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母音を発音する際に舌先をそり返すと、
下の筋肉が緊張して盛り上がり、咽頭に狭めが生じ、籠った低い音が加わる。
この音が、Rの発音に似ているため、r音化といい、
字母に右鉤[ ˞ ]をつけて、[ ɑ˞ ]、[ ɚ ]のように表記する。
中国語の北京方言やアメリカ英語で、rの直前の母音に現れることがある。

また、同じ調音点でも、咽頭の広さ、
つまり舌根の位置で音素を区別する言語がある。
西アフリカのイボ語やアカン語がそうである。
普通、舌根の位置は、舌の最高部の位置によって移動するが、
この言語では意識的に舌根を動かす。
舌根が前に出て、咽頭の空間が広がる時は、字母の下に[ ┤]を付ける。
舌根が後ろに下がり、咽頭の空間が狭まるときは、字母の下に[ ├  ]を付ける。
素性としては、舌根前進(Advanced Tongue Root; ATR)と言う。
e66dfb85.JPG

参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008

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母音は、舌の位置で、どのような中間音も出すことが出来る。
前舌の4点、中舌の3点、後舌の4点では
全ての舌の位置を表すことができない。
そのための補助記号が揃っている。

まず、円唇の程度の強弱を、字母の下に半円を付けることで示す。
[ ɔ ]の向きが、円唇性がく。
[ c ]の向きは、円唇性がくなる。

前舌よりになる時は字母の下に[ + ]を、
中舌よりになる場合は、字母の上にウムラウト[ ¨ ]をつける。
後舌よりの発音には、字母の下に[ - ]を付ける。
中段中舌より、つまりシュワー[ ə ]寄りの発音になるときは字母の上に[ × ]をつける。

そして、舌の高さを表す場合、
舌の最高点が高い、つまり狭母音寄りになるときは、字母の下に[ ⊥]
舌の最高点が低い、つまり広母音寄りになるときは、字母の下に[ T ]をつける。

日本語の母音を大まかに表記すると以下のようになる。
b7103c88.JPG

参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008

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最適性理論で用いられる制約には、重要な前提がある。
以前(07/05)中途半端に述べてしまったので、
窪薗の解説に基づき、明らかに述べる。

まず、言語を科学的に語る上ではずせないのが、普遍性(Universality)である。
窪薗の文章の挿絵が、物理学の解説イラストであることが示唆しているように、
言語の普遍性という前提は、良く知られている。
制約の普遍性とはつまり、全ての言語が同じ制約を持っているということである。
制約はすべて、どの言語にも含まれている。
では、何が、ある言語と他の言語を区別しているかというと、制約の序列である。
これを階層化(Ranking)である。
複数の制約の中で、どれを重要視するかによって、言語の出力がことなる。
つまり、重要ではない制約には違反しても良い。
これを違反可能性(Violability)と言う。
全ての制約をきっちり守っていたら、階層化の意味が無いし、
そもそも制約にはもともと、矛盾する制約が存在している。
制約の普遍性を掲げるためには、不可欠な主張である。

生成部門(Gen.)で作られた複数の可能性解を、
制約部門(Con.)に照らし合わせて最適解を導き出す評価部門(Eval.)による選定の作業は、
決められた制約によって行われる。
この適格性制約が、
規則や他のものの干渉を受けないという、内包性(Inclusiveness)の主張がある。
また、この適格性制約の適応による最適解は、
一個ずつ、一段階ずつ判断されるのではなく、全て同時に行われる。
これを平行性(Parallelism)と言う。

この5つの主張は、最適性理論の基礎である。
また、最適性理論が目指すところも、見えてくるようである。

参考文献
田中伸一 『日常言語に潜む音法則の世界』 開拓社 2009
窪薗晴夫 「派生か制約か 最適性理論入門」 月刊『言語』 大修館 1996.04.-06.月号

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「20世紀言語学の原点は、ソシュール」であると、
必ずと言ってよいほど、言語学入門書に書かれているだろう。
時代は繰り返す。
ソシュールの主張は決して、オリジナルではない。

ソシュールの前、
19世紀の言語学は主に歴史言語学(histrical linguistics)と呼ばれるものであった。
各国語の語源や
ラテン語がイタリア語、フランス語、ポルトガル語へと変形してゆく様を、
歴史的に捉えてゆく通時的言語学である。
しかし、19世紀の歴史言語学の問題は、
ルネッサンス期の歴史言語学の流行で、すでに考えられていた問題を、
モダンな視点で再検証したに過ぎない。
ルネッサンス以前と、ルネッサンス期と19世紀の間には、
ソシュールの議題と同じ、理論と記述への関心があったとされる。

ソシュールの言うシニフィアンシニフィエの区別は、
アリストテレスが「声の中にあるもの」と、
「精神の中にあるもの」と表現したものと類似していると言えるし、
特に、意味と、意味されるものの区別はストア学派の重点とされていた。

ソシュールの主張とされる言語の特性であるメタ言語は、
既に合う具すアウレリウス・アウグスティヌスによって、verbumという言葉で捉えられていた。

通時的共時的な言語のあり方を、
18世紀の学者ジェームズ・ハリスは「語源」と「体系的順序」で区別しているし、
19世紀にはゲオルク・フォン・デア・ガーベレンツは「同時的」、「継起的」という用語を用いている。
ソシュールはこのガーベレンツの説を取り入れている。

現代言語学の基礎も言える、parolelangueの区別は、
現在はよく、チョムスキーのperformanceとcompetenceと比較される。
ヘーゲルは『百科全書』のなかで、言語について、
「言」と「その体系である言語」の区別を示唆している。
ガーベレンツは言語を「言」「個別言語」「言語能力」のみっつに分類されている。

また、言語の恣意性についても、
すでにアリストテレスによって、「記号は自然に機能するのではなく、制度・社会的に定められた伝統に従って機能する」と言及されている。
また、恣意性という言葉も、ソシュール以前に既出であり、
16世紀にはホッブズなどが指摘している問題であった。

このように、20世紀の言語学は脅威の跳躍を成し遂げたわけではない。
しかし、過去の偉人達の考えを、復唱しただけでもない。
ソシュールは雑多な思考を分かりやすくまとめたというだけでも、十分な偉人であると言える。
残念ながらガーベレンツの著作は日本語では読めないらしいが、
ガーベレンツとソシュールの関係を主張するコセリウの著作はいくつか邦訳が出ている。

参考文献
エウジェニオ・コセリウ著 下宮忠雄訳 『一般言語学入門』 三修社 1980

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韓国語は日本と同じように、漢字文化圏であり、
漢語の使用が多い言語である。
表記はハングルに統一されたが、
漢字文化は強く、漢語が多用されているため、近年は漢字の復権の兆しもある。

韓国は日本と同じように、
漢字文化が流入する前は文字が存在しなかった。
といっても、陸続きの文化圏なので、日本と同等に語る危うさは十分にあるだろう。
韓国語では、漢字は、基本的に韓国伝統漢字音という、一字一音であり、
日本語のように訓読み、唐音、呉音、漢音などは存在しない。
いつの時代の漢字音が韓国に伝わったかは詳細には分からないが、
和製熟語も全て、伝統漢字音で読んでいる。

韓国語は日本と同じように系統不明の言語とされ、さまざまな説があるが、
漢字輸入後の借用語に関してはかなり研究が進んでいる。
特に蒙古族や女真族の語彙が多く、日本語にも一部入ってきたのではないかという説もある。
19世紀末の朝鮮開国後には、日本で生まれた西洋思想の漢訳語が積極的に取り入れられる。
現在でも、建築や工業などの専門分野では日本語系語彙の活躍が見られる。

1910年からの日本語の影響は、計り得ない。
日本語と韓国語の二言語政策は途中で放棄され、
日常語として日本語が強要され、公式には、ハングルを見る機会も失われた。

韓国独立後は国語浄化運動が高まり、
一時は完全に日本語が排除されたが、今は生活用品などの名称に日本語が残っている。
”亜米利加”、”仏蘭西”などの表記も廃止し、韓国式の表記に直されたが、
”独逸”に関しては、韓国伝統漢字音でそのまま使用されている。

日本語の排除の動きの反動とも言えるが、
英語やロシア語文法の影響が強くなってゆき、批判の対象ともなっている。
特に、韓国語は日本語と同じように、複数形が必要ではないが、
近年は、無生物や抽象名詞にも、”들(たち)”をつける傾向がある。

参考文献
松本隆 「韓国の外来語辞典にみる日本語系借用語」
『アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター紀要』 2002
金東昭 栗田英二訳『韓国語変遷史』明石書店 2003

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