥー語(Urdu)とマラーティ語(Marathi)、それから両言語と関係のないドラビダ語族、カナラ語(Kannada)が、異なる民族グループによって話されている。実際、全ての住民が3つの言語を知っているし、何世紀もの間、それぞれの民族グループとの情報伝達の為に、日常的に3言語を使用している。結果として、文法的構造の異なる3つの言語は、クプワル(Kupwar)に収束したのだ。一方それぞれの語彙は、言語コミュニティーに関係なく、異なった形で残っている。
言語収束は、地理的な広がりを持ち、多くの遺伝的関係の無い言語を巻き込む事があるが、その言語的特徴は制限されている。このような言語区域(linguistic area)はインド、アフリカ、北アメリカの西海岸などで見られる。
有名な言語区域は、バルカン半島の言語である。そこにはアルバニア語派、スラヴ語派、ロマンス語派やギリシャ語などの異なる語族や語派の言語が存在している。これらの言語は多くの語彙と文法的な特徴を共有している。例えば、名詞の後に来る定詞の場所、異なる構造での不定詞の置き換え、それから、数字の11から19までの形式(10と1)。これらの特徴の数と組み合わせはそれぞれのバルカン半島の言語で異なるが、重要な点は、このようなバルカン語の特徴が、同じ語族のその他の言語、あるいはバルカン言語区域外で話されている同じ言語にさえも見られない、という事だ。
ある特定の特徴の出所ははっきりしていないが、1つの言語が、目標言語の基本的な発展の傾向と対応する特徴を採用しただけであると言われている。
2章では、語族の樹形図がどのように、同じ親言語や祖語からの新しい言語の成り立ちを説明しようとしたかを述べてきた。しかし、樹形図は密な言語接触を通じた言語の基本的な変化を説明する事が出来ない。大量な借用と構造的な収束が親言語や姉妹言語などの遺伝的な関係すら分からない程に、言語を変えてしまう場合もある。次に述べる、2つの言語接触のタイプでは、遺伝的関係は実際には疑わしいものである。
Herbert Schendl, Historical Linguistics(UK; Oxford University Press, 2001)
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