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How different are grammar and vocabulary?
言語の学習者たちは、語彙を習うし、文法規則も習う。
例えば、フランス語で「緑色の」は'vert'で、「木」は'arbre'である。そして、形容詞は名詞の後に来るので、「緑色の木」は'un arbre vert'である、と習う。
以上のように、語彙と文法は全く異なるもののように思われる。
語彙は単語であるし、文法は、単語と単語を並べるための物である。語彙は辞書に載っているような、特定の項目から成っている。文法は、全ての項目に適用される規則を含んだ、もっと一般的な性質である。
 
実際、多くの文法規則は、とても広い範囲に適応され、あるカテゴリーの語とその他の語を関係づける方法や、英語の前置詞は動名詞'-ing'に先行するなどの事実などを示す。
規則そのものの焦点は文法構造であり、文法と語彙は遠く離れている。しかし、その他の文法規則は語彙論(lexis)ともっと身近に結びついている。
実際に、多くの言語では、単語の形を変える事で、形態論的にある種の文法の意味を示している。
屈折のシステムは複雑なだけではない。屈折システムは面倒なことに、語彙の細かい分類に依って異なる屈折を用いている。
例えば、ラテン語の'amare(to love)'の三人称単数未来能動の形は'amabit'であるが、'regere(to rule)'の同じ文法機能の形式は'reget'である。この2つの単語は異なる分類なので、異なる形式、あるいは活用をするのである。
英語の法助動詞(modal auxiliary)は10個ある。'can'と'could'、'may'と'might'、'will'と'would'、'shall'と'sould'、そして'must'と'ought'である。
クロアチア語の'braća'(brothers)は、数少ない複数形の名詞の1つである。この単語は形式的には女性単数の形で、複数形の動詞ではなく、女性単数の形容詞と共に用いられる。
文法は、とても語彙と近い存在であると言える。
 
Grammar of words
規則や規則の焦点ではなく、個々の単語とその文法的な性質を調べても、文法と語彙と近さは明らかだろう。
精神的な語彙目録への典型的な入り口は、意味の特定や使用と並ぶ、構造的な情報の大部分を含むだろう。
まず、語は、文法的な分類に分けられる。
'arbre'は「木」を意味するだけでなく、名詞であり、その他の動詞や形容詞などとは異なるのである。加えて、名詞の中でもまたある種の名詞である。可算名詞なので複数形'arbres'がある。男性名詞に分類され使用される冠詞は'un'と'le'である。
分類は形式的に自明である事もある。イタリア語の'-mente'で終わる単語は多く、様態の副詞である。英語の'-ation'で終わる単語は、動詞から派生した名詞である。
単語の分類とともにはたらく文法はとても複雑である。ある言語では、人称、数、時制、法によって、数十個、または百個にもなる動詞の変化がある。
 
単語の文法は、ただの単語の属する分類の機能だけではない。語そのものが独特の文法的側面を持つ事が出来る。
不規則変化がそうである。それらは1つの分離を成しているという事も出来るだろう。英語の'penny'の複数形は'pence'で、'lose'の過去形は'lost'である。
形態論のように、統語論も、単語に特有な物である。
英語の''suggest'の後には'-ing'の形が続く。不定詞は続かない。'expect'と反対である。'rely'は目的語の前に前置詞が必要であるが、'trust'は不要である。英語の動詞の過去形は、副詞とは違い、普通'very'と一緒に用いない。しかし、語特有な表現はある。'very love'とは言わないが、'very annoyed'は言う。
実際、巨大な言語データーベース(corpora)の研究に依って、ある言語の全ての単語が、複雑で独特なネットワークと関係性を築いていることがわかった。
品詞のように、明らかに文法的な関係性もある。
連語(collocation)のように、単純に語彙的なものもある。例えば、'sherply different'や'slightly different'は良く言うのに、'hightly different'や'mildly different'とはほとんど言わない。
これらの極端な物の間に、文法と語彙が相互に影響し合い、境界線が曖昧な真ん中があるのだ。
 
On the frontier
単語は、文法の多くを含んでいる。
多くの文法情報が1つの単語に詰め込まれているために、文法と語彙がほとんど変わらない言語がある。
例えば、トルコ語の'öpüştürüldüler'は、英語の'They were caused to kiss each other'にあたり、フィンランド語の'autostammekin'は英語の'from our car, too'の意味である。
文法と語彙の境界をまたぐのは、形態論上複雑な単語だけではない。
言語は、外の世界の要素を意味するよりかは、言語の内部の事象を調節する、単純な辞書的項目も持っている。
英語は助動詞の'do'を疑問や否定を表すのに用いる。タイ語の'máy'は質問文を作る。日本語では主題、主語、目的、所有の文法項目を表すために、名詞に短い助詞をつける。この助詞は実際、形態論上の屈折と大きく変わらない。
 
これら機能語の中には、それの持つ文法的機能を示すだけで、ほとんど意味を持たない物もある。
その他は、文法と語彙の境にいるのである。
前置詞は「文法」と考えられるが、明らかに、時間や空間的関係の辞書的な意味を伝えている。
一方では、特定の文脈で意味が薄くなっている。'look after'や'under these circumstances'などがある。
このような用法は言語の発展に共通しており、単語の辞書的な意味が失われ、純粋な文法的機能を帯びる。そして、文法と語彙の境界線の曖昧さとはまた異なる要因である。
 
Michael Swan, Grammar(UK; Oxford University Press, 2005)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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Language in use: chunking
紋切り型の文法的な分析からではなく、実際の言語使用を見てみると、文法と語彙の境界はさらに曖昧である。
分析的な観点では、語はある特定のカテゴリーの名前である。例えば、'car'は物であるし、'buy'は行為である。文法はそれらの一続きの単語を、メッセージを持つ構造に変えてくれる。例えば、'I've bought a new car.'
しかし、世の中はメッセージであふれている。
とても独特で、一度限りのものもある。例えば、「おばあちゃんのピッケルの後ろの棚の上にネズミが死んでいる」。
一方で、似たような状況で頻繁に生じ、適切な場所で何回も繰り返されるものもある。「遅れてすみません」「ありがとうございます」「領収書お願いします」などだ。
日常生活でたびたび起こるこれらのメッセージは、ながいひとつの単語として考えられる。
ひとつの単語のように、表現の似たカテゴリーに関する、分類の性質を帯びている。たとえば、遅刻を謝る表現、感謝を伝える表現など。
そして、心理学的にも、それらの表現は単語と同じように扱われる。例えば「遅れてすみません」と言うとき、人は、単語を選び、それらを文法的に正しく組み合わせたり状況的にも文体的にも文章としてふさわしくすることはしない。
人は、既にある定型文の蓄積から、それらの表現を呼び起こすのである。
「おくれてすみません」は「すみません」と同じで、書くスペースがすこし広く必要なだけである。
 
チャンク(chunk)と呼ばれるこのような決まり文句(formulaic language)は、近年、重要な研究が行われている。特に、巨大な電子コーパスの開発により、単語の固定された結びつきや、一時的な結びつきの表をつくるのが簡単になったからだ。
研究により、言語は多く、これらの複数の語から成る決まり文句を含むことがわかった。よく引用される主張では、英語は何十万ものチャンクを持っているとされている。
よく見る'work'を含む句を考えてみれば、数十個はすぐに思いつくだろう。これらは、1つの単語としての意味を表している。
チャンクには慣用句(selectional idiom)と呼ばれるものも含まれている。良く生じる意味を表すため、習慣的に用いる表現である。
全ての言語にこのような慣用句は存在し、それはその言語を学ぼうとする人たちにとって大きな問題となる。
学習者は、文法と語彙の勉強をするが、状況やメッセージによって好まれる定型文を習わない。
逆に、中級レベルの言語の知識で習慣的な日常の表現を作り出すより、一度きりの正しい言葉で小説を書く方が簡単であろう。
 
チャンクの中には、語彙的な性質にも関わらず、典型的な文法として捉えられることがある。
例えば、'I'm going to'これは、単語の構造としてではなく、未来の助動詞としてひとつのチャンクをなしている。
この仮説には、発音が重要な根拠となる。ゆっくり発音すれば、/aɪm gəʊɪŋ tu:/であるが、普通、/aŋnə/や/amnə/と言う。
このチャンクは英語でよく使われる、'If I were you'や'What I meant was'のような構造と同じ、文法的な塊と枠組みを持っているのだろう。
 
一般的な定型な語彙の多さと、語彙的な構築物の頻繁さを考えると、全ての言語の話し言葉と書き言葉の大部分を、既に組み立てられたチャンクが占めているのではないだろうか。
研究によれば、英語の報道の文中の「動詞+直接目的語」の組み合わせのうち、37.5~46%が制限的な連語や、慣用句と捉えることが出来る。普通の英語では80%まで数値が上がる。
定義とサンプリングの問題のために、信用出来る結果を確立することができないが、これらは文法と語彙の合わさったカテゴリーに含まれるだろう。
 
A continuum
言語学者は、語彙と文法を別々のものとしてより、連続体として考える方に向かっている。一方で言語は、明らかに語彙であり、もう一方では純粋に文法的な現象である。
この2つの対極の間に、個々の単語の文法が含まれている。語彙的な単語があり、語をつなぎ合わせ小さな文法的な塊をなる構造もある。
この世界のほとんどの要素として、語彙と文法は、まったく異なる類いのものであるが、それがどこで終わりどこからが始まりなのかを、示すことは出来ない。
 
Michael Swan, Grammar(UK; Oxford University Press, 2005)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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Speech and wrighting
文字文化では、書かれたものが基本的な文化伝達の手法と成り、法律や聖書のように文書によって行動が規定される。そこでは書かれた文字が大きな権威を持つ。
言語が書き言葉を指し、文法は書き言葉の分析に基づく。
消えてゆく構造を持ち、研究に向かない話し言葉は、文法の規範に正しくしたがっていなく、書き言葉と関係が少ないと見なされやすい。
近年、口述の信用性が高まり、録音と分析の技術の大きな発展により、話し言葉を言語語学的存在として認めることが出来るようになった。
 
話し言葉や書き言葉を扱うことは、様々な文体の性質をもった様々なタイプのコミュニケーションを一般化することである。
しかし、普通、書き言葉と話し言葉の生産と解釈は全く異なる過程を経る。
ほとんどの会話は相互作用がある。会話は話し手と聞き手の両者によって、順番に話し、遮って、返答を差し挟んで、互いの発言を受信して、必要な説明と詳細を加えることで、成り立つ。
書き言葉は独白である。書き手は、その場で反応を得られない。分かりにくい箇所があると、それを解決することが出来ないため、結果的に書き言葉では、分かりやすい構造と表現が重要となる。
これらの話し言葉と書き言葉の物理的媒体によるコミュニケーションの差異のために、この2つの言語が、それぞれ異なる文法的性質を持っていることは驚くべきことではない。
 
Building phrases, clauses, and utterances
複雑な素材を使用するのに、書き言葉では、中止したり、思案したり、書き直したり、訂正することができる。
止まらな話し言葉は、多くの構造を保持し組み立てる記憶の許容量によって制限されている。
そのため、読者は、聞き手よりも複雑な言語を読み取ることが出来る。好きな速度で読み、必要ならば過去に戻ることが出来るが、聞き手は自分の好きな速度で聞くことが出来ない。
以上の理由から、書き言葉は、比較的情報が濃くつめられた、建築的な構造をもつ傾向がある。一方、話し言葉は、よりぼんやりとした要素の、一直線に続く構造を持ちやすい。
また、書き言葉の名詞句(NP)は、核である名詞の周りに、定詞、形容詞、名詞、後置修飾などが含まれる大きな構造となる。話し言葉の名詞句(NP)は修飾語が少なく、特に主語は1つの代名詞がほとんどである。
そして、話し言葉では、別々の句や節で表現されることを、書き言葉ではよく名詞化(nominalize)する。
 
書き言葉は、長くてとても複雑である。複雑な埋め込み文を持つ、とてつもない階層的組織が可能である。
このようなことは話し言葉にはあまり無い。話し言葉の節に含まれる単語数はだいたい平均7語だが、改まった書き言葉はその2倍である。
話し言葉は実際、文として分析することが難しい。話し言葉は、発話と緩く結びついた、句や節の一直線の構造からはみ出ているように見える。構造的な階層を成すというよりかは、追加の方法である。例えば、以下のようである。
'So there's nobody here, so if you could, if you could come in for a couple of hours, in case the gas people come.'
 
Reference and context
言語の分析のためには、文や節、句などとして分かりやすくして、小さな単位で観察することがよい。
しかし、言語は普通もっと大きなものである。例えば、会話や歌、演説、広告、手紙、願書、法案、詩、小説などである。
話し言葉でも書き言葉でも、コミュニケーションを成功させるためには、これらのテキストは構造的でなければならず、そして結果として、主に大きな言語の集合体と関係している、文法的様相がある。
 
テキストを構成する時に重要なことは、参照の調節である。
一度、特定の人やものに言及したら、人はもう一度言及するだろう。しかし、同じ形で何度も繰り返されるのは効率が悪い。「ある日赤ずきんちゃんは、赤ずきんちゃんのおばあさんに荷物を届けることになりました。赤ずきんちゃんはまず森を通って・・・」のようになる。
言語は語彙の繰り返しを許容するために言語は大きく変化するが、前方照応(anaphoric, back-referring)代名詞を使用することによって、この繰り返しに対応することが多い。例えば、「その人」「それ」「今私が話していたその人」である。
この形式を使うことによる効率の良さは、正確さと引き換えに成立している。従って、必然的に曖昧さが生じる。たとえば、「アンはベアリースに、彼女はひどい失敗をしたと伝えた。」
英語のように代名詞が少ない言語だと、この曖昧さは大きくなり、参照する名詞の分類がたくさんある言語では小さくなる。しかし、一般的に、この曖昧さは簡単に防止し解決することが出来る。
名詞の他にも、句が代用法(pro-form)によって要約することが出来る。例えば英語では、既に述べられた動詞や、形容詞や関係詞節、目的語を置き換えることが出来る。'I've already done it.', 'We would oppose such a decision.', 'I hope so.'
参照の明確さが必要の無いときもある。既に述べられ、文脈から特定することが出来る場合、省略(ellipsis)が一番効率が良い。例えば、このような会話がある。'Why did you do that?', '(I did that) to annoy you.'
 
参照の方法は書き言葉と話し言葉でも異なる。
多くの書き手は、知らない人に対して書くので、当然、文脈や知識を共有出来ない。従って、書き言葉は話し言葉に比べて、代名詞が少なく、名詞が多い。
一方、話し言葉は今、此処に固定されている。会話の文脈は話し手の精神状態や共有知識や言葉のやり取りにより成立するので、発話されない情報を多く含んでいるだろう。'Look at that!'のような指示詞は、話し言葉によく使われる。
そして話し言葉では、'so'や'do'や'one'のような単語と代用されることが多い。省略は、日常的な会話でよく見られる。それら不完全な発話は、2人の話し手の発話によって完成するだろう。
 
'Given' and 'new': information flow and topic-maintnance
テキストは、既に与えられた(given)古い情報と新しい(new)情報を統合することによって、どんどん増加して組み立てられてゆく。
結果として、情報の地位を明らかにすることが求められる。
英語の冠詞の複雑なシステムは、定性を表す。書き手と読み手、話し手と聞き手が既に知っている特定出来るものを参照しているのかをどうかを示す。例えば'the'は、既に話しているものなど、特定出来るものにつく。'a'は、以前の話題には上がらず、特定出来ないものにつく。
 
定冠詞や同等の屈折などを持たない言語では、このような方法で定性を示すことは出来ない。
しかし、情報の新旧は語順によって示すことが出来る。テキストは、旧-新の順番で構成される事が多い。文や節は、同然であると見なされるたり、既に知っているものから始まり、大事な新しい情報は最後にくる。
多くの言語では、主題(topic)を文法化することによって対応する。主題が提供されるこの構造では、節の最初に分離して配置される。主題は主語である必要は無い。例えば、'The lecture, I thought I was going to die of boredom.'
英語では、特に書き言葉では、主題が文法的な主語となりやすいが、これは英語の語順で節の頭には主語か来るからである。したがって、英語の主語は、'the'の付く定性であることが多い。
話されている状況や行動において、主題となる人や物が、動作主であったり主要な参与者である場合は、このような主題と主語の混同は問題にならない。むしろ、自ずから一致するだろう。
しかしその他の場合では、主題を主語の位置に持ってくるために、動詞や構造を選択し、語彙的あるいは統語的なごまかしが必要となる。英語には自動詞/他動詞の動詞の組み合わせが豊富にあり、このような工作が得意である。このような主題の操作は、能動、受動の切り替えにも重要である。
英語の話し言葉では、よく主題と主語が切り離される。
さまざまな主題-解説の構造が、聞き手が整理するする時間を与えながら、同時にメッセージの一部を担うことが出来る。例えば、'Last Wednesday it was, I was just going to work, ....'
節の後ろに、情報を配置することで付け加えることも出来る。例えば、''They work very hard, most fo them.
 
話し言葉の実体である音声が、微細で複雑なテキストを扱うことが出来る。
多くの言語が抑揚(intonation)によって、どれが背景であったり、古い情報であったり、共有知識であるかと、どれが焦点となる情報であるかを示すことが出来る。
古い情報は、不完全を示す上昇の抑揚を呈し、新しい情報は、完全を示す下降の抑揚を呈する。この点に置いて、話し言葉は書き言葉よりも、語順への依存度が低い。
音韻論的な特徴は、空間的な焦点や強調を指し示すことも出来る。'She only played tennis with Mr. Anderson on Friyhdays.'は語順だけでは曖昧な文であり、発音によって完成される。
書き手は、このようなニュアンスをその他の方法で表さなければならない。下線や斜体などの見た目での情報は限りがある。抑揚や休止などの話し言葉による効果とあまり変わらない。
語順を変えることで問題は解決するだろうし、分割もよいだろう。'She played tennis with Mr. Anderson only on Friyhdays.', 'It was on Friydays that She played tennis with Mr. Anderson.'
 
Michael Swan, Grammar(UK; Oxford University Press, 2005)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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Text structure
もしも、テキストの部分ごとの構造的関係や移行が明確であれば、読み手と聞き手はテキストをもっと簡単に読むことが出来るだろう。
これは典型的に、談話標識(discourse marker)によって行われている。テキストの調節を主な機能とする語や句のことである。例えば、'on the other hand', 'similarly', 'by the way'などである。
英語の談話標識は、改まった話し言葉や書き言葉と全く異なる、使用域(register)に特有なものが多い。
そして、談話標識の正確な機能と意味を分析することは、簡単なことではない。なぜなら、'actually'や'I mean'のように、英語の会話で用いられるものはとても多義的で、整理した定義が出来ないからである。
他の言語でも、この分析は問題となっている。ドイツ語には、'ja'や'doch', 'denn'などの広い範囲の意味を持つ法の小詞がある。これらの小詞はとても曖昧な、構造的なニュアンスと、話者の気持ちを表す。
 
話し言葉によるテキストは、よく、広範囲の構造的装置を含んだ、会話のパートナーと一緒に構築されている。
特定の談話標識によって、会話を引き継いだり、話題を変えたり、返事を求めたりする。または、上昇、下降の抑揚を使い分けて、まだ話を続けるのか、聞き手に番を譲るのかを示唆することが出来る。
また、文法的な構造が、はっきりと会話の流れを調節することもある。主語+助動詞のグループである。'Isn't it?'のような質問の目印が、反応を求め、'Did you really?'のような返事を求める質問文が、注目を促す。そして、'Yes, I have.'のような短い返事である。
話し手はまた、形式的な挿入を多く使う。'Hi', 'Yes', 'OK', 'Sorry', 'Look', 'Please', 'Damn'。これらは実際、ひとつの語の分類を成している。
 
Face
話し手の文脈の中心は聞き手であり、文法が、話し手と聞き手の相互作用を促し、両者の不和を最小限にするために、会話を調整する。
日本語やタイ語などの言語は、対話者に対する尊敬と礼儀を表す、複雑な敬語(honorific)装置を持っている。
一方、英語では尊敬の表現は限られており、いくつか、尊敬や思いやりを表現する文法的な付属品がある。例えば、聞き手に選択権があることを示すために、要望は質問で表現する。'Please help me.'より'Can you help me for a moment?'が良い。
また、'I would think...'や'I was wonder...'のような、よそよそしい動詞の形は、より間接的に、主張や要望や質問を表現する。
抑揚も思いやりを表現するのに使われる。上昇形の質問文は相手への配慮を示し、下降形の抑揚をもつ質問分は断定的に聞こえる。
書き手も、もちろん、読み手に対して十分な尊敬を示す方法が必要である。例えば、'of course'は、読み手が実際には知らないだろう知識や見識を、持っていると信用する標識である。そして、これは、比較的明確で良く知られた情報を与える時に、書き手が読み手を見下しているような効果を減少させる。
 
Formal and informal language
おそらく、全ての言語で、公式な場と非公式な場の使用域(register)の違いがあるだろう。
話し言葉も書き言葉も、多かれ少なかれ、公式なものとなる。しかし、自然に、公式な使用域は書き言葉と、非公式な使用域は話し言葉と関連することが多い。
そして公式と非公式の差は、おそらく、社会が階層となって別れている範囲の影響を受けるだろう。
英語では、19世紀から続く民主主義化により、差が狭くなった。
一方、ある状況下では、この使用域が完全に別れてしまうことがある。
中世のラテン語の発達に従って、公式と非公式の差が広まり、土着の非公式な日常語(vernacular)が、イタリア語やポルトガル語や、ルーマニア語等の、新しい言語となったのである。そしてそれぞれの言語に、公式と非公式の使用域が発展した。
 
公式非公式の差は、語彙の違いによって表現されることが多い。英語では、'start/commence'や'tell/inform'などがある。
文法的に違いを表すこともある。フランス語では、実質的に書き言葉でしか用いられない過去時制が存在する。アラビア語には、公式的な話し言葉で使われる、主格、対格、与格をあらわす語尾がある。英語には、助動詞句の短縮や句動詞比較的話し言葉によく用いられる、非公式的と感じさせるような文法構造がある。
英語では'have got to', 'be going to', 'had better'は話し言葉で良く用いられる助動詞句であるし、また、決して書き言葉に用いられないような条件文や関係詞構文などもある。
書き言葉の伝統の権威により、話し言葉特有の文法は間違いとして非難されることが多い。
しかし、それらは何世紀もの間、口語英語の現在形の標準語である。'between you and I'や'Me and Alice went...'のような用法もそうだ。不定の単数の代名詞としての'they'の使用はとても古い。
現在の話し言葉と書き言葉の権威的な差の縮小により、これらの形も受け入れられやすくなって来ている。
 
Special kind of text
ある種のテキストは、一般的なテキストで用いられる文法規範とは異なる、独特な構造を持っていることがある。新聞の見出しや広告など、短縮の多いテキストは、冠詞や助動詞のような文法的標識が書けている場合が多い。
また、文学的なテキストは、意識的に通常の文法構造をもてあそんだり、無視したりする。
 
Michael Swan, Grammar(UK; Oxford University Press, 2005)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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1000 years of change in English
古英語の英雄詩「ベオウルフ」は、約1000年前に書かれたものである。以下のように始まる。
 Hwæt! We Gardena in geardagum theodcyninga thrym gefrunon hu ða æthelingas ellen fremedom.
 
14世紀初頭に書かれた「ガーウェイン卿と緑の騎士」からの中期英語は、以下のようなものである。
 Wrothe wynde of the welkyn weastelez with the sunne, the leuez lancen from the lynde and lygten on the grounde, and al grayes the gres that grene watz ere; ... and thus yirnez the yere in yisterdayez mony.
 
「ベオウルフ」の古英語は、語彙も文法も完全に違う言語である。短い冒頭分だけでも、現代英語と異なるさまざまな特徴が見て取れる。
まず、属格、与格の複数名詞の形があり、複数の動詞の語尾が存在する。語順は比較的自由だが、主語-目的語-動詞の構造が多い。
一方、中期英語は、「ベオウルフ」から約350年後のものであるが、「英語」と分かる文章である。
もちろん、現代英語と異なる点は多いが、ほとんどの、複雑な屈折システムが無くなっている。そして、語順も今日のものとかなり近い。
 
Mechanisms of change
全ての言語が何回も変化を繰り替えしている。
この過程は、完成に向かった進化であると考えられることが多い。この考えでは、言語は使用者によって上品で正確なコミュニケーションの道具になされ、斬新的に洗練されている。
しかし、ほとんどの場合、言語の変化は退化と見なされる。言語は理想の姿から離れてゆき、文法規則は無視され、模範は弱化し、重要な差異やニュアンスが無くなる。
どちらの考えも、言語システムに良い悪いがあることを当然のこととして見なしている。原始的なものと、進化したものである。
しかし実際には、ピジン(pidgin)の例を抜かせば、原始の言語などというものは存在しないし、言語学者は、言語構造の類型の相関関係の研究をしないし、効き目のある表現の能力の研究もしない。
言語の変化は、同時に起こる、下降と上昇の動きの産物と考えるのが良いだろう。この動きは再編成や再生産、再創造を含んでいる。
しかし一方で、表現の形式は何度も慣例化され、強い印象や正確さが失われた。だが、言語使用者は常に、すばらしい表現のために、革新を続けて来た。
シェイクスピアは効果の経済性を追求し、言語の形式がだんだん風化されていった。聞き手が求める分かりやすさのニーズと均衡し、ある部分の欠如はその他のもので補われているのである。
大幅な簡略化をもたらす変化もあるし、途方も無い複雑化をもたらす変化もある。
コミュニケーションの効率に基づく観点では、このような変遷の結果は中性である。概して、言語は、その使用者の目的に達成するための手段を提供し続けるだろう。
 
Analogy
多くの言語の変化は類推(analogy)を含んでいる。
まるで言語が自身を整理するかのように、形式をその他のものに変更している。
例えば、動詞'like'は元来、非人称の主語をもち、人称の目的語をとっていた。しかし、より一般的動詞の使用法である、人称を主語とする用法で'like'が用いられるようになり、現在の用法となった。
古英語の複数形は一般化された。そして今、'shoen'が'shoes'となったように、外来語に置いても統一の動きがある。'formulae'のかわりに'fomulas'が用いられている。
現代英語の話し言葉でみられる類推に、'would'の用法がある。今、だんだん、条件文において、副文と主文両方に'would'をおくことが増えている。'It would be better if they would tell everybody in advance.'そして、ドイツ語、フランス語、スペイン語にも同様な変化が見られる。
もう1つ、'may'の使用の拡大もある。最近までは、'may have happend'と言えば、「たぶん、起こっただろう」という意味しかなかった。しかし、最近の'may have ...'の使用が多くなり、実現しなかった可能性を意味するようになった。
 
小さな機能語を用いた複雑なシステムは特に、まるで小さな差異を維持することが苦労の割に得るものが少ないように、でたらめな類推によって変わりやすい。
このような変化が話者によって繰り返されたとき、これが制度化される。英語はだんだん、'head'のあとの前置詞は'for'から'to'に置き換わるのである。例えば'The ship is now heading to Liverpool.'のように。
現在起こっている、小詞や機能語の余分な示差性の崩壊は、所有や複数形の綴りの混同として広まっている。例えば,、クリスマスカードに書かれた'Seasons Greeting's'のようなものだ。正しくは'Season's Greatings'である。
 
類推は言語学的共同体の中でも行われている。
権威を持った言語がその他の種類のものに、悪名高く知れ渡る程に、影響を与えている。
英語の各方言は、だんだん標準英語に収束していっている。一方、イギリス英語自体がだんだん、アメリカ英語の影響を受けている。この中には、接続詞'as'の代わる'like'の使用や、'do'の使用の拡大などがある。
類推的な変化は言語間を越え、まったく似てない言語が文法を共有することさえもある。特に、バイリンガル共同体において、1つの言語が他方の言語の影響を受けて変化する。スコットランド、ウェールズ、アイルランドの英語は基層に、その地域のケルト語の文法を受け継いでいる。ルーマニア語、アラビア語、ブルガリア語は遠い関係の言語だが、みな、屈折する、名詞に付く定冠詞を持っている。多言語が使用されているインドのKupwarの村では、関係性の無いカナラ語(Kannada)とウルドゥー語(Urdu)が同じ方向へと収束していっている。
 
Phonetic erosion
もっとも強力な言語変化の要因は、発音の変化である。
話し手は自然に、音節や単語の終わりを、始めよりも弱く発音する。言いにくい発音を単純化し、強勢の無い音節を縮小する。結果的に音声が弱まり無くなってしまう。
ずっと昔に綴りが整えられた言語は、発音されない音声を表示する無音の文字が出没する。英語の'si(gh)t'、フランス語の'pe(n)e(ent)'などである。
長い時間をかけて、この過程が文法を変えることもある。
もしも、屈折が変化したら、この欠如を補うためにその他の表現を見つけなければならない。例えば、語順や機能語の使用を増やすことである。アングロサクソン語と現代英語の違いは、この点にある。
現代英語では、発音の変化が、ある状況下での助動詞を少しずつ削り取っている。完了の'have'や、疑問文での進行形'are'などだ。
また、動詞+不定詞構文に置いて、'to'が先行する動詞とくっつく変化もある。'hafta'や'wanna'などである。
もしもこれらの個別的な変化が十分に普及したら、最終的に文法システムの再構築を引き起こす。
 
Michael Swan, Grammar(UK; Oxford University Press, 2005)
---Oxford Introduction to Language Study Series

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言語学が大好きな一般人のブログです。 過去の記事は、軌跡として残しておきます。
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てぬ
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大学院で言語学を学びたい大学生が、日々の勉強の成果を記録してゆく為の、個人サイトでした。
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