最後の母音は中舌母音(central vowel)と言う。
前舌母音と後舌母音の中間の調音である。
中舌母音には、舌の最高点の高さが3段階しかなく、広母音のIPAはない。
[ ɨ ] 非円唇中舌狭母音(close central unrounded vowel)
[ ʉ ] 円唇中舌狭母音(close central rounded vowel)
[ i ]と[ ɯ ]、[ y ]と[ u ]の間で、硬口蓋と軟口蓋の中間での調音。
非円唇はロシア語など、スラブ語で多い音素で、日本語では表記できない。
円唇はノルウェー語で見られる。
[ ɘ ] 非円唇中舌半狭母音(close-mid central unrounded vowel)
[ ɵ ] 円唇中舌半狭母音(close-mid central rounded vowel)
中舌母音の、二番目に狭い口の開き方。
非円唇は、ロシア語や英語の異音として現れる。
円唇はスウェーデン語やモンゴル語に見られる。
[ ɜ ] 非円唇中舌半広母音(open-mid central unrounded vowel)
[ ɞ ] 円唇中舌半広母音(open-mid central rounded vowel)
中舌母音には広母音の記号が無いので、これが一番広い口の開き方になる。
非円唇は英語の異音として現れる。
円唇はアイルランド語やフランス語の異音として現れる。
中舌広母音を表すときは、補助記号を用いて表記する(別記)。
また、中舌母音には2つの中間音がある。
[ ə ] 非円唇中舌中間母音
曖昧母音もしくはシュワー(Schwa)と呼ばれる記号で、口腔の真ん中で調音される。
ストレスの無い母音が、弱く曖昧に発音されるときに使う。
ヒンディー語などでも見られる。
[ ɐ ] 非円唇中舌広めの広母音(near-open central unrounded vowel)
半広母音よりもっと口を開くが、広母音とまでは行かない中間の母音。
ポルトガル語や、語末のシュワーでみられる。
参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008
前舌母音と後舌母音の中間の調音である。
中舌母音には、舌の最高点の高さが3段階しかなく、広母音のIPAはない。
[ ɨ ] 非円唇中舌狭母音(close central unrounded vowel)
[ ʉ ] 円唇中舌狭母音(close central rounded vowel)
[ i ]と[ ɯ ]、[ y ]と[ u ]の間で、硬口蓋と軟口蓋の中間での調音。
非円唇はロシア語など、スラブ語で多い音素で、日本語では表記できない。
円唇はノルウェー語で見られる。
[ ɘ ] 非円唇中舌半狭母音(close-mid central unrounded vowel)
[ ɵ ] 円唇中舌半狭母音(close-mid central rounded vowel)
中舌母音の、二番目に狭い口の開き方。
非円唇は、ロシア語や英語の異音として現れる。
円唇はスウェーデン語やモンゴル語に見られる。
[ ɜ ] 非円唇中舌半広母音(open-mid central unrounded vowel)
[ ɞ ] 円唇中舌半広母音(open-mid central rounded vowel)
中舌母音には広母音の記号が無いので、これが一番広い口の開き方になる。
非円唇は英語の異音として現れる。
円唇はアイルランド語やフランス語の異音として現れる。
中舌広母音を表すときは、補助記号を用いて表記する(別記)。
また、中舌母音には2つの中間音がある。
[ ə ] 非円唇中舌中間母音
曖昧母音もしくはシュワー(Schwa)と呼ばれる記号で、口腔の真ん中で調音される。
ストレスの無い母音が、弱く曖昧に発音されるときに使う。
ヒンディー語などでも見られる。
[ ɐ ] 非円唇中舌広めの広母音(near-open central unrounded vowel)
半広母音よりもっと口を開くが、広母音とまでは行かない中間の母音。
ポルトガル語や、語末のシュワーでみられる。
参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008
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日本語のテンポでは、日本語の発音の時間に関してのべたが、
今回はそれをどう知覚しているかと言う視点での調査結果を述べる。
テンポに関しては、JND(Just Noticeable Difference)という実験方法がある。
複数のサンプルから取ったモデル値から、
音韻長を伸ばしたり縮めたりした加工音声を被験者に聞かせ、
自然か不自然かを判断してもらう方法である。
一般的には10~15msの間で行われる。
この実験で、結果報告の前に典型的な質問がある。
Q. / a /のモデル値は120ms、/ i /のモデル値は80msである。
文章のなかで、/ a /と/ i /、それぞれから40msずつ引いて被験者に聞かせると、どちらがより不自然であるか。
つまり、80msの/ a /と、40msの/ i /の、どちらが違和感が強いか、という質問である。
切り取られた時間は同じなので、科学的に考えると、この二つには誤差なし、となる。
さて、答えを言う前に、いくつかの実験結果を述べてゆく。
ある単語のひとつの音韻を引き延ばしたり、縮めたりした語をいくつも聞かせ、
自然さ(naturalness)を点数で評価してもらう実験の結果である。
1、「harahara(ハラハラ)」と「gakureki(学歴)」の/ a /を同様に伸縮させると、
「gakureki』の方が自然性のが減少幅が大きかった。
2、「sashidasu(差し出す)」と「barabara(バラバラ)」の/ a /を伸縮させると、
「barabara」の方が自然性の減少幅が大きかった。
3、「iriguchi(入り口)」と「sakasama(逆さま)」の/ i /と/ a /を伸縮させると、
「sakasama」の方が自然性の減少幅が大きかった。
A.80msの/ a /の方が、40msの/ i /より不自然である。
これは、テンポだけではなく、音声のエネルギー量である、ラウドネス(loudness)に関係すると考えられる。
/ a /は/ i /よりも呼気の阻害が少なく、口を大きく開けて発音する。
切り取られた4ms分の/ a /のエネルギーが、40ms分の/ i /のエネルギーより多いので、より不自然に知覚される。
同じ、/ a /でも、「harahara」と「gakuen」、「sashidasu」と「barabara』の自然性に差があったのは、挟まれる子音のラウドネスと関係があると考えられる。
聞こえ音階層(05/27)で説明したように、
摩擦音よりはじき音の方が、無声音より有声音の方が、ラウドネスが大きい。
つまり、/ sash /において/ a /の音韻長が減ると、
ただでさえラウドネスの較差が大きいのでより違和感が強調され、
/ bar /において/a /の音韻長が減っても、
先行する/ b /や/ r /で補う事が出来るので、違和感が中和されるのである。
参考文献
匂坂芳典「Modeling and perception of temporal characteristics in speech」(2003)
今回はそれをどう知覚しているかと言う視点での調査結果を述べる。
テンポに関しては、JND(Just Noticeable Difference)という実験方法がある。
複数のサンプルから取ったモデル値から、
音韻長を伸ばしたり縮めたりした加工音声を被験者に聞かせ、
自然か不自然かを判断してもらう方法である。
一般的には10~15msの間で行われる。
この実験で、結果報告の前に典型的な質問がある。
Q. / a /のモデル値は120ms、/ i /のモデル値は80msである。
文章のなかで、/ a /と/ i /、それぞれから40msずつ引いて被験者に聞かせると、どちらがより不自然であるか。
つまり、80msの/ a /と、40msの/ i /の、どちらが違和感が強いか、という質問である。
切り取られた時間は同じなので、科学的に考えると、この二つには誤差なし、となる。
さて、答えを言う前に、いくつかの実験結果を述べてゆく。
ある単語のひとつの音韻を引き延ばしたり、縮めたりした語をいくつも聞かせ、
自然さ(naturalness)を点数で評価してもらう実験の結果である。
1、「harahara(ハラハラ)」と「gakureki(学歴)」の/ a /を同様に伸縮させると、
「gakureki』の方が自然性のが減少幅が大きかった。
2、「sashidasu(差し出す)」と「barabara(バラバラ)」の/ a /を伸縮させると、
「barabara」の方が自然性の減少幅が大きかった。
3、「iriguchi(入り口)」と「sakasama(逆さま)」の/ i /と/ a /を伸縮させると、
「sakasama」の方が自然性の減少幅が大きかった。
A.80msの/ a /の方が、40msの/ i /より不自然である。
これは、テンポだけではなく、音声のエネルギー量である、ラウドネス(loudness)に関係すると考えられる。
/ a /は/ i /よりも呼気の阻害が少なく、口を大きく開けて発音する。
切り取られた4ms分の/ a /のエネルギーが、40ms分の/ i /のエネルギーより多いので、より不自然に知覚される。
同じ、/ a /でも、「harahara」と「gakuen」、「sashidasu」と「barabara』の自然性に差があったのは、挟まれる子音のラウドネスと関係があると考えられる。
聞こえ音階層(05/27)で説明したように、
摩擦音よりはじき音の方が、無声音より有声音の方が、ラウドネスが大きい。
つまり、/ sash /において/ a /の音韻長が減ると、
ただでさえラウドネスの較差が大きいのでより違和感が強調され、
/ bar /において/a /の音韻長が減っても、
先行する/ b /や/ r /で補う事が出来るので、違和感が中和されるのである。
参考文献
匂坂芳典「Modeling and perception of temporal characteristics in speech」(2003)
日本語には、形容詞や副詞を強調するときに、促音を付ける。
大きい→おっきい
すごい→すっごい
擬態語について特に顕著である。
ぴたり→ぴったり
べたり→べったり
こそり→こっそり
しかし、例外もある。
しょぼり→*しょっぼり、しょんぼり
こがり→*こっがり、こんがり
これらの音韻変化に関わっているのが、重子音化規則と*DD制約と鼻音化規則である。
重子音化規則を適用させようとしたところ、
*DD制約によって適用を阻害され、
制約違反として、鼻音化規則によって修復される。
この一連の流れが、例外の背景にある。
syobori→*syobbori→syombori
kogari→*koggari→koŋgari
また、制約を守るために随意的に適用される規則がある。
例えば*CC制約(異なる子音の連続を禁止する。同じ子音なら良い)の修復には、
同化規則と母音挿入規則がある。
ow+kakeru=okkakeru「追っかける」、owikakeru「追いかける」
yor+kakaru=yokkakaru「寄っかかる」、yorikakaru「寄りかかる」
tor+parau=ropparau「取っ払う」、toriharau「取り払う」
強調による重促音化規則の、*AA制約(接近音の連続を禁止する)違反の修復には、
鼻音化規則と長母音化規則が適用される。
fuwari→*huwwari、funwari「ふんわり」、fuwaari「ふわーり」
hiyari→*hiyyari、hinyari「ひんやり」、hiyaari「ひやーり」
参考文献
田中伸一 『日常言語に潜む音法則の世界』 開拓社 2009
大きい→おっきい
すごい→すっごい
擬態語について特に顕著である。
ぴたり→ぴったり
べたり→べったり
こそり→こっそり
しかし、例外もある。
しょぼり→*しょっぼり、しょんぼり
こがり→*こっがり、こんがり
これらの音韻変化に関わっているのが、重子音化規則と*DD制約と鼻音化規則である。
重子音化規則を適用させようとしたところ、
*DD制約によって適用を阻害され、
制約違反として、鼻音化規則によって修復される。
この一連の流れが、例外の背景にある。
syobori→*syobbori→syombori
kogari→*koggari→koŋgari
また、制約を守るために随意的に適用される規則がある。
例えば*CC制約(異なる子音の連続を禁止する。同じ子音なら良い)の修復には、
同化規則と母音挿入規則がある。
ow+kakeru=okkakeru「追っかける」、owikakeru「追いかける」
yor+kakaru=yokkakaru「寄っかかる」、yorikakaru「寄りかかる」
tor+parau=ropparau「取っ払う」、toriharau「取り払う」
強調による重促音化規則の、*AA制約(接近音の連続を禁止する)違反の修復には、
鼻音化規則と長母音化規則が適用される。
fuwari→*huwwari、funwari「ふんわり」、fuwaari「ふわーり」
hiyari→*hiyyari、hinyari「ひんやり」、hiyaari「ひやーり」
参考文献
田中伸一 『日常言語に潜む音法則の世界』 開拓社 2009
以前述べた共謀関係(06/13)のように、
関係のないように見える複数の規則が、
実は同じ目的、制約を守る為に働いているという事がある。
そして、複数の言語にわたり、
複数の規則が同じの制約の為に働いていると言う事がある。
*NC「隣接する鼻音と無声阻害音の禁止」の制約である。
°
日本語(阻害音の有声化、母音挿入)
hum+kiru=huŋgiru「踏ん切る」、humikiru「踏み切る」
hum+tukeru=hundukeru「踏んづける」、humitukeru「踏みつける」
インドネシア語(鼻音と阻害音の融合)
məN+pilih=mmilih "to chose"
məN+tulis=mnulis "to write"
ケチュア語(阻害音の有声化)
kaN+pa=kamba "yours"
wakiN+ta=wakinda "the others"
オシクァニャマ語(融合と有声化)
e:N+pato=e:mati "ribs"
oN+tana=onana "calf"
sitampa→sitamba "stmp"
pelanta→pelanda "print"
以後はこのような、言語に普遍的な制約に対して、注目が集まる事になる。
科学の大発見は、関係のないと思われていた規則を、包括し関係づけることである。
科学としての制約による言語学は、
統一、統合という概念を取り入れ、より大きく発展してゆく。
そしてまず注目されたのが、自律分節音韻論でのべた、OCPである。
この義務的起伏原理(Obligatiry Countor Principle)は、
今まで見てきた制約(*DD制約、*AA制約、*CC制約…)からも見て取れる。
つまり、「同じ要素が一つの層において複数存在してはならない」という原理である。
英語(*l...l制約 ただし、三音節以内)
*simil-al/simil-ar
*famili-al/famili-ar
logic-al/*logic-ar
ケラ語(*a...a制約 ただし子音ひとつ以内)
ba+pa=*bapa, bəpa " no more"
koroŋ+da+fadi=*koroŋdafadi, koroŋdəfadi "come here quickly"
bal+l+a=balla, *bəlla "you must want"
その他、オロモ語の*VV...VV制約、日本語の*CC...CC制約などなど多数例が挙げられている。
このような制約の統合、「メタ制約」を公式化する動きもある。
参考文献
田中伸一 『日常言語に潜む音法則の世界』 開拓社 2009
関係のないように見える複数の規則が、
実は同じ目的、制約を守る為に働いているという事がある。
そして、複数の言語にわたり、
複数の規則が同じの制約の為に働いていると言う事がある。
*NC「隣接する鼻音と無声阻害音の禁止」の制約である。
°
日本語(阻害音の有声化、母音挿入)
hum+kiru=huŋgiru「踏ん切る」、humikiru「踏み切る」
hum+tukeru=hundukeru「踏んづける」、humitukeru「踏みつける」
インドネシア語(鼻音と阻害音の融合)
məN+pilih=mmilih "to chose"
məN+tulis=mnulis "to write"
ケチュア語(阻害音の有声化)
kaN+pa=kamba "yours"
wakiN+ta=wakinda "the others"
オシクァニャマ語(融合と有声化)
e:N+pato=e:mati "ribs"
oN+tana=onana "calf"
sitampa→sitamba "stmp"
pelanta→pelanda "print"
以後はこのような、言語に普遍的な制約に対して、注目が集まる事になる。
科学の大発見は、関係のないと思われていた規則を、包括し関係づけることである。
科学としての制約による言語学は、
統一、統合という概念を取り入れ、より大きく発展してゆく。
そしてまず注目されたのが、自律分節音韻論でのべた、OCPである。
この義務的起伏原理(Obligatiry Countor Principle)は、
今まで見てきた制約(*DD制約、*AA制約、*CC制約…)からも見て取れる。
つまり、「同じ要素が一つの層において複数存在してはならない」という原理である。
英語(*l...l制約 ただし、三音節以内)
*simil-al/simil-ar
*famili-al/famili-ar
logic-al/*logic-ar
ケラ語(*a...a制約 ただし子音ひとつ以内)
ba+pa=*bapa, bəpa " no more"
koroŋ+da+fadi=*koroŋdafadi, koroŋdəfadi "come here quickly"
bal+l+a=balla, *bəlla "you must want"
その他、オロモ語の*VV...VV制約、日本語の*CC...CC制約などなど多数例が挙げられている。
このような制約の統合、「メタ制約」を公式化する動きもある。
参考文献
田中伸一 『日常言語に潜む音法則の世界』 開拓社 2009
母音は、調音中に調音点や口の開き具合を調節することが容易なので、
多くの言語で二重母音(diphthong)がある。
発音の最中に口を動かすので、無限の中間音が存在するが、
最初と最後の音が目立つので、a→i、o→i、a→uのように聞こえる。
音声記号で書くときは[ ai ]、[ oi ]、[ au ]のように書くが、
二重母音なのか、母音連続なのか分からないので、
音節の切れ目にはピリオドを打つ。
二重母音は、副次的な字母の下に、副次記号[ ∩ ]をつける。
日本語の「歯科医」と「視界」は[ai]の発音方法が異なる。
上の段が「歯科医」、下が「視界」である。
二重母音では一般的に、より広母音であるほど強く、より狭母音であるほど弱くなる。
[ ai ]のように強弱の二重母音を下降二重母音、
[ ia ]のように弱強の二重母音を上昇二重母音と言う。
中国語やスペイン語には三重母音も存在する。
参考文献
斉藤純男 『日本語音声学入門 改訂版』 三省堂 2008
言語学が大好きな一般人のブログです。
過去の記事は、軌跡として残しておきます。
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大学院で言語学を学びたい大学生が、日々の勉強の成果を記録してゆく為の、個人サイトでした。
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